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逆異世界転移物語 〜エルフ・ドワーフ・魔法使いと地球でゆるくぬるく暮らす物語〜  作者: シンドー・ケンイチ
第七章「妖しいリーフと料理の旅」
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「妖しいリーフと料理の旅」part8

「あ、そういえばテレビで見たことあるけどさ、お皿の真ん中に数字の『1』みたいにご飯を置くんだよ」

「はい」

「それで、その両側に二種類のカレールーを流して食べ比べができるっていうの見たことあるな」


 指先で空中に円を描き中央に一本線を引きながらリーフに説明する。


「わかるかな?『1』じゃなくてアーモンド型にご飯を盛ってもいいと思うけど。お皿の上でカレーのダムを二つ作るって言えばイメージしやすいと思う。今度やってみたら?あ、でもわざわざカレーを二種類作るのが手間かな」

「トールさんっ!」

「はいぃっ!」


 どうした。急にでかい声で名前を呼ばれた。


「すみません、降りてください!」


 そう言ってリーフはドアを開け車外に出る。どうしたんだ。


「あ、ああ。何かあったの……?」


俺も車から降りてリーフの正面に立つと、彼女は突然しゃがんでしまった。


「リーフ!?どうしたんだ?気分が」


 あれ?ついさっきこんな経験をした気がする。あまりにくだらない内容で脱力したような記憶が。困惑で言葉を途切れさせつつ顔の高さをリーフに合わせる。


「トールさん!いいえ、我が主よ!」


 見ればリーフは片膝を付き頭を垂れて緊張の面持ちをしている。この姿、見たことあるな。そうだ、神様に頼んで家に馬とか連れてきてもらうとき、リーフはこうやって跪いて神様に敬意を払い懇願していた。


「あ、あるじ?」

「わたくしがこの世界に来たことは間違いではありませんでした!」


 さっき聞いたぞ、それ。今度は何がヒットした。


「あらゆるお肉が一皿で堪能できる!カレーとは何と自由なお料理なのか!素晴らしい、なんと素晴らしい!」


 何言ってんの、こいつ。


「更には、まさか二種類のカレーを一皿で食べ比べなど、愚鈍なわたくしには思いつきもしない革命でした。どうか、どうか末永くトールさんの下に仕える許可を!」


 ホントに何言ってんの、こいつ。

 割と誰でも思いつきそうとか思っても言わない。今のリーフは何をしでかすかわかったもんじゃないし。


「トールさん、あなたは神にも悪魔にもなれる。いいえ、神をも超え悪魔をも倒せるでしょう!あなたが命を賭けた戦いに身を投じろと命じれば、わたくしは躊躇うことなく弓を手に立ちあがります!これからも何卒素晴らしい料理案をお聞かせください!」


 こいつヤバいやつだ!なんとか穏便に話を終わらせよう。


「あの、えー、そうだな、俺は今まで通りの関係で十分だし君にも死んでほしくないから、いつもどおり生活しよう?な?リーフが食べたいものは何を作ってくれてもいいから。意見を求められたらまた提案するし。ほら、とりあえず立って、ね?」

「いけません、立ってしまえば主たるトールさんを見下すことになってしまいます!」

「そんなの気にしなくていいから!俺たち家族だろ?上も下もないって。ほら、いつまでも地面に膝を付いてたら痛いって。服が汚れるよ?ああ、髪も地面に付いちゃってるし」


 リーフの肩を掴み無理やり立ち上がらせる。本当に彼女の頭の中はどうなっているんだ。スカート前面に付いた砂埃を払ってやりながら、拭えぬ疑問が頭の中をグルグル回る。


「このようなわたくしに過分なお慈悲を……、トールさん、わたくしがんばります!」

「うん、よろし、んが!」


 力なく返答した直後、視界が闇一色となった。

何かが俺の頭を押さえている、顔全体を柔らかくて温かいものが覆っている、息ができない。なんだこれ!めちゃくちゃ怖い。

フェイスハガーか!俺、寄生されるのか!?


「トールさん!ありがとうございます!ありがとうございます!わたくし、がんばります!みなさんに美味しいご飯を提供いたします!お任せください!」


 頭のすぐ上からリーフの(とき)の声が聞こえる。俺はもしかしてリーフに抱きしめられているのか?必死に腕を動かすとリーフの腰や背中に触れたのがわかった。


「んんーーー!!」


 うめき声しか出ないがとにかく緊急事態であることが伝わればそれでいい。早く離してくれ!苦しい!


「トールさん、そんなに喜んでいただき光栄です!がんばります!」

「んんんん!」


 そうじゃねぇよ!放せってことだよ!

 今度は必死にリーフの背中を叩く。タップだ、タップアウト!試合終了!


「ああ、トールさんも興奮していらっしゃる!お任せください!」


 手足に力が入らない。

 ルルにも似たようなことされたけど、今度こそダメなのか。

 みんな、さようなら……。


「リーフちゃん、何してんの!トール死んじゃう!腕がだらんとしてるよ!」

「は!す、すみません!トールさん?トールさん!死なないでください!」


 開放されると同時に自分の身体が地面に向けゆっくり崩れ落ちていくのを感じた。必死に繋いでいた意識が手から離れていった。

元ネタ集


・「神にも悪魔にもなれる」

 元祖スーパーロボットマジンガーZのキャッチコピーより。

・「神をも超え悪魔をも倒せる」

 マジンガーZの強化ロボットマジンカイザーのキャッチコピーより。

・「フェイスハガー」

 エイリアンに出てくる寄生生物より。

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