「妖しいリーフと料理の旅」part34
んで、やってきたステーキハウス。
「素晴らしい!ああ、素晴らしい!この牛の形をした鉄板、持って帰ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、いいよ。次からはそれで食べるのね」
「いえ、部屋に飾ろうかと」
「寝るときにお肉の匂いが漂ってきそうだから寝室は止めて。加工場ならいいから」
「だってよ」
「承知しました。ああ、ソースもいろいろな種類がありますね。素晴らしきかな、麗しきかな調味料棚!お醤油さえも輝いています。まるで笑っているようにも見えますね」
「それウチにもある普通の醤油だぞ、いで」
オリサに指で脇腹を突かれた。余計なことを言うな、目がそう訴えかける。幸いリーフには聞こえていなかったのか冷蔵庫を開けて目を輝かせていた。
酒屋や図書館でのルル、お菓子売り場やケーキ屋でのオリサ、ステーキ屋始め肉が絡む施設全般でのリーフ、実は皆それぞれ同じリアクションをしていることは言わないでおいてやろう。
「それにしてもソースは色んな種類があるんだね。リーフちゃんはどれが気になるの?」
「このお店オリジナルソースというのも気になるのですが、やはり日本人たるもの醤油の誘惑には抗えませんね。こちらの醤油バターソースが気になります」
今サラッと出てきたワードはリーフちゃんジョークなのか?ガチで言ってるのか?わかんねぇ。日本に住んでるし日本人ってことで流しておこう。
「うちっておっきなバターメーカーあるからいくらでも作れるよね。あんなにたくさんバター使えるなんて、すっごい贅沢だと思う」
「そうですね。手作りは大変手間のかかるものですから」
「そうなんだ」
当然のように業務用の機械が搬入されていたので知らなかったが、あとで作り方を調べてみよう。
「あたしはどのソースが気になるかなぁ。うーん、このシャリアピンソースってのいいね。炒めた玉ねぎだって。こっちの和風大根おろしっていうのもおいしそう!」
「オリサさんは草、失礼、お野菜のソースがお好みなのですね」
「うん、お野菜好きだもん!」
「リーフは調味料でも野菜を避けるよね」
「ええ、千年以上食べ続けてきたのですから、人間族の一生分は食べています」
「一生どころか十数代分だな」
恐るべしエルフ。
「試しにオリサといっしょに玉ねぎのソースも食べてみたら?どっちみち肉のおかわりするんだろ?」
「トールさん、やりますね。わたくしの行動を正確に予想していらっしゃいます。素晴らしい観察眼と直感力です」
オリサがすぐ隣で首を横に振っている。俺もそうしたいが止めておこう。
「それじゃ、まずソースを作ってから肉を焼いたほうがいいよね」
「そうですね。早速始めましょう」
「うん、がんばる!」
だんだん野菜を切るのがスムーズになって楽しくなってきたんだよな。これもリーフマジックなのかな。
・・・・・・・・・・・・
「これは、素晴らしい!どのソースも大変な美味です!」
「それは良かったよ」
「うん、いいね。このシャリアピンソースってサラダにかけても美味しいかもね。こんどバーベキューするときにもコレ作ろっと」
「ああ、それ良いかもな」
「ぁ、あぁぁ……。わ、和風ソースも素晴らしいお味です。く、うう……素敵です。ふ、んん……エ、エルフたるわたくしを……こ、ここまで屈服させるとは……ま、まったくの想定外でした」
リーフが自分自身を抱きしめるように両腕を交差させ息を荒げ悶ている。なんというか、腕で胸を持ち上げて強調しながら頬を赤くし息を切らしている様はとんでもなく性的な姿で直視できない。
「ああ、素晴らしい!トールさん!オリサさん!く、ううぅ!も、もっといただいても……よ、よろしいでしょうか?」
「ああ」
「いいよ」
返事を聞くが早いか厨房へと向かっていった。すぐに肉を焼く音が聞こえてくる。その音を確認し、俺は隣に座るオリサに顔を向ける。オリサも全く同じタイミングでこちらに顔を上げた。
「「エロすぎない?」」
まさかの出てきた言葉も全く同じものだった。俺たちは、心が通じ合った。肉に悶えるリーフがエロすぎるということで。
ホントにいい加減にしてくれ。ただでさえリーフに愛される夢を見て悶々としたり、実際にリーフが迫ってきて悶々としていたのに、これじゃ今夜もなかなか眠れそうにないな。
「トールさん、オリサさん、この旅は素晴らしいものになりましたね」
本当に幸せそうに肉を焼くリーフを見たら何も言えなかった。