「妖しいリーフと料理の旅」part3
「それでしたら、動画を探して勉強してみましょうか」
「いや、一つ提案なのだがな、先日はリーフに留守番を頼んで出かけさせてもらっただろう?リーフよ、今度は私が留守番をするので、トールと共に泊りがけで出かけてはどうだろうか?」
「俺とリーフで?」
「ああ」
思ってもみない話だった。
「そもそもトールは料理を覚えたいということを言っていただろう?例えばレストランへ行き、メニューを見て気になる料理を練習する。当然、材料も機材もそこにあるはずだ。家で練習するより料理に集中できるのではないかと思ってな。それに、リーフだけ都市部へ行ったことがないのもやはり申し訳ないという思いもある。出かけたらリーフにとっても発見などあるかもしれない。どうだろうか?ここ数日考えていたことなのだが」
なるほど。ただ願望を並べるのではなく、相手への気遣いも込めて提案をする。ルルらしくよく考えて発言しているな。
「俺はいいよ。丁度いい機会だから、何日か出かけて料理修行だ」
「わたくしも、そこまで言っていただけるなら少しお暇をいただこうかと思います。家畜たちのお世話はルルさんとオリサさんでされるということでしょうか」
「あたしもそれでいいよー」
「いや、オリサはトールたちと共に行くといい」
つまりルルが一人で家畜と野菜の世話をすると?
「動物と話せるリーフに比べると、お前一人じゃ負担が大きいんじゃないか?」
「先日増えた豚に関してはひたすら放牧で、わたしたちはほぼノータッチだろう?牛や羊も妊娠している個体はいないからお産の心配はない。乳搾りも機械がある。それに牛等の動物も放牧が主だから主な仕事は掃除だ。雑草が生えにくい気候というのもあるから、むしろ出かけるなら本格的に日照時間が伸びる前の今だと思うんだ。ここ数日、そのようなことを考えながら作業をこなしてみたら、なんとかなりそうだと思ったわけだな」
「驚いたな。そこまでいろいろ考えて行動してたのか」
「ああ。それにな、実は既に賛同者がいる」
「賛同者?」
「天ちゃんだ。先日、遊びに来た際にわたしの工房を見学に来ただろう?そのときこの話をしてみたら、わたしを手伝ってくれると言ってくれてな。お前たちが帰ってくるまで住み込みで助けてもらうことにした」
泊まりに来て翌朝の農作業を手伝ってくれたことがあったけど、そういう事情があったのね。恐るべしルル。
「恐ろしく用意周到だな」
思わず笑いながら声に出した。
「人に頼み事をするならまず環境を整えなければな。最低限の礼儀だ」
「ねえねえ、あたしは残るつもりだったのに、なんで一緒に行くの?お出かけは好きだから嬉しいけど」
「お前も料理を習うのに前向きだっただろう?なら、一緒に行って覚えてきたらいいと思ったんだ。そして帰ったらわたしに教えてくれ。わたしは練習になり、オリサには復習になる」
「視野が広く用意周到。ルルさんは軍師の才能があるかもしれませんね」
褒めてるのはわかるけど、平和な世界じゃ大して嬉しくないだろうな。
「そ、そうか。ぐんし……?」
やっぱり。
そんなわけでその二日後、俺達は農作業が終わったら車に乗り込み家を後にした。俺とオリサは前回の小旅行からそれほど間を開けず休みをもらった形だ。がんばってルルの期待に答えよう。
俺たちを見送るルルと天ちゃんの笑顔に車内でそんなことを話した。