表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆異世界転移物語 〜エルフ・ドワーフ・魔法使いと地球でゆるくぬるく暮らす物語〜  作者: シンドー・ケンイチ
第七章「妖しいリーフと料理の旅」
165/213

「妖しいリーフと料理の旅」part38

「ねえ」

「ん?なんだ?」


 やけに豪勢な朝メシ、うまかったぁ。腹パンパン。箸を置いたらリーフが即座にコーヒーを淹れてくれた。やけに気が利くな。まあ理由はわかるけど。


「トールとリーフちゃん、喧嘩したの?」

「いんや?」

「そんなことありませんよ……」

「あきらかにリーフちゃん元気ないよね?トール、なんか酷いこと言った?」

「そんなことないよ」

「はい、トールさんは悪くありません。全て、わたくしの不徳の致すところ」

「いや、そこまで言わなくても」

「何があったのさ」

「オリサさんがお休みになった後で、ただただわたくしがトールさんに毎晩マスターベーションをお見せし続けただけです」

「ぶふぁ!」


 盛大にコーヒーを吹き出してしまった。なんつーこと言ってんだ!


「アホか!」

「なにそれ?知らない言葉だ。あ、ちょうどいいや。リーフちゃんコレ借りるね」


 そう言ってオリサはスマホに手を伸ばす。


「待て!調べるな!」

「わかんないことは調べればいいって言ってたじゃん。ダイジョブだよ、使い方はもうわかるし。えっと『ま』『す』『た』『あ』」

「やめろ!発声すんな!」

「あの、オリサさん、それは比喩――」


 やめてくれ!オリサの口からそんな単語を聞きたくない!初めて聞く言葉も一発で覚えられるオリサの頭が今だけは恨めしい。


「なんなのさ。あたしだけわかんないの寂しいじゃん……え!?」


 瞬間、オリサが立ち上がり右手を振りかぶったと思えば頬に衝撃が来た。


「んぐっ!」


 左の頬がジンジンと痛む。

 オリサは慌ててリーフの元へ駆け寄っていった。


「リーフちゃん!大丈夫だった!?なんでそんなの見せる必要があったの!?トール、リーフちゃんが何したのさ!!最低!トール、サイッテー!」

「いえ、あの先程申し上げたのは比喩――」

「オリサ、ちょっと待て、ちゃんと説明するから」

「信じてたのに!トールはそんな人じゃないっで、じんじでだ(しんじてた)のにぃ!!ああぁぁぁぁ!!うわぁぁん!」


 オリサが声を上げて泣き出してしまった。え、これどうすればいいの?


ドォル(トール)バガ(バカ)ぁぁぁ!」

「えぇぇ……」

「本当に申し訳ありません」

「うん、反省して」

ドォル(トール)ぎらい(きらい)ぎあい(きらい)!ゔあぁぁぁぁ!!」


 俺どうすりゃいいんだよ……。


  ・・・・・・・・・・・・


「というわけでして、全てわたくしが勝手に行ったことなのです。その比喩としてマスタ――」

「言わんでいいから!」

「じゃ、じゃあ、ドォルは」

「何もしておりません。一切の非はありません」

「ドォルごめん、ごべん(ごめん)いだがった(いたかった)よね、ごべんなざい(ごめんなさい)ごべん(ごめん)おんどおにごべん(ほんとうにごめん)!!」

「大丈夫だから泣くなって、な」

「ごべんなざぁぁい!」

「本当に申し訳ありませんでした」

「オリサは悪くないって。あ、リーフは深〜く反省するように」

「はい、肝に銘じます……」


 ・・・・・・・・・・・・


「落ち着いたか?」

「うん、いきなり叩いてごめん。痛かったよね?」

「いや?お前の細腕じゃ空手やってた俺にダメージなんか残せないよ」

「……ありがとうね」

「おう」

「重ね重ね申し訳ありません」

「うん」

「だね」

「はい……」

「リーフちゃん、確認したいんだけどさ」

「はい」

「えーと、あたしとトールが仲良くしてるから、リーフちゃんもトールと仲良くしたかったんだよね?」

「はい」

「んで、あたしがトールをからかってるのと同じようにすればいいと思ったのね」

「そうです」

「あたし、そんなんじゃないよ!『ホントのアナタを見せて』なんて、一度も言ったことないよ!見たことないでしょ!?ある!?」

「い、いえ」

「だよね!何がどうなってリーフちゃんの中のあたし、そうなっちゃったのさ!ぜんぜん違うじゃん!」

「だよなぁ」

「トールと一緒に寝たことあるけど、そんな関係じゃないよ!」

「申し訳ありません、勘違いしておりました。わたくしはてっきり――」

「リーフちゃん!」

「は、はい!」

「あたし、パフェ食べたい!」

「しょ、承知しました。ただ今お作りします!」

「チョコレートたくさん!」

「はい!あの、トールさんは何か食べたいものは……?」

「んー、特にないなぁ。あ、リーフ」

「はい!」

「いい機会だから健康的な食生活を心がけたらどうかな」

「ま、まさか……」

「今日から一か月」

「トールさん!」

「リーフは」

「お待ちを!」

「肉抜きね」

「そんな!そ、それだけは!それだけはご勘弁を!後生です!我が身を持ってお詫びします!夜伽でもなんでもいたしますから!お、お肉だけは何卒!」

「リーフちゃんのバカ!」

「それを止めろって言ってんだよ、馬鹿野郎!!」


 俺達とリーフの心が真に通じ合う日は来るのだろうか。早めに来てほしいなぁ。そうじゃないと心が持たない。

 こうして今日もバタバタと一日が始まったのだった。



第七章「怪しいリーフと料理の旅」

 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ