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短編6「飲んでも飲まれるな」part2

「ほう、オリサが包丁を握っているじゃないか。それだけで大進歩だな」

「え、あたしそんなに何もできなかった!?」

「まぁ四人の中では一番家事スキル低かったよな。それにしてもルル。お前、本当に楽しみにしてたんだな。そんなにすぐにはできないから座って待ってろって」

「美食というのは生き物にとって最もわかりやすい幸福だろう」

「あー、まぁ確かに。動物でも食べ物の好みあるもんな」


 さっそくキッチンで料理を始めたリーフとオリサの様子をルルが落ち着きなく見ている。そんなルルの頭を撫でながら着席を促した。出かけてたのは五日なのにルルの頭を撫でるのも久しぶりに感じるな。ずっと歳上なのに見るからにそわそわとキッチンの様子を伺う姿は可愛らしい。

 と、ルルの顔がクルリとこちら向いた。あれ、撫でられるの嫌だったかな。慌てて手を引っ込める。まるで初めて犬に触る子供のようだ。


「も、もっと撫でてもいいのだぞ」


 予想とはまったく真逆の反応だった。

 なに、このかわいい生き物!


「んじゃ、遠慮なく。お前、かわいすぎだろ」


 ルルを膝に乗せ、思ったままの気持ちを伝えた。オリサやリーフが相手じゃこうはいかないけど、ルルなら気楽に言えるな。


「わ、わたしがかわいいなんて、そんなわけないだろう、こんな巨漢のドワーフなど……」

「この家じゃ巨漢って言葉はリーフのものだが」

「ふふ、そうですね」

「リーフちゃんは笑ってるけど、女の子に『巨漢』ってどうなの?」

「あ、ごめん」

「いえいえ」


 ああ、いつもどおりの我が家だなぁ。ルルの頭を撫でながらそんなことを考えた。

 ふと視線を感じて窓の外を見たら天ちゃんが煙を(くゆ)らせながら楽しそうにこっちを見ている。俺たちがいつもどおりに過ごしていて、彼女も、ん?彼も?まあいいや、便宜的に『彼女』も喜んでくれているらしい。


「旅行中は何もトラブルなどはなかったか?」

「んー、まぁそうだな」


 リーフの胸で窒息しそうになったり、リーフの色気に気が狂いそうになったり、リーフの発言が元でオリサにビンタされたりしたのは黙っておくとして、トラブルは何もなかったな。


「わたくしが山のように失態を重ねてしまいました……」


 あ、自分で言っちゃうんだ。


「俺、言うつもりなかったのに」

「あたしも」

「いえ、今後の反省とするためにも正直にお伝えしようと思いまして」

「リーフが?しかも複数回?な、何があったんだ?」


 普段のしっかり度合いを考えればその反応もやむ無しだよなぁ。


「夕飯の後でもよろしいでしょうか?天ちゃん様にもお伝えしたいですし」

「あ、ああ。もちろん」

「ま、酒を飲んで笑い話程度に聞いてくれ。ちゃんと説明するから」

「そうか」

「わたくしから説明いたします」

「わかった」

「ベッドにて」

「は?」


 たしかに、俺が受けたことを実際に経験したら気持ちがわかると思う。俺も外から見てみたいのも事実だし。


「なあ、本当に何があったのだ!?ベッドで何があった!?わたしは大丈夫なのか!?なあ!」

「ほら、ルル。南国風のいい匂いがしてきたぞ」

「どうぞたくさん召し上がってくださいね」

「おいぃぃ!!」

「見るだけならあたしも楽しみ」

「何が起きようとしているんだ!?」

「今日はお夕飯が長くなりそうですし、準備ができたら先に湯浴みをしましょうか」

「なら、俺は先にいただこうかな」

「いってらっしゃーい」

「なぜ誰も詳細を教えてくれんのだ?」

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