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逆異世界転移物語 〜エルフ・ドワーフ・魔法使いと地球でゆるくぬるく暮らす物語〜  作者: シンドー・ケンイチ
第七章「妖しいリーフと料理の旅」
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「妖しいリーフと料理の旅」part29

「ルルさんの写真で見たとおり、この湖も白鳥も美しいですね」

「取って食べたりしないでくれよ」

「弓持ってきてないよね?」

「お肉大好きなわたくしとはいえ、流石にそのようなことはしませんのでご安心ください」


 飛んでるコウモリを撃ち落としてスープ作ろうとか考えてたヤツが言っても説得力ないなぁ。

 俺たちはいま以前の旅行でも散歩した湖の沿道を歩いている。そう、白鳥に追いかけられたあの湖だ。天気もいいしせっかくだから今日の昼は弁当を作って散歩に出かけようということになった。

 コンクリートの建物が並ぶ駅周辺にばかりいてはリーフも疲れてしまうと思ったから息抜きになればと考えたのも理由だ。



「おじいさんの像がある」

「『徳川光圀公像』……こちらの方はどのような方なのですか?」

「ずーっと昔、この辺りを治めてた人で、年を取ってからは普通のおじいさんのふりをして日本が本当に平和なのか見て回る世直しの旅をした人らしいよ。テレビドラマもたくさん作られて人気の人」

「世直しの旅ですか。素晴らしい姿勢です」

「あと、日本で初めてラーメンを食べた人らしい」

「そんな情報ホントに残ってるの?」

「そう言われてるけど、どうなんだろうなぁ。あ、それからワインが好きだったらしいよ。当時はめちゃくちゃ珍しいもののはずなのに」

「それは大変親近感が湧きますね。為政者(いせいしゃ)としてはどのような方だったのでしょう」

「ごめん、それはちょっとわからないなぁ。この人に関して書かれた本はたくさんあると思うから、あとで図書館でも行ってみよう」

「ええ、是非」



「そこのカフェで昼にしようか」

「ガラス張りで湖が見られるなんておしゃれな作りだね」

「ゆっくりお茶を楽しむのにも良さそうですね」

「鍵開けるからちょっと待っててくれ」



「おー、綺麗な建物だねぇ。お散歩したからお腹すいたー」

「そんなに長距離じゃないけど、まぁ運動すると腹減るよな。俺も部活の後は駅前で牛丼食べて、帰ってからも普通に晩飯食ってたし」

「『ギュードン』とはどのようなお料理ですか?」

「あれ?リーフなら知ってるかと思った。(どんぶり)によそったご飯の上に、えーっと、薄切りにした牛肉を乗せた料理。あ、肉はちゃんと煮込んだものな」

「ほう、お肉ときたら調べる価値はありそうですね。えっと、ここを押すのですよね」

「そうそう。それで『牛丼』って入力して『画像検索』を押せばいいよ。腹減ってる時の牛丼たまんねぇんだよなぁ。話してたら食べたくなってきた」

「小さい『ゆ』はどのように書けばいいのでしょう?」

「ああ、ここをこうして」

「なるほど」

「それ、便利そうだけど難しそうだよねぇ」

「慣れればかなり便利だと思うぞ」

「これが牛丼……」

「へー、美味しそう……かどうかはよくわからないけど、茶色いね……」

「まぁトッピングで野菜乗せてもいいし。リーフ、どう?」

「トールさん!」

「は、はい!」


 どうせ今すぐ食べに行きたいってことだろ。


「何なのですかコレは!薄っぺらくスライスしたお肉の汁かけ穀物など、エルフの食べ物ではございません!エルフたるもの分厚いステーキに齧り付くべき!そうでしょうトールさん!」

「俺の好物に酷評すぎない?」


 こいつは予想外。リーフがテーブルをベシベシ叩きながら怒りを(あらわ)にする。リーフ様的に牛丼はグッとこなかったか。美味いんだけどなぁ。


「エルフってみんなベジタリアンじゃなかったっけ?」


 オリサが呆れを隠さず指摘した。そういえばそうだった。リーフのどうかしてる発言に慣れすぎて気づかなかった。


「あたしは食べてみたいなぁ。食べないで決めつけるの良くないと思うし。案外食べたらリーフちゃんも気に入るかもよ?」

「だな」

「そ、そうですね。失礼いたしました。お昼を食べたら早速牛丼を提供していたお店に行きましょうか」

「あたしお弁当は少なめにしないと食べられないなぁ」

「無理すんな。弁当は俺とリーフが食べきってやるって」


 さて、牛丼づくりはどうなることやら。

筆者あとがき


 トールくんは徳川光圀公を「水戸黄門」のイメージで話していますが、現実の光圀公はほぼ関東地方を出たことがなく、記録に残っている遠出は静岡県の熱海や福島県勿来(茨城県との境)までだったとか。

 筆者自身もラーメンを初めて食べたのは光圀公という説を信じていましたが、近年の研究で否定されたそうです。ちょっとショック……。

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