「妖しいリーフと料理の旅」part18
「オリサさん、オリサさん、大丈夫ですか」
「だ、だいじょぶ。なんだったんだろ、さっきの……。トール、写真見せて。うん、あたしもリーフちゃんもかわいい。いいね」
少し時間を置いたら元のオリサに戻った。何だったんだろうさっきの。
「あ……これ。あたしすごい顔してる……。リーフちゃんのちゅーってどうなってんの?」
「本当に不思議ですね。わたくしも皆目理由がわかりません。トールさん、ありがとうございます。次はオリサさんが撮っていただけますか」
「もちろん。ここをゆっくり押すんだよね。任せて!」
リーフがベッドから降りて俺の腰掛ける椅子の脇に歩いてくる。
「次は俺か。髪型崩れてないかな」
「いつもどおり」
「トールさんはいつでも端正なお顔ですよ、ふふ」
「え」
俺の背後に立ち中腰になったリーフから不意打ちを食らった。顔の位置が近くてドキドキする。
「ちょっと!リーフちゃん、屈んでるせいでおっぱい、っていうか見えちゃダメなのも見えてる!」
「あら、失礼しました。トールさん、振り返って見てもよろしいですよ。トールさんは特別です。うふふ」
「え」
見たい。じゃない、ダメだ!見えちゃダメなのって何、いや、考えるな、俺!俺はなんてことを考えているんだ。
考えちゃダメだ。
考えちゃダメだ。
考えちゃダメだ。
というか、そもそもリーフはなんてことを言うんだ。
「ふふ、冗談です」
「トール、いまヒドい顔してるよ……。魔法使いの情けで今の顔は撮らないであげる」
「ど、どうも」
「では、このようなポーズならいかがでしょう」
そう言って先程オリサにしていたように背後から俺を抱きしめる。俺の首をリーフの腕が包み、頬にリーフの髪が触れる。更に髪のカーテン越しにリーフの柔らかい頬も密着し体温を強く感じた。
「え、あ、あの、リーフ?」
「トール、ワタワタしない。相変わらずひどい顔だけど、さっきよりはマシかな。はーい、チーズ」
「え、いや、まって」
楽しそうにオリサがカメラを構える。今の俺はどんな顔をしているのだろう。写真に残してほしくないのだが、リーフが満面の笑みをカメラに向けていることは容易に想像がついたので止められなかった。
無情なシャッター音が幾度も響き渡った。
「トールさん、随分鼓動が早く大きくなっていますが大丈夫ですか?」
リーフには自分が絶世の美女だという自覚を持ってほしい。
「ん、大丈夫、大丈夫。ちょっとお茶のおかわり欲しいから自販機コーナー行ってくるね」
自販機の隣に製氷機もあったから、キンキンに冷えた飲み物でちょっと頭を冷やそう。