32 ヴェリスタ国の最古のリスタート図書館
紅葉達は、リスターヌ王女から教えてもらったヴェリスタ国、最古の図書館【リスタート】に向かっていた。
「最古って凄いわよね?」
「これで、レギランスの奴らが、持って行った魔導書の事も分かるかもしれない…」
「で、リスタートっていう図書館は、どこにあるんだろうか?」
「リスターヌ王女様より、教えていただいたのは、国一大きな建物だと聞きましたが…?」
「あそこか?」
ラーガが指さした方向を見ると、黒色のレンガの建物に、大きな時計が付いていた。
「立派な建物だね」
「皆で、探してみましょう?」
クロナの表情が、少し曇っていた。
「クロナ…。大丈夫?」
「えっ?大丈夫ですよ」
「あまり無理しないでいいから…」
「ええ…」
紅葉達は、図書館に入っていった。
中に入ると、たくさんの人達が本を探していたり、読んでいたりしていた。
5階建ての図書館になっており、何兆もありそうな本が本棚にびっしりあった。
「この中から、探すのは骨がいるぞ?」
と、紅葉達が立ち往生していると、図書館の案内人の【リルリア】が話しかけてきた。
「あの…。すみません!突然…。何かお困りの様子だったので、どうされたのかと思いまして…」
「よく分かりましたね」
「旅のお方だなぁ…と思いましたので、あと、この辺では、見ない顔でしたし…」
「調べ物で、『天と地』という本がありませんか?」
「その本でしたら、『禁断の本』という所に置いてあったような…」
リルリアは、紅葉達を案内した。
「リルリアさんは、ここの本が、どこに置いてあるか分かるんですか?」
「そりゃあ、何十年もここの案内人ですから。それに、本が大好きですから、ある程度の本の内容や、物語は分かりますよ?」
「そうなんですか?確かに、いろんな物語があるから、楽しいし。1人でも…寂しくならないから」
「お嬢様…」
黒瀬だけは、紅葉がそう言った事が分かっていた。
黒瀬が紅葉と会った日の事。
ずっと1人きりで部屋にこもり、本ばかり読んでいたことを…。
「ここです」
リルリアが、案内した『禁断の本』という部屋についた。
「あと、リルリア様。聞きたいことがあるのですが…」
「サニーライム村の砦の事ですか?」
「はい。そうなんですが…。魔導書がありましたが、謎の組織にとられてしまいまして…」
「魔導書の中身の内容は、おそらく…。この世界の事について、書かれているではありませんか?私もあまり詳しい事は分かりませんが…」
「そうですか…。まぁ、ある程度は分かりました。ありがとうございます。リルリア様、その魔導書について分かる方や、図書館とか分かりますか?」
「そうですね…。あまり、昔の事とかは、昔の事をよくわかっている人を、しらみつぶしに聞くしかないかと…。あっ!魔法使いに聞いて見てもいいかと思いますよ?エルフや獣人と同じように、長い生きしてますから」
「そうですか。ありがとうございます。参考にされていただきますね」
黒瀬は、そう言いニコリと微笑んだ。
紅葉達は、リスターヌから題名を聞いた『天と地』の本を探していた。
「ここの、最古の図書館なら、サニーライム村にあった魔導書の秘密とか書いてるんじゃないか?」
「それは、どうだろうねー…」
本棚の奥の方に、『た』行の所に、『天と地』という本があった。
「あっ!あった!!あったわよ?」
紅葉の声にセラティナ達も集まった。
『天と地』の本の内容を、紅葉達は読んだ。
[(前略)ゼウスの命により、神族は魔界の魔族達を滅ぼした。そして、魔王は、4人もの手下を封印した。いつか誰かが封印を解くと、願って…。≪白魔導士、メレストロ》、≪黒魔導士、ラグール》がここに記す。
4人の魔王は、かつての魔王の息子、娘達だ。その4人が封印が解かれると、世界はだんだんと悪に染まっていくだろう…。
白魔導士は、天使側についていた。
黒魔導士は、悪魔側についていた。
最後まで、この戦争を見守った者が示す。
いつか、この世界(異世界)が平和になることを信じて…。]
「な、なんだこれ…」
「この事が本当だったら、早めに、その魔王を封印しても、この世界がまた、壊滅状態になってはいけないだろう?今、この事態をとめなければ皆、魔王によって殺されてしまう!!この世界が終わってしまう…」
「魔王を倒すとなっても、どうしろと言うんだ?」
「まだまだ、情報が欲しい…」
「リルリアさん!魔王の封印とか、書かれている本とかないんですか?」
「そうですねー…。この『禁断の本』の本棚には、ある程度の事は、まとめていますからね」
「ここにあるのなら、調べておきたいですねー」
黒瀬は、本を取り読んでいた。
(この世界の事が書かれている本があれば、現実世界に、帰れるヒントになるかもしれませんから…)
「私も聖さんの手伝いをしますよ?こんなに、たくさんも本を読むのに、時間がかかるでしょう?」
「大丈夫ですよ。心配には、及びません。わたくし、本を読むのには、結構慣れておりますので、物語系では1冊に付き、30分あれば読めれますし。百科系では、パラパラとしていれば見れますので…、15分あれば読めれますので…」
「それは、読んでいると言えるのか?」
「ちゃんと、頭にも入っていますから」
「ほんとに凄いな…(汗)聖は…」
誰もが、黒瀬の事を尊敬するなぁと思った。
それから、紅葉達はもう少し、情報が欲しかった。
魔王をどうやって倒せるか、良い方法を探した。
「どの本にも、詳しい事は書いていないぞ?」
「いや…。どこかにあるはずなんだ…」
「リルリアさん、何か聞いたことがありませんか?」
リルリアは、紅葉にそう言われ、少し悩んでいた。
リルリアは、記憶を辿っていたが、思い当たるものがなかった。
「そうですね…。記憶を辿ってみましたが、思い当たる本はありませんね…」
「待って!リルリアさん?まさか、ここの本、全部内容が分かっているの?」
「ええ…。分かっていますよ?どこに、どういう本があるかとか、ちゃんと頭の中に入っていますから」
「すげー…」
「そんなこと、私達じゃあ無理な話よ?」
(それは、先程…。わたくしが言った事と全く一緒の事を言っていますよ…(汗))
紅葉達は、何かヒントになりそうな本を探していた。
魔導書など、たくさんの本を見ていたが、魔王については何も書かれていなかった。
「すみません…。何も役に立てなくて…」
「いえ、大丈夫ですよ。また、次の国に行って、魔王を倒すヒントになりそうな情報を集めますので…」
「リルリアさん、いろいろ教えてくださり、ありがとうございました」
「また、ゆっくり来てくださいね。私からも、いろいろ調べておきますね」
「はい。ありがとうございます」
紅葉達は、魔王の事やこの異世界の事を、少しは知る事ができたと思った。
レギランスの者達が持って行った魔導書には、何が書かれていたのか、気になった。
黒瀬は、レギランスが持ち去ったあの魔導書に、この世界について、魔王について、書かれていたのだろうと、そう思った。
「全く…。面倒な事になりましたね…」
「んっ?」
思わず黒瀬は、口に出していた。
「すみません…。お嬢様。何もありませんよ?」
「そう?なら、いんだけどね…」
「で、これからどうするんだ?」
「次の国に、行くしかないでしょう?」
「ちょっとは、ここの図書館みたいに、情報があればいんだけどなぁ…」
「でも、ここの図書館は当たりだったな」
紅葉は、次の国でもヴェリスタ国の図書館みたいな古い所や、昔からいる魔法使い等に聞こうと思った。
次の国に行くために、紅葉達はヴェリスタ国を後にした。
「一番手っ取り早いのは、白魔導士の【メレストロ】さん、黒魔導士の【ラグール】さんの話を聞くのが一番なんですがね…」
「そうですね…。そんなに早く、出会えるわけ…」
と話していると、顔を不意にひょいと出してきた女性が、
「んっ?呼んだ?」
「えっ?」
紅葉が慌てて、その女性から離れた。
よく見ると、白のローブを着ていた。
もう1人、黒のローブを着ていた男性もいた。
それを見て、黒瀬は悟った。
「もしかして…。『天と地』の本を書いた、白魔導士の【メレストロ】様、黒魔導士の【ラグール】様でございますね。会える日を楽しみにしておりましたよ」
黒瀬は、ニコリと微笑んだ。
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