「妖しいリーフと料理の旅」part19
「リーフってお酒強いの?ワインって結構アルコール強いみたいなのに、だいぶハイペースで飲んでるよね?」
「どうでしょうか?身体が大きいから相対的に強いのかもしれませんね。多少顔が赤くなっているかもしれませんが」
「んー、いつもどおりのリーフちゃんだよ」
「あら、そうですか。触ってみると温かくなっているかもしれませんよ。ほら」
そう言ってリーフが俺の両手を掴み自分の頬に添えさせる。俺は今なぜかリーフの顔を両手で包んでいる。
「リ、リーフ!」
「うふふ、いかがですか?ああ、普段のわたくしを知らないと比べられませんね。これはいかがでしょう」
リーフが嬉しそうに俺を抱き寄せる。驚いている間に俺の頬とリーフの頬がピッタリとくっつく。や、柔らかい。温かくて気持ちいい。というか、俺の胸にも柔らかいものがぎゅうぎゅうに押し付けられている。やばいやばいやばい。
「ぎゅ~っです。うふふ」
「リーフちゃん、トールが緊張で死んじゃうからそこまで、終わり終わり」
「あら、失礼しました」
身体が解放されたが微動だにできない。放心状態のまま頬と胸の感覚を反芻し余韻を楽しむ。素晴らしかった。柔らかくて温かくてスベスベで……。
「トール、だいじょうぶ?」
「あ、ああ……」
何考えてるんだ、俺!何が反芻だ!忘れろ!
それにしても驚いたな。恐ろしくなめらかで柔らかく肌触りが良かった。もう一回触らせてくれないかな。
いやいやいや、ダメだダメだ、落ち着け自分。
「あらあらトールさん、ずいぶん鼓動が速まってしまって可愛らしいこと。ああ、そういえば、先程わたくしはトールさんに口付けしておりませんでしたね。オリサさん、写真機の用意をお願いいたします」
「え、いや、まてまてまてまて!いいって、そんな写真いらないって!」
俺から離れてベッドに戻りワインを楽しんでいたリーフだが、再び立ち上がり笑顔のままゆっくりと近づいてくる。
「リーフちゃん、落ち着こうか!トールには刺激が強すぎるから!はい、ストップ、ストーップ!」
「ふふ、失礼いたしました。わたくしの口付けが欲しければいつでもおっしゃってくださいね。なんちゃって、です」
「お、おお」
感謝を込めてオリサを見ると困っているような楽しんでいるような、なんとも言えない顔をしていた。冗談好きのオリサをもっても今のリーフは扱いに困るらしい。
「というわけで、わたくしまだまだ酔っ払ってはおりませんよ。ふふ」
明らかにベロンベロンじゃねえか。
オリサも苦笑いだ。今日だけでオリサとのアイコンタクトが異様に上達した気がする。
「ちなみにさ、ワインってぶどうで作ってるんだよね?ぶどうジュースみたいな味なのかな?」
「ということは飲んだことないんだな」
「うん」
「飲んでみますか?美味しいですよ」
「どう美味しいのかわからないんだよね……、じゃあ、リーフちゃんのをちょっとだけ。いただきます……んんん!ぜんぜんジュースじゃない!なんか喉が痛いような熱いような変な感じ」
「あら、残念です。オリサさんはお酒自体飲まれませんね」
「ぜんぜん興味ないって言ってたよ」
「残念です」
「なんか喉が変……」
「お茶たくさん飲め。ほら」
「ありがとう」
こうして夜は更けていった。