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逆異世界転移物語 〜エルフ・ドワーフ・魔法使いと地球でゆるくぬるく暮らす物語〜  作者: シンドー・ケンイチ
第一章 「『常盤色のオリサ』と黒龍」
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「『常盤色のオリサ』と黒龍」part5

「それじゃ中へどうぞ」


 車の鍵を開け運転席に乗り込むと三人に乗車を促した。


「ここを引くの?あ、開いた。お邪魔しまーす」


 オリサが助手席に入ってきた。場所を決めてから促した方が良かったな。


「リーフとルルは後ろの席にどうぞ」

「失礼します」


 リーフも運転席の後ろの席に座ったがルルが来ない。よほど気になるのか、車の周りをぐるぐる歩きながら観察し続けている。見たところでわかることは少ないと思うのだが。


「ルルちゃんはーやーくー。あたしの後ろ空いてるよ」

「あ、ああ。どうなっているのか全くわからん。外装を剥がせば中の駆動部が見られるだろうか……」


 無理やり乗せないと長くなりそうな気がしてきた。放っておくと車を解体しそうな様子だ。あの斧はそのためか?


 俺は一旦車を降りてルルの(そば)に立った。


「そこら辺は追々勉強してくれ。今は移動しよう、ほら」


 タイヤを見つめるルルの肩を掴み、後部ドアを開けて無理やり移動させる。小さい子供の親になった気分だ。


「こ、これからどのように動くんだ?動力は?馬と比べて速さは」

「乗ってくれればこれからわかるって」


 親ってすごいんだな。好奇心旺盛なちびっ子が現れたことで実感した。


「あ、シートベルトしないとな。オリサ、そこにある黒いベルト引っ張って、あ、ゆっくりと。リーフとルルも引っ張って取り出して、椅子に受け口があるからそこに挿し込む、そうそう」

「これは何のためにするのだ?邪魔なのだが」

「もし事故が起きても投げ出されずに済むように、だな。勢いよく引っ張ると止まるようになってるんだ」

「トール、あたしちゃんと付けられてる?」

「えーと、うん、大丈夫」

「リーフちゃんは?」

「ん?問題なし」

「ねえ、(なな)めのベルトが真ん中を通ってるせいでおっぱいすっごく強調してるのはいいの?」


 オリサが耳元でささやく。

 つい見てしまった。たしかにすごく強調されてる。

 リーフと目が合ったけど、聞こえていなかったのか彼女は優しく微笑むだけだった。


「いいね、じゃない。いいの」

「なるほど!」


 そういって納得した様子でオリサは前を向いて座り直した。女の人はシートベルトを使うと自然にああなるのか?いや、わざわざやらないと無理じゃないか?

 男の俺にはわからない。

 わかんねぇ。

 さっぱりわかんねぇ。

 何が何だかわかんねぇ。

 こんな話は聞いたことがねぇ。

 清水寺のお坊さんもわからねぇはずだ。たぶん。


「んじゃ安全運転で頑張ります」


 エンジンをかけてからのことは『いろいろあった』としか形容できない。

 窓から見えるもの一つ一つに解説を求められたが、こちらは慣れない運転に緊張状態でそれどころではない。対向車も、飛び出す子供も、超スロースピードで動く危なっかしい自転車のお年寄りもいないのだから心配し過ぎかもしれないが。

 ルルだけではなくオリサとリーフからも質問攻めにあい、ルルが後ろから身を乗り出すから注意し、オリサが窓から手を出し同様に注意する羽目になった。始めこそ質問してきたが、ストレスなく運転させてくれたのはリーフだけだった。


 ・・・・・・・・・・・・


「ちょっと腹減ってきたな」


 家を出て早々、空腹感を覚えた。よく考えれば十時過ぎに神様や彼女たちに出会い帰宅。その後コンビニへ出かけて食料を運び近所を散策して今に至るので、太陽も一番高い位置を過ぎて昼には少し遅い頃だった。三人は我が家であれこれ食べていたのでそんなに腹も減っていないかもしれないけど。


「そうだねぇ。そろそろお昼ご飯にしようか」

「悪くない」

「どのようなものが食べられるか楽しみです」


 ぜんぜんそんなことなかった。


「店は当然やってないけど食べ物自体はあるはずだよなぁ。あー、でも自分で作らなきゃならんのか。面倒だし、コンビニでもいいかな?」


 ファストフード店に行ったとしても、まず自分たちで調理しなきゃならないわけで。


「先程の万屋(よろづや)ですね。ぜひお願いいたします」

「あたしもいいよー」

「頼んだ」


 コンビニの食べ物は案外好評なんだな。とりあえず安心だ。他の選択肢を知らないだけでもあるけど。


「それじゃ、次に見かけた店に入ろうか」

「よろしく〜」

元ネタ集


・「わかんねぇ〜清水寺のお坊さんもわからねぇはずだ」

 黒澤明監督の『羅生門』冒頭での志村喬の台詞。トールくんは映画好きなので。

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