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逆異世界転移物語 〜エルフ・ドワーフ・魔法使いと地球でゆるくぬるく暮らす物語〜  作者: シンドー・ケンイチ
第一章 「『常盤色のオリサ』と黒龍」
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「『常盤色のオリサ』と黒龍」part4

「それではとりあえず、今植えられているジャガイモを育てながら、徐々に農業の知識を増やし、他の野菜も育てていく方針でよろしいでしょうか」

「異議なし」

「さんせー」

「もちろんだ」


 一旦帰宅したところで、リーフが話をまとめてくれた。皆もそれに続く。


「農業大臣のオリサを中心に、みんなで力を合わせて頑張ろう」

「おーよ!大臣がんばるよー」


 オリサがノリノリで助かった。


「次にですが、種苗店(しゅびょうてん)を探すのもいいとは思いますが、広範な知識を得るためにはやはり図書館が一番だと思います。トールさん、近くに図書館はあるのでしょうか」

「うーん、図書館かぁ。一番近いところは、そもそもの蔵書量があまり期待できないなぁ」


 一番近いところは、たしか『図書館』という名前ではなく役場の中の『資料室』だったような気がする。使ったことがないのでかなりうろ覚えなのだが、あまり役立つとは思えなかった。


「それは困りましたね」

「土を舐めてそれが良い土だと理解できるオリサなら何とかなるのではないか?」

「さすがに無理だよぉ」


 ちょっと期待したけど、さすがに無理だったか。オレ目線だと『無理』の基準がよくわからないのだが。


「みんなで知識を共有するためにもやっぱり本があった方がなにかと便利だよなぁ」

「そうですね」


 そこで思い出した。


「あ、そうだ。隣町に農業高校があるな」

「こーこー?」

「あ、オリサの世界にはないかな。勉強するための場所だよ。高等学校。略して高校。俺も今は高校の生徒なんだ」


 今更だけど、卒業したかった。


「つまりそこは農業を専門に学ぶ施設ということか。なら、目当ての資料が無いはずないな」

「それでは早速行きますか?」


 行くにしても問題がある。


「そうだなぁ」

「お、早くもあたしのリヤカーが活躍する時が来た?」

「いや、ちょっと待て、流石に無理だろ」


 引くオリサはまったく楽ができないが良いのだろうか。


「そういえば、トールさんのお宅には馬はいないのですか?」

「馬?ウチどころかこの辺りで飼ってる家はないよ。今の時代、馬は交通の主流じゃないし」

「そうなんですか!」

「なんと!」

「ホント!?」

「お、おう」


 三人がそれぞれ目を丸くして驚いている。


「ではこの世界の方々は何をお使いに?」

「自動車だよ。車って言う方が多いかな。えーっと、手っ取り早く言えば、何人かで乗れる鉄の塊って感じの。乗れる人数は大きさによるけど」


 うわ、説明雑すぎる。


「ほう、鉄の塊が。興味が湧いたぞ。トールはそれを持っているのか?」

「俺のじゃないけど、親のなら」

「なら、それで出かければいいね」

「まぁそうだな」


 歯切れが悪くなってしまう。


「何か問題があるのですか?」

「さすがに疲れたか?朝から驚きの連続だろうし、無理はするな」

「ありがとう、大丈夫だよ。ただ俺が気にしてるのは別のことで、俺は自動車に乗れるようになったのが最近でさ」


 俺はつい先日免許を取得したばかり。


「乗れるようになったばっかりで、他の車に気をつけながら走るのがまだまだ怖くてさ。もちろん、そんなこと言ってたらいつまでも上達しないのはわかってるんだけど」

「トールさんが気にしていらっしゃるのは、初心者故に他の方に迷惑をかけるのではないかということですか?」

「そう」


 慣れは大事だけど、慣れるまで怖いもんは怖い。


「なあ」


 ルルが不思議そうに俺を見る。


「ん?」

「確認だが、今の状況はわかっているのか?」

「もちろん。俺の運転でみんなで出かけようとしてる」


 あ、買っておいた初心者マークどこに置いたっけ。マニュアルの坂道発進は今も不安だが、今日の運転は平坦だし大丈夫だろう。あれ、そもそもウチの車は全部オートマだ。ナビが大きい道を優先してくれればなお安心だが。


「その自動車というもの自体はあるのですよね?」

「あるよ」


 これはさっきも確認した。


「じゃあさ、トールが乗ってて気をつけなきゃならない相手はいるの?」

「あ、そうか」


 なるほど、神様が言っていた社会がないというのはこういうことか。自損に気をつければ、事故を起こす相手なんてどこにもいないんだ。


「何を気にしているかと思えば。心配したぞ」

「ホントだねー」

「ごめん」

「ま、まぁ、トールさんは今日急に環境が変わったばかりですから」


 エルフ姉さんだけが優しかった。

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