「妖しいリーフと料理の旅」part35
昨日はリーフの意味不明な行動のせいでなかなか眠れなかった。今日はさっさと寝よう。本当に疲れた。
「失礼いたします」
寝ようと思っていたのに、部屋に戻ってベッドに転がったとたん、リーフがゆっくりとやって来るのを感じた。自分でも鼓動が早くなっているのを感じる。
今日は何をされるのだろう。
何をされてしまうのだろう。
何をしてくださるのだろう!
リーフ様!
女王様!!
いや、ちょっと待て自分!おかしな性癖が芽生えてないか、自分!
ダメだ、ダメだ、俺たちは家族なんだ。リーフがどう思ってくれているかはわからないけど、今日の様子次第でちゃんと話し合わなければ。
だけどもし、もしもリーフが俺を本当に男として愛してくれているならどうしよう。いや、そんなの答えは一つだ。俺だって夢に見るほどにリーフのことが好きらしい。だったら、それに応えるべきだろう。まだ実感が湧かないけど、きっとそうに違いない。自分では何も思っていなかったけど、きっと深層心理というやつではリーフが好きなんだろう。だから夢に見たんだ。男として、しっかり応えなければ。
などと目を閉じたまま考えていたらリーフの気配が直ぐ側に来ていた。
「トールさん、起きていますね?」
昨日のようにベッドに潜り込みながら問いかけてきた。
「なんで……わかったの?」
仰向けで目を閉じたまま答える。
「簡単です。外は静かな夜、この距離。トールさんの鼓動を聞くなどわけありません」
そう言ってゆっくりと俺の左胸に指を這わせる。
「やっぱり。こんなに鼓動が速くなって……」
そう来たかぁああ!
これはヤバい!指先だけをほんの僅かに触れさせているだけなのに、寝間着越しで直接肌に触れられているわけではないのに。それでも俺の胸を探るように指が動く度、背筋にゾワゾワと得も言われぬ快感が走るのを拒絶できなかった。
「とはいえ、心音だけでなく寝息を立てていないのも起きている証ではありますが」
「そ、そう」
リーフはスルスルと首の下に腕を差し込んできた。昨日に続き腕枕をされる格好になる。昨夜はリーフに背を向けていたが、仰向けで寝ている今は彼女が俺の半身に抱きついている。
目を閉じたまま微動だにできないが、俺の足にはリーフの足が絡み、昨夜俺の背中に押し当てられた膨らみが今宵は腕に密着し、顔の直ぐ側にはリーフの気配を感じる。心を無にしても否応なしに身体が熱くなってきた。
まるで蛇だ。ゆっくりと俺の身体にリーフの肢体が巻き付いていく。捕食される寸前の動物はこのような気持ちなのだろうか。どうすればいいのかわからない。
だがそこから感じるのはひんやりとした鱗などではなく温かく柔らかいリーフの肌だ。緊張と同時に安心感もある。