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逆異世界転移物語 〜エルフ・ドワーフ・魔法使いと地球でゆるくぬるく暮らす物語〜  作者: シンドー・ケンイチ
第六章「降臨、天の使者」
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「降臨、天の使者」part17

「トールくん、マジで十八歳っすか?その年ならもっと遊んでもいい年頃でしょうに」

「いや、まあ、遊んでるのもクラスにはいたけど」

「真面目っすねぇ。ま、そういうのも大切でしょうけどね。な~るほどね~。老婆心と言いますか、ちょいとばかし助言させてもらうとですね、トールくんが心から一緒にいたいと思うなら、子どもを持つ持たないは関係ないっすよ。まず相手を見つめてください。元の世界でも、自分たちで選んで夫婦二人の家庭っていうのもたくさんあったんすから。身体のお付き合いはそのずーっと先のことです。真面目なトールくんは身体が先って順番は嫌いなんでしょう?それでいいんす。もし三人のうちだれかがトールくんを好きになったとき、トールくんがやるべきことは相手を理解することっす。ずっと一緒にいたい、心からそう思えたらそれは恋愛の入口に立ったということですから。緊張するのもわかります。そのときがきたら、緊張していることも含めてトールくんの気持ちを何も隠さずお話ししてください。三人とも、ちゃんと話せば理解してくれる子でしょう?」

「なるほどね。……まだよくわからないところもあるけど、覚えておくよ。ありがとう」


 でも既に三人ともずっと一緒にいたいって思ってるんだよなぁ。みんなに思ってるから、これは恋ではないよなぁ。


「まぁ、あんなかわいい子達と出会って一か月ちょいなら感覚が麻痺して『好きな気がする』だけかもしれないっすけどね。これからゆっくり冷静な目で見ましょうね」

「付き合う気はないって言ってるのに、なんで諭されてるの?」


 本心をぶっちゃけたせいか、興奮したのか、身体がだいぶ暑くなってきた。ちょっと一枚脱ぐか。外出時からずっと着ていたカーディガンを脱いでシャツ姿になる。これでもまだ少し暑いかな。


「あれ?真面目なこと言った割に天ちゃんを押し倒そうとしてます?いやぁん」

「違うわ!嬉しそうに転がるな!単に暑くなっただけ、ってか、この部屋自体が暑いのか」


 ここに来てようやく異常に気づいた。部屋に入ってからしばらくはポカポカと暖かかったが、今はやけに暑い。サウナになるのも時間の問題だ。というか既に湿度を除けばサウナのような熱気に包まれている。


「暖房効きすぎだな。止めよう。リモコンか、操作盤か、とにかくどこだろう?」

「操作盤のはずっす。そういうのはたいてい部屋の入口に……、あれ?」


 俺も同じ考えで部屋の入口を見て、同様に不思議に思った。入口の壁には何もない。


「ないね」

「ええ……」

「ちょっと一通り見て回ろうか。リモコンがあるかもしれないし」

「あの、トールくん、手前気づいちゃいました……」


 嫌な予感しかしない。聞きたくないが聞くべきだろう。


「なんじゃい……?」

「たぶん、エアコンの操作盤は扉の外に。うっかり設置場所を間違えちゃった気がします……ごめんなさい!」


 表情からそうじゃないかと思っていたが、やはり天ちゃんのミスだったか。


「ドンマイ。……仕方ない、干からびる前に見つけてもらえるよう期待しよう」

「本当にすみません!」

「まあ、これもわざとやったわけじゃないしさ、気にすんなって」

「はいぃぃ……。手前の不注意で、ホント申し訳ないっす」


 先程までのお調子乗りの顔から一転して、目に見えてしょげてしまった。体育座りする背中が小さく見える。

 何か話題を切り替えたいのだが。


「あー、そういえば、天ちゃんの一人称って独特だよね」

「ええ、まあ」

「なんていうかなぁ……」

「『手前(てまえ)越後(えちご)縮緬問屋(ちりめんどんや)隠居(いんきょ)です』みたいな?」


 ノッてきた。


「本名は光右衛門(みつえもん)?それとも光圀(みつくに)?」

「ふふふ。よくおわかりっすね」

「割と時代劇好きだったし、生まれ育った県の有名人だからね。そのネタわからないはずがないって」


 天ちゃんと話すのはオリサ達とは違った楽しさがある。なんでだろう。


「あの三人にはきっとわからないネタですから披露できて良かったっす。『手前』って言うのは特に意味はないっすねぇ。単なる個性っす」

「なるほどねぇ」


 そうか、ちょっとわかった。三人には通じないような冗談が言い合えるからだ。久しぶりに友達と喋っているような、そんな気楽さがあるんだ。オリサたちと話すのも楽しいけど、天ちゃんはまた違った面白さがあるからこんなに楽しいに違いない。

 ぼんやりと天ちゃんに視線を送りながらそんなことを考えた。

 この人と話していると得も言われぬ心地よさを覚える。もっと一緒にいたい、もっと彼女を知りたい、そう思ってしまうほどに。


「他の人に通じない冗談が通じるのってすごく嬉しいもんだね。すっかり忘れてた感覚だよ」

「へへ、ありがとうございます。それにしても暑いっすねぇ」


 だいぶ汗をかいたのか先程に輪をかけてシャツがぺったりと張り付いている。更には下着も先程以上にくっきりとしている。見ないように気をつけねば。

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