表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
166/213

短編6「飲んでも飲まれるな」part1

「ルルちゃーん!たっだいまー!」

「ああ、オリサお帰り、むぐ!こ、こら」

「ああ、ルルちゃんの抱き心地サイコー」

「そ、そうか。ま、まぁもう少しこのままでもいいんむぐ、胸を押しつけるな!苦しいぞ!」

「あ、ごめんっ」

「ラブラブっすねぇ。透くん、リーフちゃん、おかえんなさい」

「天ちゃん、ルルただいま」

「ただいまです」

「よく帰ってきた、んぐ、頬ずりするな!」

「えー、だって何日もルルちゃんだっこしてないから寂しかったんだもん!」

「そ、そうなのか。お前は仕方のないやつだ。よしよし」

「オ、オリサさん、次はわたくしですよ!」

「リーフちゃん、それまで手前をどうぞ。熱く優しくやらしくハグを!さあ!」

「申し訳ございません。まずはルルさんのふわふわほっぺを堪能したいのです」


 料理修行とリーフの息抜きの旅を終えて帰宅した俺たちを留守番の二人が暖かく迎えてくれた。事前に帰宅予定を知らせていたのでルルは玄関先で待機していたようだ。俺たちの車が姿を見せたら出迎えてくれた。それを見つけたオリサが車を降りたらすぐさま駆け出しルルに熱烈な抱擁をしている。更にリーフがオリサの背後でルルの身体が空くのを今か今かと待っているらしい。仲がいいな。


「リーフちゃんが反応してくれないので手前は透くんをギュギュッと。おおぅ、程よくゴツゴツしていてステキっすね。鍛えてて肩幅が広いオトコの人、ス・キ」


 ひとり寂しい天ちゃんが俺を背後から抱きしめてきた。あぁ、なんだか背中に柔らかいモノが当たる……。意識がそこに集中しそうになるが、別の異物感がそれを押し留めた。


「なぁ」

「なんでござんしょ?」

「俺の尻に何か硬いものが当たるんだけど」

「ああ、すんません。ポッケに入れっぱなしのマジックペンっす」

「なら仕方ないな」

「ええ、ペンならグリグリ押し付けても問題ないっすよね」

「極太だな」

「ちょっと店先に飾るPOPを作ってたものでして」

「このペン、ズボン越しでもやけに熱っぽいけど」

「……」

 

「ああ、ルルさん。相変わらず愛らしい」

「お前達は仕方のない。わたしがいなければどうしようもないらしいな。よしよし」

「ふふ、ルルさんに撫でられるのは大変安心いたします」

 

「なんか言えや」

「……透くんみたいに感の鋭い子は大好きっすよ、んががが!ほ、とおるふん(透くん)、や、やめへ(やめて)やめへ(やめて)ごめんらはい(ごめんなさい)!」


 嘘をつくやつには『鼻を思い切り摘む』の刑だ。まったく、背中と尻、上下二段構えでいろいろ押し付けやがって。『上』は感謝しておくけど。


「とりあえず荷物を下ろそう」

「力仕事なら任せろ」

「あぁん、ルルさんを抱きしめ足りません……。仕方がありませんから手早く終わらせましょう」

「ルルちゃん抱っこして元気出た!」

「手前も透くんのお陰で乾いていたリビドーがグツグツと滾ってきたっす。力仕事やりましょう!あ、でも、正面から抱きしめてもらえたらもっと嬉しいっすねぇ」


 物欲しそうに俺を見るんじゃねぇよ、まったく……。おい、なんで視線が俺の顔じゃなくて下半身に向かってるんだコイツは。

 仕方ねぇなぁ。この旅行も天ちゃんがいなかったら難しかったわけだし、礼はするべきだよな。


「一瞬だぞ」


 俺はそう言って両手を広げ、天ちゃんを正面から包み込んだ。顔が綺麗なお姉さんだからできることだ。下半身のことは考えるなよ、俺。


「家のこと、いろいろ手伝ってくれてありがとうな。お陰でゆっくり出かけられた」

「うっひゃぁ!透くん、サイコーっす。ああ、たまらないっす。生きてて良かったぁ。お手伝いした甲斐があるってもんすよ。頭もナデナデしてほしいっす!あぁぁぁぁ、ずっとこうしていたいっすぅ」

「おい、もういいだろ、離れろっての!に、握るなや!」


 天ちゃんの手がにゅるりと伸びて俺の尻を激しく揉みしだく。何してんだよこいつ。


「お、おい、ちょっと待て!その股間を押し付けるんじゃねぇよ!や、やめ、やめっ、やめて、やめてください……おい、ルル!こいつ引き剥がせ!」

「自分から抱きしめに行っただろう?」

「天ちゃん様、お待たせしました。トールさんの次はわたくしと抱擁を」


 今すぐ変わってくれ!


「リーフちゃん、ちょっとだけ待っててほしいっす!と、透くん、ついでなんでお耳を舐めて良いっすか?ちょっとだけ、ちょっとだけっすから!新しい世界に行きましょう!」

「嫌だよバカ!耳なんか舐めて何が楽しいんだ!」

「美味しいの?」


 オリサが純度百パーセントの好奇心で質問した。そんなわけあるか!


「手前は舐めるのも舐められるのも大好きっす!リビドーがグツグツっすよ!」

「背筋がゾワゾワと粟立つような感覚が素敵ですね」

「オリサよ、わたしは遠慮しておく」

「まだ何も言ってないじゃん!」

「この流れでわたしを見たのだからわかるわ!もういいだろう。そこの変態カップルは放置してさっさと荷物を運んで食事の用意をしよう。楽しみにしていたんだ。今日は早めに晩酌を始めてもバチは当たるまい」

「そうですね。まずはタイ料理をお作りしましょう。調味料は車の中に」

「まかせろ」

「リぃぃぃ〜〜〜ビドっオぉぉぉウぅっ!」

「トール、いつまで天ちゃんとラブラブしてるのさぁ」


 俺も知りてぇよ……。

 変わらず尻を激しくこねくり回されながら胸中でつぶやいた。

 あれ?みんな流してたけど、耳舐めに関してリーフが反応してなかった?え?聞き間違いか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ