31 天使と悪魔の争い
紅葉達は、【ヴェリタス】国の宮殿へと向かっている途中のその間、クロナの話になった。
「クロナのあの力は、なんだったの?」
「…。あの力は、両親から付け継いだ者でして…」
「両親?」
「はい…。わたくしの両親は、父が魔族で、母が天使でした…。魔族である父の力をわたくしが受け継いで、天使である力を、妹が受け継いだのです。両親は、神族と魔族の戦争で亡くなりました。妹は、わたくしを助けようと、その力を使って…」
「そうだったの…」
「もう少し、詳しい話をしますわ」
クロナはもっと詳しい事を紅葉達に話をした。
◇
◇
◇
クロナが産まれる随分前の事。
天使と悪魔の戦争が始まろうとしていた頃。
クロナの両親が、密かに会っていた。
「シルーラ、こっちだ」
クロナの父、【グラジオ】は、木の影に隠れていた。
「グラジオ…。私のお父様、お母様を説得しないと、この先も平和は訪れない」
「これは、俺も思っている。戦争を起こさないためにも…」
「話し合いをして、天使と悪魔も、分かり会えることを…」
「ここにいたのか、グラジオ!」
「その悪魔から離れなさい。シルーラ!」
グラジオとシルーラが周りを見ると、天使と悪魔が睨み合うように、2人を囲んでいた。
「どうして、神族がここにいるんだ?天使が、立入るところではないぞ!?」
「待ってくれ!俺が呼んだんだ。話し合うために、呼んだんだ。だから、シルーラは違う!」
「ちゃんと、話し合えば、戦争なんてしなくてもいいんです!犠牲を出さなくてもいいんですよ?」
「うるさい!堕天使風情が!!」
「魔族は、口が悪いから、話にもならないんだよ!」
「だからって、戦争を起こすのは、おかしいと思うんです!!ちゃんと、お互いの話を聞いたりして、話し合わなくちゃ!」
「生意気な!」
グラジオの父親が、シルーラ目掛けで攻撃をした。
シルーラは、目を紡いだ。
「うっ…ぐっ!!」
シルーラが目を開けると、グラジオが、シルーラを守っていた。
グラジオの背中には、軽い火傷のようになっていた。
「グラジオ!?」
「グラジオ…。お前…」
「こ…これで、分かったでしょう?」
「俺はなんて言われようと、シルーラと結婚する!神族と、魔族は関係なく!」
「だが!」
グラジオの父親が言おうとしたとき、シルーラの父親が口を開いた。
「ロフトロス…。今の息子の行動を見ていなかったのか?娘を守ってくれた。何ともなかったら、娘を守らないだろう…。これを見ても、何も思わないのか?」
「だが…」
グラジオの父親は、グラジオの目をジッと見ていた。
そして、何かを感じ取ったのか、グラジオに父親は言った。
「わ、分かった…。分かったよ。グラジオよ、その娘をちゃんと守るのだぞ?」
「親父…。いいのか?」
「あぁ…。その子も、グラジオの事を心配して、回復魔法もかけているし、、、。2人の結婚を認めよう…」
その言葉に、グラジオは嬉しくなり、シルーラと喜んだ。
「ありがとうございます」
シルーラは、グラジオの父親にお礼を言った。
周りの天使や、悪魔達も喜んでいた。
◇◇◇
それから、1年が経ち、クロナ、シロナが産まれた。
双子だった。
平和に暮らしていたがある時、魔王の怒りをかった神族が殺された事に、ゼウスが怒り戦争が起こっていた。
西側が神族によって壊滅状態にあった頃、グラジオの父親が、シルーラの父親を通信魔法を使い、話をしていた。
「もう、西側の魔族は壊滅した。徐々にこちらに来ている…。私達が、巻き込まれるのも時間の問題だ。どうする?」
「ゼウス様には、頭が上がらないからなぁ…」
「私もだ…。せっかく、私達の孫も産まれて、これからの時に、こんなことになってしまった…」
「私達は、我が子を守らなければならない…」
「そうだなぁ…」
そして、グラジオ達の所にも争いがやってきた。
「シルーラ!2人を頼んだよ?」
「グラジオ…」
グラジオは、3人を抱きしめると、襲い掛かってくる魔族を倒しに行った。
シルーラは、2人を守りながら、隠れ家に向かっている所だった。
魔族の攻撃がシルーラに当たりその場に倒れた。
2人は、泣きじゃくっていた。
泣きじゃくる2人にシルーラは、力を振り絞り言った。
「ク、クロナ…。絶対…シロナを…守るのよ…。シロ…ナ…。クロナを支えてあげて…。分かったわね?」
シルーラはそう言うと、息を引き取った。
「お母様…。お母様…」
何度も呼んだが、シルーラは2人の名前を呼ぶことはなかった。
クロナは、怒りを覚えた。
魔族達を倒していった。
それは、シルーラが言った事、妹・シロナを守るためだった。
――――――ガルルル。
魔族を倒した時、クロナは正気に戻っていた。
「シロナ、大丈夫?」
クロナが気にかけた時、
「お姉様!!」
――――――グサッ!!
「えっ…?」
まだ、倒しきれてない魔族にシロナは刺された。
シロナは、その場に倒れた。
「シロナ!!」
クロナは、すぐにその魔族にとどめを刺した。
「ごめんね…。お姉様…。くっ…」
「シロナ…。もう喋らなくていいから…」
「1人ぼっちにさせてしまうね…。わたくしの事は大丈夫だから…」
「お姉様…。私はちゃんとお姉様の傍に居ますから。1人ぼっちなんて思わないで…?」
「シロナ…。ダメだ…。行かないで…」
シロナは、クロナに微笑むと光に包まれ、クロナの中に入っていった。
クロナの脳裏に、シロナの言葉が囁いた。
〈ずっと居るよ…。お姉様の傍に…〉
クロナは、母親の亡骸を埋め、その場を後にした。
◇
◇
◇
「という訳でして…」
「いや…。サラっと言ってるけど…。天使の最上級である【ゼウス】と、悪魔の最上級【魔王】との争いに巻き込まれるって、相当よ?」
「クロナ…。大丈夫?」
「だ、大丈夫ですよ。両親や妹が亡くなったときは、絶望しかありませんでしたし…。1人ぼっちになってしまった…。と思っていたあの頃とは、今は違います!皆様といて、本当に毎日が充実しています。本当に楽しいのです」
クロナのその言葉に、紅葉達は微笑んだ。
「クロナ。ずっと、私があなたの傍にいてあげるから…。私達を家族だと思ってもいいから」
紅葉は、ニコリと笑った。
そこに、黒瀬が水を差すように、
「ですが、お嬢様。わたくし達はいつか、現実世界に戻らなければなりませんよ?」
「でも、帰れるとは限らないじゃない!1人になって、凄く寂しいのは私もよく知ってるから…」
紅葉は、幼少期の事を思い出していた。
紅葉の両親は、いつも忙しかった。
夜帰ってくるのが遅かったり、或いは、会社に泊まりそのまま、帰って来ないこともあった。
紅葉を寂しくさせないよう、今の執事、黒瀬を雇ったのだ。
紅葉の両親は、いつも心配していた。
気にもかけていた。
一緒に居れる時は、なるべく一緒に過ごしていた。
会社が、忙しくなる度に、紅葉と話すことも出来なかった。
紅葉が、少しボーッとしていると、黒瀬が話しかける。
「お嬢様?お嬢様?枯葉お嬢様?」
「誰が枯葉よ!紅葉よ!ク・レ・ハ!毎回、毎回、何かある度に、その言い方やめてくれない?」
「聞こえてないと思いまして…。少々、遊んでみたのですよ」
黒瀬は、そう言いニッコリと笑う。
「全く、意地悪なドS執事なこと!」
(まぁ、それがあるから、毎日が飽きなかった…。だから、黒瀬には感謝しなきゃね…)
紅葉は、そう思った。
「さてと…。宮殿に着いたわよ」
「討伐の報告をしなちゃね」
◇◇◇
紅葉達は、宮殿の奥へと進んだ。
ヴェリスタ国の女王、【リスターヌ】の元にやってきた。
「魔物の討伐をありがとうございました。2体ではなく、もう1体いるとは思いませんでしたが…。これで、洞窟も通れるようになりましたしね」
「あの…、リスターヌ様。少々聞いてもよろしいでしょうか?」
「今から、何百年前。天使と悪魔の戦争があったと聞いた事があるのですが、知っていますか?」
「ちょっと、黒瀬。何百年前の事を覚えているわけないでしょう?」
「覚えておるぞ?」
「覚えてたー!?」
「リスターヌ様、どうして覚えているのですか?」
「まぁ、覚えているより、話に聞いたことがあります。私が、子供の頃に、読んだ本に確か書いてありました。『天と地』という題名でして…。最初は、仲良くしていたのに、戦争が起こったと…」
「っ!?」
紅葉達は、その話を聞いた。
正しく、クロナがあった通りの話をしていた。
「クロナ!これって…」
「ええ…。先程、わたくしが言ったことですわ…」
クロナは、青ざめていた。
紅葉は、クロナの顔色を見て言った。
「大丈夫?聞いてて…」
「ええ。大丈夫です」
「無理しないでね?」
紅葉の言葉に、クロナは小さく頷いた。
リスターヌが、クロナを見て言った。
「そこのお方は、魔族の者ですか?」
「はい…」
「もしかして…。この戦争は、本当の事だったのですか?」
「そうです…。それで、わたくしの家族皆、亡くなりました…」
「そうでしたの…。これは、お辛い事を思い出させてしまいましたわね…。ごめんなさい」
「い、いえ…。大丈夫です。気を遣わせてしまってごめんなさい…」
重たい空気が漂っている中、黒瀬はリスターヌに話を聞いた。
「リスターヌ様、その本は、今どこにあるのですか?」
「その本は…。この国、最古の図書館【リスタート】に、保管されていると思いますよ?そこの図書館には、昔の本がたくさん置いてありますから…」
「分かりました。ありがとうございます」
紅葉達は、すぐにその最古の図書館【リスタート】に向かった。
読んでいただき、ありがとうございます。
少しだけ、クロナの過去を書いてみました。
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まだまだ、頑張って書きます!
まだ続きます!




