36 ダンジョン③(10階の魔物)
紅葉達は、メレストロ、ラグールが飲み込まれたことに、パニックになっていた。
そんな中、黒瀬はニコリと笑いながら、言った事に紅葉は、黒瀬の胸ぐらを掴んで、
「なんで、そんなにヘラヘラ笑ってるの!?メレストロさんとラグールさんが、飲み込まれていったんだよ?」
「紅葉、もうその辺に…」
「お嬢様、少々よろしいでしょうか?」
セラティナがそう言うと、黒瀬は冷静に言った。
紅葉は、グッと掴んでいたが、黒瀬のその目を見て放した。
「ラグール様が、最後飲み込まれている時に、こちらに、サインを送っていたのを、お分かりになりましたか?」
「何のこと?」
「あー。私もあれ、気になっていたんだ」
「さすが、ラーガ様です」
「どういうこと?」
「ラグール様は、分からないように出すサインと、分かりやすく、相手になんだろう?と思うような独特なサインを送るようにしていました。そして、旅の時に、わたくしはラグール様に教えてもらっていたのです」
「そういう事だったのね…」
「じゃあ、さっきのサインは?なんか、ナルシストがするような親指と人差し指で、逆Lみたいにしていたが…」
「それはですね…。まぁ、先に進みながら、お話を致しましょう」
◇ ◇ ◇
黒瀬が、かくかくしかじかと説明をしていた。
黒瀬は、前にダンジョンに入る前に、下見として、ダンジョンに来ていた。
そこに、メレストロ、ラグールも一緒に来ていた。
「誰ですか?そこに居るのは、、、。気配を消してもわたくしには無駄ですよ?」
草むらから、メレストロ、ラグールが出てきた。
「いやー。やっぱり、聖はすごいねー」
「メレストロ、彼を甘く見るんじゃないよ」
「やはり、メレストロ様とラグール様でございましたか…」
「“やはり”ということは、どこからか気づいていたね」
「ええ。町に出る時に、懐中時計を見る時に、映っていましたから」
黒瀬は、ニコリと微笑みながら、そう言うと、
「お前のその笑顔が、逆に怖いと思ってしまう時があるんだよ…」
「そうですか?」
「皆に、言われたことないのか?」
「何のことでしょう…?あっ!例えば…。冷たいまなざしで見られていたりはありましたが、わたくしは、気に致しません」
(心が強い持ち主だ…)
「おう…。そうか」
(その笑顔が怖いっての!)
「黒瀬だけには、教えておこうかな…。いずれ、サインも役に立つことがあるからな。いいな。親指と人差し指で、L字みたいにしていたら、“やばいかも”だ。サインを決めておけば、何かに使えるから」
「分かりました。参考にさせていただきます」
黒瀬は、ニコリと笑って言った。
前の話の事をメレストロとラグールは、黒瀬の事は、何も気にしなくなった。
なぜなら、長年魔導士をしていると、相手の強さとかが分かるからである。
でも、黒瀬の事は、驚かされてばかりだった。
2人とも、黒瀬と初めて出会ってから、異様な力を感じていた。
3人は、ダンジョンに入って炒ったが、他には何もなかった。
だが、9、10階からは、気配が違っていた。
魔物の気配なのか?
それとも、、、
3人は、調べてはいたが、それが何だったのかが分からなかった。
◇ ◇ ◇
「あの変な、気持ちが悪い気配はこういう事だったのですね…」
「黒瀬、それより待って…。いつも、下見に行ってるの?1人で?」
「はい。お嬢様を、危険な目には合ってほしくないのです。かと言って、甘い事を言っていては、お嬢様のためにもなりませんからね…」
「なんか…。私を侮辱してない?なめてない?」
「いえ、お嬢様のために、わたくしがしている事なのです。あとは、下見することによって、作戦が立てやすくなりますし…。あとは、、、」
「なぁなぁ…」
黒瀬が、紅葉にいろいろと言ってる時、ロザがラーガにコソコソ言った。
「黒瀬、あー言ってるけど、クエストとかの時は、魔物をぶちのめしてなかったか?」
「確かに…。それは思う。てか、下見と言うよりか…あれは…」
と言ってると、黒瀬がニヤリと笑って、ラーガと、ロザの事を見ていた。
「2人とも…?な・に・か?」
その笑顔には、殺意を感じた。
(この男に怒らすとろくなことがないからなぁ…)
(あまり下手な事は出来ないなぁ…)
「い、いや…。何でもない…」
黒瀬の圧に負けたラーガとロザの顔は青ざめていた。
「んっ?お2人ともどうかしたのですか?」
クロナが、話しかけたが、2人は何も言えなかった。
◇ ◇ ◇
魔物であろう触手に、飲み込まれていったメレストロ、ラグールを探していた。
10階は、妙に広いと思っていた。
「そう言えば!あのサインの意味が分かりました!」
「びっくりしたなぁ…」
「いきなり、大きな声で言われたら、びっくりするんじゃあないですか!?」
「あっ!すみません。あまりにも、嬉しかったものですから。まぁまだ、皆様には内緒でございますが…」
「なんでよ?」
「だって、面白くないではありませんか?皆様で、考えるのも悪くはないかと思いますが…」
「分かったわよ!」
紅葉達は、10階のダンジョンの事を、しらみつぶしに調べていった。
メレストロとラグールが、飲み込まれたところとか、目玉の事、触手のようなものも調べた。
よく床や壁を見ると、血管のようになっていた。
「黒瀬!まさか…このダンジョンは…」
「やっと分かりましたか…」
黒瀬は、クスリと笑った。
そして、、、
「こちらも、分かりましたよ。ここです!!」
黒瀬は、壁に攻撃をして、扉が出てきた。
「えー!?」
「こんなところに隠し扉があったのか?」
「先に進みましょう。2人は、この先にいますよ。これに、、、これまで来ていた冒険者方の気配もあります」
「なんだって!?」
紅葉達は、その先へと急いだ。
◇
◇
◇
だいぶ、奥に進んだだろう…。
祠みたいな所に出た。
「ここは…?」
「皆!あれ!!」
セラティナが、何かを見つけた。
たくさんの触手が、メレストロ、ラグールをとらえていた。
周りを見ると、これまで捕まった冒険者達が捕まっていた。
冒険者達は、元気を失くしていた。
「やっときたか。黒瀬!」
「メレストロ様、ラグール様、遅くなってすみません…。少々、手間取ってしまいまして…」
「サイン、分かってくれたんだね」
「はい。それで、くまなく探しました。そして、謎が解けました」
「それは、この10階のダンジョン自体が魔物だったということです」
「つまり、そこにいる触手は、目玉の手足になっているみたいなもの、本体をやらないと!」
「壁とかをよく見ると、触手と一緒で血管みたいなものがありましたから、それで、目玉はオオカクレオカゲに指示を出し、次々と来る冒険者達を襲っては、体力を吸っていたのです!」
――――バインド・ストライク!!
セラティナ、ラーガ、ロザが、捕まっているメレストロ、ラグールや冒険者達の触手を切っていった。
「ありがとう」
「てか、切ってもらわなくても、こちらでなんとかできていたがなぁ…」
「それだったら、自分でして下さったらよかったのに…」
何やら、言い合いをしてる中、襲い掛かってくる触手を紅葉、黒瀬、クロナがくい止めていた。
「話すのは、後にしてほしいですわね…」
「全く、こっちを手伝ってほしいかな」
「メレストロ様、ラグール様。どうせ、そろそろ暴れたいと思っているのでしょう?」
「よく分かっているねー。聖は」
「大体の事は、分かりましたので」
(あの短期間で、俺達の性格とかを読み取ったか…。さすが、執事だな…。観察力が、半端ない)
「メレストロ…。分かっているな?あれを使うときは、外で使えよ?」
「分かってるって!久しぶりにうずいているよ…。この手が!」
「あまり、派手にするなよ?」
「ラグール様?」
「あ…。まぁ、黒瀬には分かるだろう?」
黒瀬は、襲い掛かってくる触手をヒラリ、ヒラリと舞うようにかわしながら、ラグールの話を聞いていた。
「はい。ちゃんと聞いていましたよ?メレストロ様が使う、あれからお守りすればよいのでしょう?」
「ああ…。頼む」
「さて、仕事するかな…」
「では、わたくしとお嬢様、クロナ様、メレストロ様は本体を、そちらは、お任せ致します!」
黒瀬は、そう言って本体がいる屋上へと急いだ。
「では、さっさと片付けるぞ!」
残ったセラティナ、ラーガ、ロザ、ラグールは、触手を行かさないようにくい止める。
「本体と触手は、一緒に動いていたんだよ。だから、本体と触手を、同時に倒さないといけない!」
「それは、紅葉達は分かっているのか?」
「特に、紅葉がちょっと心配だけど…」
「黒瀬がいるから大丈夫だろう…」
「そうだな」
「よし!一瞬で倒すぞ!!」
セラティナ達は、触手に向かっていった。
◇
◇
◇
一方の黒瀬達は――――。
屋上へと向かっていた。
「早く、あの目玉を倒さないと!!」
「私に任せなさい!」
「メレストロ様の凄さは分かりますが、あれはお止めくださいね?」
「えっ?何の事かしら?」
「ラグール様に、止められましたので…」
「あいつにか。まぁ、大丈夫さ!なんとかなる」
屋上へと着いた。
目玉は、大きな木と憑依していた。
「あれは、、、!」
「木樹に憑依している。だから、あの触手は、木の根っこだ!」
「だから、ダンジョンに来る冒険者の体力を奪って、自分のエネルギーとして、使っていたのだろう…」
「ってことは…。これを倒したらダンジョンは攻略したことになってことね!」
「ですが、問題が…」
「何?問題って…?」
「あの触手と、本体を同時に攻撃、倒さなければ解決になりません」
「そんな無茶な!?」
「なんとか、同時に攻撃をして、倒せるようにしないと」
目玉の魔物は、迷いなく、紅葉達を攻撃してきた。
「とりあえず、攻撃力を上げる呪文を!」
――――アーゲル・フィールド!!
「あの目玉の魔物。結構素早いですね」
「そんな呑気な事を言ってー」
紅葉が焦っていた。
「こうなったら、お嬢様を餌にして、素早さを下げることにしましょう」
「それは名案!」
「名案じゃない!!」
「何ですか?それ、楽しそう!!」
「楽しくないよ!!なんで、私が餌にされているのよー!!」
紅葉が嘆いていると、目玉の魔物は、紅葉に向かってきた。
「いやーー!!なんでよー!?なんで、私についてくるのよー」
「てか、早く黒瀬、何とかしなさいよ!?気持ち悪い魔物、嫌よー」
「お嬢様、ナイスランでございます」
「感心している場合?早くー」
「しょうがないですねー」
――――シャドウ!!
ブラックウルフ!
喰らい付きなさい!!
ブラックウルフは、目玉の魔物に噛み付いた。
身動きが取れなくなった目玉の魔物がもがいていると、それを見て待ってました!とばかりに、メレストロが呪文を唱えていた。
――――我に宿せ!
火神・アグネリア!
大爆裂魔法・アグニニュート!!
「あれは、やばいですね…(汗)」
さすがの黒瀬も焦っていた。
「お嬢様、逃げましょう!」
「あれって…」
黒瀬は、紅葉をお姫様抱っこをして、一目さんに逃げて行った。
「あっ!!ずるーい!!黒瀬様ばっかりー」
クロナも慌てて、黒瀬の後を追って行った。
――――ドドドー!!
下の階にいたセラティナ達もその地響きも、大きな揺れに驚いていた。
セラティナ達も、逃げている黒瀬達を見て、ラグールが言った。
「この揺れ…。まさか!あの攻撃魔法を使ったのか!?だから、あれほど、使うな!と言っておいたのに…。しょうがない。皆、ここは逃げるぞ!!」
「えっ!?」
セラティナ達はよく分からないまま、ダンジョンから逃げ出した。
読んでいただきありがとうございます。
評価☆→★に、よかったらブックマ、感想等お願いします。
また、誤字・脱字がありましたら、お願いします。
結構、走り書きをしていますので、変な所がありましたらすみません(__)
速攻で直します!
まだまだ続きます!!