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逆異世界転移物語 〜エルフ・ドワーフ・魔法使いと地球でゆるくぬるく暮らす物語〜  作者: シンドー・ケンイチ
第七章「妖しいリーフと料理の旅」
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「妖しいリーフと料理の旅」part37

「う、嘘は……仰っていないのですね……」


 ん?どうした。何か慌てた様子。


「え、ああ、本心だよ」


 薄暗い部屋でもわかるほどにリーフの頬が朱に染まる。あらわになっている左頬に手を伸ばすと案の定、極上の滑らかさをもつ肌は熱を帯びていた。


「ど、どうしたの?」


 酷く慌てているように見えるのだが。


「あ、あの、申し訳ございません。わたくし、トールさんを騙す意図はなかったのですが、れ、恋愛感情はございません」


 は?

 え?

 うそ?

 俺の独り相撲?勝手に緊張して勝手に告白まがいのことをして、勝手にフラれたの?嘘だろ?


「ない……の?」

「ええ、一切」


 このエルフ、キッパリ言い切ったぞ。


「マジ……?」

「あの……大変申し上げにくいのですが、マジなのです」

「あの……、じゃあ、ここ何日かやたらと挑発してきたのはなんでかな?」


 先程に至っては興奮で脳がおかしくなりそうだった。


「ちょ、挑発!?すみません、そのつもりはなかったのです。わたくしはただ……、その……トールさんをからかってみたくなっただけなのです!」


 はい?


「からかって、って……」

「あの、申し訳ございません。どうにも日頃からわたくしとトールさんの間に距離を感じると申しますか、トールさんからオリサさんやルルさんへの距離とわたくしへの距離に多少の違いを感じまして。ちょうどトールさんとお出かけという機会が巡って参りましたので、ここは一つ距離を縮めるために頑張ってみようと……」


 たしかにリーフだけ距離があるかもしれないけど、それは彼女の話し方とか身長とか年齢とか世話になってる度合いとか様々な要因があるのだと思う。決して邪険に思っているわけではない。


「それで、俺をちょっとからかうつもりでやたらと接近してきたと……?」


 ベッドに寝転がったまま深く頷くリーフ。ということは、さっきの俺の告白まがいの発言は……。


「それと、一昨日の晩、トールさんと楽しくお話をしたあとに頬に口づけをしたり『愛している』と申し上げたのもそのような意図はなくてですね」


 あれ、やっぱり夢じゃなかったのか!


「え、俺はベッドに入ってすぐ寝たんだよね?てっきり夢の中でリーフにキスされてると思ったからそんな夢を見てる俺に自己嫌悪だったんだけど」

「そんな、自分を嫌いになんてならないでください!トールさんは素晴らしい人です」

「あ、ありがとう。あの、そんな夢を見たから深層心理でリーフのこと好きになっちゃってるのかと思ってた。あれは夢じゃなくて現実だったと……?」

「はい、それは現実です。トールさんの頬に口づけしたことも、トールさんをこの胸で抱きしめたことも現実なのです。その最中にお眠りになった様子でしたが」

「む!」


 やっぱり胸だったのか!何やってんだよ!


「すぐ寝たっていうのは……」

「えっと、すみません。わたくし、十年程度でも『すぐ』という表現を使ってしまうもので」

「ああ、長生きだもんね……」


 乾いた笑いが出る。


「それじゃ、俺さっきリーフに恋人になるために徐々に距離を縮めようとか言ったけど、リーフにその気持は……」

「申し訳ございません。微塵も考えておりませんでした。あの……旅が始まって早々に窒息させてしまったりトールさんのお好きな牛丼を貶めてしまったりと失敗続きのため、少しでも喜んでいただきたくて。殿方は胸の感触がお好きなのは存じておりますので、戦場では邪魔でしかなかったこの脂肪の塊が活躍するいい機会だと思ったのです。胸でした失敗ならば、もう一度胸で取り戻そうと思いまして。トールさんがやさしく抱きしめてくださったのと同じようにできたらと思った次第です。それに、旅に出る前にオリサさんがルルさんに『泣きたいなら胸を貸してあげる』と言っていましたね。ならばわたくしはトールさんにこの胸をと」


 弄ばれた……。

 俺の貞操、童貞の勇気、その他もろもろ。もう何も信用できない!



 金髪の痴女に弄ばれた!



「リーフさん、そろそろ寝ましょうか。おやすみなさい。明日も美味しい料理が作れるよう頑張りましょう。ああ、リーフさんはあっという間に習得してしまいますから、愚鈍な俺ごときがリーフさんの邪魔にならないよう頑張らなければですよね。はは。では、おやすみなさい」

「あ、あの、トールさん?酷くよそよそしいのですが?トールさん?まだ起きていらっしゃいますね?トールさん?や、やりすぎました、申し訳ございません。反応してください。トールさん、トールさん!」

「ちなみにだけどさ」

「は、はい!」

「他に何か冗談のつもりでやったこととかあるの?」

「はい」

「教えてもらおうか」

「あの、自動車に乗るときのシートベルトなのですが」


 ああ、あれずっと気になってた。


「胸を強調するよう、谷間にベルトを通しておりました」

「あれってわざとだったの?」

「はい、冗談のつもりだったのですが、誰からも反応がなくて」


 オリサならボケてるのすぐわかるけど、リーフじゃわかんねぇよ。


「初めて自動車に乗ったあの日、オリサさんはすぐに気づいてトールさんにお知らせしていましたね。『なんちゃって』と言う準備をして待機していたのですが、トールさんは『いいね』とわたくしの胸部を褒めてくださいましたが冗談にはお気づきにならず……。その後は日々、いわゆるツッコミ待ちをしておりました」

「バカじゃねぇの?」


 初対面からすぐでそんなボケをキャッチできるかよ。そもそも俺にとっては人生激変の日だっつーの!


「今度こそおやすみー」

「トールさん、申し訳ございません!トールさん、トールさぁぁぁん!!」

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