短編3「リーフwith刃物」part3
「短剣はお気に召さなかった?」
「ん、まぁそうね」
「そういやオリサの誕生日って」
「リーフちゃん何してるだろうね?」
遮られてしまった。歳に関わる話は好きじゃないのだろうか。
「いつも通り、生きてる動物を見て涎垂らしてるんじゃないか?」
「生きてる間はやめてほしいよねぇ」
「まったくだ」
工房から放牧場に向けて普段はあまり足を踏み入れないエリアを歩く。自宅の一部ではあるが、最近拡張された場所なのでなんとも新鮮な気分だ。
「最近暖かくなってきたせいか、草が伸びてきたなぁ」
「そういえばそうだね。そういえばサクラ綺麗だったねぇ。次はどんな花が綺麗なの?」
なんだろう。四月の花、まだもう少し桜だろうか。その後は……梅雨になって紫陽花かな?
「もうちょい桜。その後はたぶん六月頃に紫陽花かな」
「サクラとアジサイの間の花は忘れたんだ?」
「花の知識あんまりなくてな」
お恥ずかしい。
「男の子はそんなもんなのかな。仕方ない。もう少ししたらこの伸びた草を切ろうか?」
「んー、まだ気にならない程度だしもう少し伸びてからでいいんじゃないかな」
「うん」
「土地が広いから七月とか八月の一番暑い時期だと何日もかかるだろうなぁ」
「あたし暑いの苦手だから、あんまやりたくないなぁ」
「本格的に暑くなる前にかなり短くしておいて、一番暑い時期が過ぎたらまた草刈りするとかかな。そこら辺は追々考えよう」
話しているうちに放牧場に到着した。
「リーフはどこだろ?テーブルにはいないな」
「いつもあそこにいるのにね。ちょっと歩いてみようか」
「だな」
・・・・・・・・・・・・
「牛さん、お食事中失礼します。あなたのご主人様がどちらにいらっしゃるかご存知ではありませんか?」
近くにいた牛の顔を覗き込んでオリサが物真似しながら話しかけた。
「リーフっぽい口調で話しかけてもわからんだろ」
オリサは案外多芸だな。そう思っていたら牛がそっぽを向いてしまった。草を食べているところで話しかけたから嫌がられたかな?
『ンモー』
顔を別の方向を向けて鳴き声を上げたと思ったら、『モッシャモッシャ』と口を動かしながらオリサに向き直る。
「マジで?」
「通じた……?」
思わず顔を見合わせてしまった。問いかけた本人も驚いている。
「とりあえず、あっち行ってみるか」
「うん。あ、そうだ。牛さん、ありがとうございました。いい子ね」
「ありがとうな」
そう言ってリーフ風のオリサと共に頭を軽く撫でてやる。
『ンモー』
これは本当に言葉通じてるな。偶然とは思えない動きだ。
「さて、あっちか」
「だね。え……、トール、リーフちゃんがいるのってもしかして……」
「あー……」
何も考えずに歩きだしたけど、よく見たら牛が教えてくれた方角にあるのは加工場だけだ。
「建物の前まで行って、少し待とうか」
「そだね……」