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逆異世界転移物語 〜エルフ・ドワーフ・魔法使いと地球でゆるくぬるく暮らす物語〜  作者: シンドー・ケンイチ
第七章「妖しいリーフと料理の旅」
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「妖しいリーフと料理の旅」part17

「機能はいろいろあるようですが、基本的にはこのボタンをゆっくり押すと写真が撮れるということですね。最低限の機能を理解したら、徐々にできることを増やしていけばよいでしょう」


 嬉しそうに俺とオリサにカメラを向け、オリサも嬉しそうにピースサインで答える。あのポーズは映画で覚えたものだ。


「なんで指を二本立てるのが写真のポーズなんだろうね」

「まあ絶対そのポーズじゃなきゃダメってこともないけどな。理由はぜんぜんわからん」


 映画を見ながらそんな会話をしたが、疑問に思ったこともなかった。


「リーフちゃん、嬉しそうだね」

「はい!これで、ずっとみなさんを忘れずにいられます」


 液晶の中で笑顔を浮かべる俺とオリサを見つめて呟いた。そうか、長生きするからこそ写真を残したいと思ったのか。


「リーフ、カメラを欲しがったのは写真で俺たちのことを残したかったからなんだね」

「ええ。……残念ですが、千年以上も生きておりますと昔出会った人々の顔を忘れてしまうものなのです。人間族と友人となり宴に興じた。その出来事自体は覚えているのに、顔も名前も声も忘れてしまう。悔しくてたまりません。更にそれが百年前、二百年前なら同席した人も居なくなってしまう。だれも疑問の答えを教えてはくれない。そのような記憶がわたくしの頭の中にはいくつもあります。思い出を共有できるのは同族のみ。同じエルフを嫌っているわけではありません。しかし、他の種族と仲良くなってもあっという間に置いていかれてしまう。それは辛いものです。それもあって、エルフは些か他の種族に閉鎖的なところがあるかもしれませんね。ですから、この世界で写真というものを見つけたときに心が踊りました。いつかトールさんがお手すきの際にあの道具を手に入れられれば。そう思っていたのです。天ちゃん様の携帯電話で写真を撮らせていただいたりもしましたが、どうしても自分用の道具が欲しくて。ですから、今わたくしは本当に嬉しいです。ふふ」


 寿命が無いからこその悩みということか。

 笑顔のリーフと裏腹に俺は神妙な面持ちで彼女を見つめていた。

 と、オリサが広いベッドに店を広げるリーフの隣へと近づきリーフに抱きついた。リーフも少し驚いた顔をしている。


「リーフちゃん、大好きだよ!」

「あ、ありがとうございます」

「トール、あたし達のこと撮って!」


 リーフが持つカメラを指差して指示する。なるほど。


「ああ、もちろん」

「リーフちゃん、それならリーフちゃんも一緒に写らなきゃダメだよ。あたしとリーフちゃんがこんなに仲良しなのも、ちゃんと写真に残さなきゃ!」

「オリサさん……、ありがとうございます。わたくしも大好きです!」


 そう言ってオリサを抱きしめる腕に力を込めた。二人とも嬉しそうだ。俺はリーフから受け取ったカメラを構える。


「撮るよー、はい、チーズ」


 一眼レフカメラ特有の小気味いいシャッター音が鳴る。画面を覗くとそこには満面の笑みを浮かべるオリサとリーフが写っていた。リーフは愛おしそうにオリサの身体に腕を回している。

 液晶の中の彼女の笑顔を見て、リーフが今までに何度も言っていた『この世界に来てよかった』という言葉は、食べ物のことだけではなくさまざまな悲しみから出てきた言葉なのだと実感した。


「トール、次!」

「あら、オリサさんたら。ふふふ」


 オリサがリーフの肩に手を回し、頬に口付けしたまま俺が撮影するのを待っている。


「仲いいな。撮るぞ。はい、チーズ」

「ふふ、ではわたくしも」

「きゃ、リ、リーフちゃんのくちびる、やわらかぁい……」

「おい、オリサ、大丈夫か?あの、お前、目がトロンとしてるぞ……」

「らい、じょぶ……」


 頬が朱に染まり身体から力が抜けてしまった。何か見てはいけないものを見ているような気分だ。

一応シャッターは切るが、オリサが冷静になったら恥ずかしがるだろうな。


「なぜでしょう。ルルさんもそうでしたが、わたくしが口づけをするとみなさん脱力してしまうのですよね」


 とんでもねぇ催淫リップだな。もしかして、リーフってエルフとサキュバスのハーフだったりして。

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