「妖しいリーフと料理の旅」part31
「さて、俺は部屋に戻るよ」
「はい、おやすみなさいませ」
ルル達への定時連絡を終え、俺は自分の泊まっている部屋へ戻ることにした。少し早いけど今日はもう休もう。
オリサは今日も電話中に寝てしまった。よく寝るやつだ。
「歯磨きヨシ、トイレ行った、カーテン閉めた。うーし、寝るかぁ~」
ベッドのそばで大きく身体を伸ばし、そのまま後ろに倒れてベッドにダイブ。子どもっぽいかもしれないけど、大きめのベッドを前にしたらやってみたくなるのが人の性だ。たぶん。自宅のベッドだと壊してしまったら嫌だからとやったことはない。
なんだかんだで今日も楽しかった。いや、オリサ達と同棲を始めてつまらなかった日なんて一日もないか。冷静に考えたら絶望的な世界なんだけど、それでも俺は恵まれてると思う。あんなに気のいい仲間に巡り会えたんだから、一応は神様に感謝しなければ。一応は。
おかげで今日もゆっくりサイコーに安眠できそうだ。
「トールさん、起きていらっしゃいますか?」
ノックとともにリーフが部屋に入ってきた。
「うん、どうした?」
枕元のスイッチを操作して部屋を明るくした。
「ふふ、少し添い寝をと思いまして」
「でゅえ!?」
いかん、あまりの驚きに意味不明な言葉が口から溢れてしまった。
「前回の旅ではオリサさんとルルさんの三人でお休みになっていたと伺いましたので。折角の機会なのでわたくしもトールさんと仲良しになりたいのです」
「え、あの、えーと」
「やはり、オリサさんでないとお嫌ですか……?」
「い、嫌なわけないだろ!」
「それは良かったです。では失礼しますね」
嫌ではないけど許可もしてない!反論するまもなくリーフはスルスルと俺の隣に入ってきた。うわ、なんか緊張する。
そもそも前回の旅行中、俺は精神的にだいぶ疲れていた影響でオリサ達に緊張しなかったわけで、今はオリサであろうとルルであろうとリーフであろうと緊張するに決まっている。いや、旅行前にリーフに寝かしつけられたときはあっという間に眠くなっちゃったし、今日もすぐ寝られるかもしれない。
などと脳がフル回転で動き出した。鼓動が速まるのを感じる。これはそう簡単には寝られないぞ。
「もしや眠かったのを起こしてしまいましたか?」
「いや、そんなことないよ。ベッドに入ったばっかりだったし」
「それは良かったです」
目を閉じたまま答える。リーフと見つめ合って会話をした暁には更に緊張して眠れなくなるのは容易に想像がつく。
「ふふ、つかまえましたよ」
リーフの手が俺の手を握りしめた。
なんだよ今の一言!更に鼓動が速くなったのが自覚できた。バックンバックンいってるぞ!
これは、これはやばい。今まで一緒に住んでわかっていたけど、リーフは無自覚にエロい!本人は意識していないのにものすごく性的な動作をする。天ちゃんのように冗談めかして言ってくるなら対処のしようがあるが、この場合はどうすればいいんだ。
いいや、背中向けちゃえ。リーフ、ごめん。
「俺、右向きで寝たいから失礼するね」
「はい」
そう言って寝返りをうった。
これで手を握られる心配もない。あとは寝るだけだ。リーフの添い寝はありがたいけど、緊張してそれどころじゃない。
「添い寝です。ふふ」
そう言ってリーフは俺の背中にピッタリとくっついてきた。
そうきたかぁぁ!