06 皆の盾になる!
とある町で、ラーガの5年前にあった、その出来事を紅葉たちは聞いていた。
「妹さんが、誰に殺されたんだろう…。」
「そのお面を被ったやつは、本当に何者なんだ?」
紅葉、セラティナが言っている中、黒瀬とピーロンは、
「お面の被った男は、これまででも何回か確認されているみたいですよ?」
「このチラシは、ひと月前のものですが…。」
ピーロンは、1枚のチラシを出した。
◇ ◇ ◇
◇謎の仮面の男!!
颯爽と現れた仮面の男は、次々と町や村を襲っていった。
南側は、ほぼ壊滅状態まで追い込まれている。
一部の噂では、その仮面の男は、四天王の1人だと言う者もいる。
◇ ◇ ◇
「四天王って…。やばいじゃないのよ。」
「しかも、その南側に住んでいたのは、私の国でもあるのだ。」
「えっ?」
「まじか…。」
「ああ…。本当の話だ。」
「四天王なんていたのか?」
「わたくしの調べによりますと…。」
急に、黒瀬がさっきまで黙っていたのに口を開いた。
「四天王、今や、北、南、東、西の地と、それぞれの所に1人ずつ、ついているようです。」
「どっからの情報よ?」
「てか、いつの間に調べたの?」
「皆様が寝ているときや、空き時間にです。」
(そんな時間あったか?)
紅葉は、そう思いつつ、黒瀬の話を聞く。
「それは、今からちょうど5年前のことです。」
「5年前って…。」
「私の国が、戦争を起こしているときだ。」
「ええ、その時には、もう、四天王が現われていたそうです。」
「つまり、どういうことなのだ?」
「どこからか、情報が漏れていたに、違いないですね。」
「そんな…。」
紅葉たちは、黙り込んでしまった。
ラーガにも分からなかった。
それは、戦争のことなどの話し合いは、極秘に行っていたからだ。
「それは、私の父の召使い等の、裏切りがあったからに違いない。多分、ほとんどの作戦が、漏れていたんだ。」
そう、ラーガは確信した。
そして、憎しみが湧いてきた。
「そいつを、殺してやる!妹を殺した、あの四天王の1人を倒す!」
そう言い、ラーガは席を立った。
「ラーガ、なら、私たちの仲間にならない?そうすれば、奴らの情報が入りやすいと思うのだけど…。」
「だが、私は妹を守れなかった。だから、誰も守れない。もう、あの悲劇を味わいたくないんだ!」
「大丈夫よ。私たちは、死なない。みんなで笑顔でいたいから…。それと、私はまだ、あなたに恩返しができていないんだもん。だから…。ね?」
ラーガは、少し考え込んだ。
それから…
「すまない…。少し考えさせてくれないだろうか?」
「大丈夫よ。いつでも返事は待っているから。」
ラーガは、そう言うと、どこかに姿を消した。
◇ ◇ ◇
「次は、どこに行こうかなぁ…?」
「クエスト何にしようか?」
「そうですね…。こちらの町から近いのは…。【クライム―ン村】があります。そこでは、ゴーレムが暴れているみたいですよ?」
「そうなのか?」
「行ってみるか?」
「それはもう、片っ端から、クエスト攻略するしかないでしょう?」
「では、手続きをしてまいりますゆえ、少々お待ちくださいませ。」
「えっ?わざわざ帰るのか?」
「そんなバカなことはしませんよ。お嬢様でもあるまいし…。」
黒瀬は、そういうと、クスリと笑う。
「何笑ってんのよ!?」
「だ・か・ら。お嬢様みたいに、バカではあるまいしと言っているのでございますよ?」
「誰がそこだけ、言いなさいと言ったのよ?」
「それでは、見せてごらんにいれます。」
そう言って、黒瀬は指をパチンと鳴らすと、それはかっこいい鷲が出てきた。
紅葉たちは、びっくりして、目が点になった。
「く、黒瀬…。その…鷲どうしたの?」
「ああ、この鷲はですね。クエストといいますか…。何と言いますか…。ダンジョンに行ったときに、ボスキャラを1分内に倒したら、ボーナスポイントのように出てきたんですよ。あと、他にもございますよ。これもですね…。」
黒瀬は、また指をパチンと鳴らしと、グリフォンが現われた。
「は?」
「なんか…。凄いな…。」
「いつの間に、ダンジョンに行っているのよ!!てか、行く暇なかったでしょう?」
「いいえ、ありましたよ?」
「え?」
「お嬢様が、お買い物に行っているときに、颯爽と行ってきましたよ。」
黒瀬がニコリと笑う。
「えっ?でもあれ…。30分程で買い物から帰ってきたわよ?」
「30分もあれば楽勝ですよ。」
「はい?」
その話を聞いていたピーロンが、
「本当にそうなんですよ。」
「えっ?なんでピーロンが知っているの?」
「私も一緒に行きましたから(汗)」
「えーーーー?」
紅葉とセラティナが、口をそろえて言った。
「じゃあ、どうやって倒していたの?」
「瞬殺です。」
と、一言だけだった。
「黒瀬様が、ほとんど倒してしまったので、私は何もしてないですよ?」
「はい?」
「でも、行きと帰りはどうしたの?」
「それは、背中に乗せてもらって…。」
「ピーロン様は、軽かったので、早く戻れました。お嬢様とは、全然違います。」
「っるさいわね!はっきり言いなさいよ?重いって。」
「では、失礼ながら…。お嬢様は、最近、太ってきているのかお腹回りが大きく感じますよ?」
「遠回しに、太い!って、言っているじゃないのよ!」
「フフッ…。」
「鼻で笑ってんな!」
「では、手続きをしておきますね。」
「ちょっと!話聞いてないし…。」
横で紅葉が、がみがみ言ってる中、黒瀬は冷静に、手紙をギルドに送っていた。
「てか、手続きが必要だったんだ…。」
「あれ?知らなかったの?」
「あれ?みんな知っていたの?知らなかったの…私だけ?」
「そうみたいだね…。」
紅葉の顔は、赤くなった。
「あらあら、お嬢様。本当に、名前の通り。紅葉色になっていますよ?」
「うるさいわね!」
黒瀬を紅葉は、ベシベシ叩いていた。
「ほんとっ、仲がいいなぁ…。」
「本当ですね~。和みますー。」
「見てて面白いしね(笑)」
セラティナ、ピーロンは、そう言いながら、紅葉が黒瀬にいじられている所を見ていた。
◇ ◇ ◇
クエストを申請をした。
そして、クエストにいざ出陣。
〇キメライヤを倒せ!
「キメライヤとは、お嬢様お分かりになりますか?」
「聞いたことはあるけど?あんまり、詳しい事が分からないわ。」
「ラテン語では、キマエラ。ヨーロッパのいくつかの言語ではキメラと言います。
テューポーンとエキドナの娘で、ライオンの頭と、山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つと言われ、それぞれの頭を持つとする説もあります。強靭な肉体を持ち、口からは火炎によってしばしば山を燃え上がらせていたそうです。」
「それは、怖いなぁ…。本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫よ。瞬殺よ!」
「でも、今のを聞くと、勝てそうにないけど?」
「でも、これをクリアしないと、ギルドの城が建てれないじゃないのよ!」
「あー…。そうだったね。なんぼほどと考えているんだい?」
「そうねぇ…。黒瀬、逆になんぼなら出せる?」
「全部、黒瀬も持ちかよ…(汗)」
「いつもは、お金を持っているのは、黒瀬の役目よ。現実世界では、いつもそうだったから…。」
「お嬢様は、わたくしがいないと何もできないんですから…。」
「しょうがないじゃないのよ!そういう家に生まれてしまったんだから。」
「紅葉の家は、お金持ちなのかい?」
「そうよ。」
4人は、薄暗い洞窟の中を進んでいく。
「本当に、こんなところにキメライヤがいるの?」
「薄暗いところに、生息地になる。」
「ですから、ここの洞窟に来たのですが…。」
4人は、あたりを見廻すが真っ暗だ。
「お嬢様、ライトをもう少し照らしてくださいませんか?」
「これでも頑張って照らしているのよ。」
だいぶ奥に進んでいくと、大きな広場に出た。
すると、黒瀬は皆に止まるように手を出した。
「どうしたのよ?」
「静かにしてください。何かきます!」
そう、黒瀬が言うと、
――――ガオーーーーー!!
キメライヤが現われた。
「まじか!?」
「これが、キメライヤか?」
「やばいっ!」
キメライヤが尻尾で攻撃をしてきた。
間一髪のところでかわした。
「セラティナ様は下がって、攻撃を探って下さい。」
「分かった。そっちは任せた!」
セラティナは、高いところを探して弱点を見つけに行った。
「これ、どうするのよ!?」
「キメライヤに弱点なんてありましたっけ?」
「それをこれから探ることです。だから、上からセラティナ様に見てもらって確認をして頂こうと思い、セラティナ様に高いところからの攻撃をしてもらうように指示を出したのです。」
「黒瀬、いつもはよく調べてきているのに、今日は調べてないの?」
「調べようと思ったのですが…。あまり出現しないのか。資料が少ないのです…。」
「なるほど。それで、探っていると?それじゃあ、いつか私たちが倒れちゃうわよ!」
「だから、早く倒せるように、探っているのでしょう?口ではなく、手をお動かし下さいませ。アホーお嬢様。」
「誰がよ!」
「ほら、危ない!」
ピーロンがそう言うと、キメライヤが火を噴いてきた。
3人は、かわしていく。
「これ、キリがないわよ?」
「それは、誰しもが分かっていますよ?」
「まったく、黒瀬は一言多いのよ!」
―――アクア・シールド!!
紅葉は、攻撃を仕掛けた。
「お嬢様、ナイスです!」
黒瀬、ピーロン、セラティナ、3人は一斉に攻撃を仕掛けたが、はじき返された。
「なっ!」
「うそでしょう?」
そのはじき返された攻撃があちこちに降り注いだ。
「うわー!!」
4人は、岩などに身を隠したり、かわしたりしていた。
「もう!こんなのどうするのよ!?」
「ふん!!」
「聖様?」
黒瀬は、止まず攻撃をしていた。
黒瀬のレベルよりもキメライヤの方が、上だったが、黒瀬は互角に戦っていた。
その様子を、紅葉、ピーロン、セラティナは見ていた。
「黒瀬…。前よりも、強くなっていないか?」
「そうですね。あの時よりは、強くなっていると思いますよ。」
「私たちも、負けてられないな。」
「黒瀬ばかり、任せてられないからな!」
また、3人は攻撃を仕掛けた。
(てか、あいつ思ったけど…。炎を出したって事は…。水が効くんじゃあ…?)
「黒瀬ーー。あいつの弱点はおそらく、水だ!」
と、セラティナが言った。
「それは、わたしくもとっくの前に思っているのですが…。尻尾からは、電気技が出てきているのです。」
「私が、さっきシールドを出したけど、尻尾でかわされてしまった。」
「じゃあ、水ではないのか…。」
「でも、少しずつ分かっているので、もう少しですね…。」
「それでも、早くしないと皆が死んじゃうよ!」
「それは、ないですね。わたくしが、皆様をお守りいたしますから。」
黒瀬は、キメライヤに突っ込んでいった。
「黒瀬!」
紅葉がそう叫ぶと、黒瀬がやってきた。
「お嬢様、失礼します!」
そう言うと、ひょいっとお姫様抱っこをした。
「黒瀬、何を?」
と言った瞬間に、キメライヤは炎を出した。
それから、続けて尻尾から、雷を出した。
「うわー!!」
「も、紅葉様、黒瀬様!」
「はっ!紅葉!」
セラティナは、キメライヤを攻撃した。
紅葉と黒瀬を、キメライヤから遠ざけるために矢を討ちまくった。
「ガオオオーーー!!」
キメライヤは少し怯んだ。
だが、すぐに攻撃を仕掛ける。
黒瀬がヒラリとかわす。
キメライヤが、放った火だるまが、セラティナへと向かっていく。
「セラティナ!」
「はっ!?」
その時、ラーガがシールドをはった。
「ラーガ!どうして!?」
「次に向かっていたら、キメライヤの叫び声が聞こえたんだ。これから、この洞窟に入っていくと、君達が戦っているのが見えた。だから、助けに来たんだ。」
「ありがとう。ラーガ、助かったよ。」
セラティナは、ラーガに笑顔で微笑んだ。
紅葉はそれを見て、肩をなでおろした。
「やっぱり、ここだったか…。」
「ラーガ?」
「キメライヤのクエストが出ているのをみて、もしかしたらと思い、寄ってみたんだ。」
「なるほどね…(汗)」
2人は、武器を構えた。
「反撃開始だ!」
セラティナとラーガは、キメライヤに突っ込んでいった。
「黒瀬!私達も!」
「かしこまりました、お嬢様。それでは、行ってらっしゃいませ。」
「ちょっと!?」
紅葉は、黒瀬に投げ飛ばされた。
紅葉は、投げ飛ばされながらも、体の向きを変え、キメライヤに攻撃をした。
「シールド・ブリザード!」
紅葉が、地面に叩きつけられる寸前に魔法技を出し、回避した。
「よっと。」
「ラーガ…。ありがとう。」
「どういたしまして。」
「まったく、黒瀬ったら(怒)」
「君の執事?は、君のことが嫌いなのかい?」
「いいえ、あれはただ単に、いじって遊んでるだけよ。」
「そうなのか…。」
うまいこと、ラーガは紅葉をキャッチをして、話し込んでいると、苦しい表情で、セラティナは言った。
「ちょっと、お二人さん?話し込んでないで、手伝ってよ?」
「あっ、悪い。」
紅葉を下ろすと、またキメライヤに攻撃を仕掛けた。
「やっと、分かったんだ。仲間がどれだけ支えになっているのかを。いつの間にか、君たちのことが気になっていて…。でも、また仲間を失うかもしれないと思ったら怖かったんだ。だから…。」
「でも、大丈夫よ。私達は死なない。死ぬわけにはいかないから!」
紅葉は、キメライヤの攻撃をシールドで、受けながらも耐えていた。だが、少しずつ押されていた。
ラーガがこの間に入る。
「私は、聖騎士。皆の盾になる。そして、またあるときは剣になる。それが私の役目だ!」
キメライヤの攻撃を跳ね除け、攻撃をした。
「ブリザード・ストライク!!」
巨大な力でキメライヤは消し飛んだ。
◎キメライヤを倒せ!
→討伐完了!
「やりましたね。ラーガ様。」
黒瀬はそう言いながら、微笑んだ。
「黒瀬と言ったか?君は、私をどうしても仲間に入れたかった…。いや、お嬢様の要望であれば、やりかねない。それが、君だ。そして、執事の役目。それは、私も一緒だ。」
「そうですか?」
「まったく、君は本当に、腹黒だな。」
そうラーガは言うと、ニッコリと黒瀬は微笑み、
「褒め言葉ですね。」
と言った。
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