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短編3「リーフwith刃物」part2

「この建物ってかなりごちゃごちゃしてるよね」

「とにかくあらゆる作業ができるようにしたから、炉があったりいろんな機械があったりなんだよ。どれが何をしてる機械なのかはまったくわからん。迂闊(うかつ)に触るなよ。どれも巻き込まれたら危ないんだから」

「ルルちゃんどこだろ?」

「何か叩いてる音がするから、鍛治(かじ)エリアだと思うぞ」


 ルルが神様にねだって作らせた工房は鍛治(かじ)冶金(やきん)、プレス、溶接、溶断あとなんだったか、とにかく色々とできるように作られた、かなりごちゃごちゃした空間だった。どう考えたって同じ建物に詰め込むような施設じゃないけど、安全に作業できて火事を起こしたりしなければそれでいい。

 隣にはパソコンがたくさん並んだ部屋と、なんか色々な実験用設備の整った建物もある。サッパリわからないので、建てられたときに軽く見学したきり足を踏み入れていなかった。


「おーい!ルルー!どこだー!?」

「こっちだー!奥に来い!」

「今更だけど、こんだけいろいろ詰まった設備作ったら神様も疲れるわな」

「そうだね。エイプリルフールとかいうふざけたイベントはまだ許せないけど」

「まあまあ」


 俺よりもオリサの方が尾を引いてるらしい。



「どうした?ここに来るなんて珍しいじゃないか」


 作業服の上半身を脱いで腕の部分をヘソのあたりで結び、上半身はランニング姿のルルが姿を表した。


「手を止めさせて悪いな。急ぎじゃないんだけど、ルルに聞きたいことがあって」

「金属を加工するのって大変なんだね。ここ暑いよ」

「リーフの短剣を手本に、わたし作の武器を作りたくてな。平和なこの世界で使う機会はないが。それで、なんだ?」

「ルルって散髪できる?」

「散髪?ふむ、できないことはない、くらいの腕前だな。弟の髪をたまに切ってやった程度だ」

「実は俺の髪がだいぶ伸びたから切りたくてな」

「なら、リーフに聞けばいいのではないか?わたしより適任だろう?」


 ルルもそう思うよな。


「ルルちゃん、この短剣って練習で作ったもの?」

「ん?ああ、出来上がってみれば全く納得できないものだ。父にも祖父にも到底顔向けできない代物(しろもの)だが、それがどうした?」

「ちょっと借りるね。ルルちゃんそこに座って」


 無害なオリサとはいえ、刃物を持った人物が背後に立つのは気分の良いものではないのだろう。ルルが困惑を隠さずにいる。


「大丈夫、俺が見てるから」

「よくわからんが、まあいいだろう」

「うんん!」


 大きく咳払いをすると、オリサがゆっくりルルの背後に近づいて行く。


「ルルさん、ずいぶん髪が伸びましたね。切って差し上げます。ご安心ください。わたくし、ハサミを使うまでもなく、短剣で散髪ができるのですから。あはは、あははは!」

「や、やめろ!」


 オリサってモノマネが得意なんだな。今のリーフの真似、かなり似てた。


「どーだった?あたしのモノマネ」

「恐ろしく似ていた。そして、例えようのない恐怖心が湧いてきた。なるほど、お前たちがわたしを訪ねたのはそういうことか」

「そういうことだ。さっき二人で話したけど、リーフはいい奴だ。間違いなく最高の家族だ。でも、刃物を持たせるとなんか怖いんだよな」

「ああ、わかる。あいつは間違いなくいい奴だが、刃物を持って背後に立つのを想像しただけで震え上がる」

「だよねぇ」


 リーフについて共通の認識を確認しあった。嫌なトークだな。


「そんなわけで、ルルに頼めるなら頼もうと思ったわけだ。とりあえずリーフのところにも行ってみるよ。俺たちリーフが髪を切れる前提で話してるけどムリそうならルルに頼もうかなと思う。いいかな?」

「ああ、大した腕前ではないが経験がないわけでもないしな。ま、リーフは馬やら牛やら色々な動物を世話しているから問題ないだろう」

「それじゃ、行ってくるよ。手を止めさせて悪かったな」

「気にするな。ああ、オリサ。その短剣は箱に戻しておいてくれ。いずれまとめて溶かして再利用しようかと思っている」

「見た感じ綺麗にできてるけど、これって不合格なの?」


 見ればオリサが短剣を入れた箱には”reject(不合格)”とマーカーで書かれていた。


「ああ、かけら程も満足できない。そうだ、オリサの誕生日には短剣を作って贈ろう。トールにもな。目標があれば気合も入る」

「ん、どーも」

「ありがたいけど短剣貰ってもなぁ。ま、頑張ってくれや」

「ああ。では、作業に戻らせてもらう」


 そう言ってルルが結んでいた作業服を解いて着始めたのを見て、俺たちは工房の出口へと歩き始めた。

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