30 2体の魔獣③
クロナの秘密が少しずつ分かっていきます。
ウェザーウルフに刺され、負傷を負ったクロナを連れ、紅葉達は洞窟の外に出ていた。
クロナの処置を、紅葉は行っていた。
「お嬢様。クロナ様は、不死身ですから、ある程度の処置をしたら、大抵、大丈夫ですよ?」
「でも!それでも、万が一の事があったら?」
「お嬢様…」
「紅葉…」
紅葉は、傷を負っているクロナを見て、涙が溢れていた。
(不死身だとしても…。本当に生き返るの?)
そう思いながら、泣いていた。
◇ ◇ ◇
クロナは、
暗闇の中を落ちているのか、
浮いているのか、
分からないくらいの中、目を覚ました。
「ここは…。真っ暗な所…。でも…真っ暗でも、少し落ち着く…。どうしてだろう…」
また、目を閉じる。
すると、クロナを呼ぶ声が聞こえてきた。
「…さま?ねえ…さま…。」
「誰…。わたくしを呼ぶのは…。この声はもしかして…。いや…。そんなわけない…。あの子のはずは…ないですわ…」
そうクロナは、自分に言い聞かせていた。
だが、次の瞬間、
「姉様!」
はっきりと声が聞こえた。
クロナは、目を開けてみると、目の前には、亡くなったはずの妹、【シロナ】がそこにいた。
「し…シ…ロ…ナ?」
「姉様…」
シロナは、クロナに微笑んでいた。
それを見たクロナは、目に涙を浮かべていた。
「姉様…。私の力を使ってほしいの」
「でも…そんなこと…」
「大丈夫よ?私が姉様の中に入れば、一緒に居れる…。私は、いつも傍にいるよ…。姉様の心の中に…」
「シロナ…」
シロナは、クロナの中に入って行くように、重なっていった。
そして、クロナはシロナの力を得た。
「姉様、皆さんが待っているよ?行ってあげないと…」
「シロナ…」
「ちゃんと見守っているからね…」
クロナは、胸に手を当て目を閉じ、
(見てて…シロナ)
そう思い目を開けると、光が差し込んだ。
クロナに、まぶしいくらいに包まれていた。
クロナは、その光に手を伸ばした。
◇ ◇ ◇
クロナは、ハッと目を覚ました。
それに、紅葉はびっくりしていた。
「本当に…クロナなの?」
「わたくし…。生きてる…」
「不死身の身体をしていると言っても、結構、深くまで刺されていると、無理がありますね…」
「皆様…。あり…がとう…ございます」
クロナの目からは涙が溢れていた。
黒瀬は、クロナをジッと見ていた。
クロナの、ただいもない力の気配を1人、感じていたのだった。
「もう1度、倒しに行きましょう!!」
「そうだな。1度戦えば、ある程度の事は、分かったからね」
「よし!では、皆行こう」
「では、作戦は洞窟に進みながら、立てると致しましょうか」
「そうだな」
紅葉達は、また、再度洞窟の中に、入って行った。
◇
◇
◇
紅葉達は、洞窟を進んでいた。
そして、サラの精霊、ケストを呼び、ウェザーウルフがどこにいるのか、どっちの洞窟にいるのか、を嗅いで調べていた。
ケストは、ワン!と吠え、紅葉達は、吠えた方向へと進んで行く。
先程、戦っていた場所に!紅葉達は来ていた。
「お嬢様お気をつけください!どこかにいますよ!」
紅葉達は、1つにかたまり、辺りを見渡した。
すると、ケストが上を向いてワン!と吠えた。
紅葉達が、上を向いた瞬間、ウェザーウルフが、地面に叩きつけるように、攻撃をしてきた。
紅葉達は、散らばり、紅葉は、黒瀬達の攻撃力を上げる呪文を唱えた。
――――アーゲル・フィールド!!
サラも精霊を呼び起こした。
皆が、攻撃の体制に入るために、散らばっていく。
◇
洞窟に入った時に、立てた作戦はこうだ。
まず、紅葉の魔法で攻撃力を上げ、サラに精霊を出してもらって、攻撃をしつつ、ダメージを与えていく。
ロザは、岩場の上からウェザーウルフの動きを見て、下の者に伝える。
もし、気づかれたらいけないため、守りをサラの精霊で守らせる。
いざとなれば、逃げれるように。
ラーガは、ウェザーウルフを引き付けておく役。
ラーガに攻撃をしている時に、黒瀬とクロナが、同時に攻撃をしていく。
という作戦だ。
「だが、ウェザーウルフは、私達の攻撃をコピーできるんだろう?」
「そうですね…。それ以上にわたくしたちが、スピードをあげたら良いのでは?」
「そんな…簡単な事を平気で言う…」
「ですが、今のクロナ様には可能かと…」
そう言うと、黒瀬はクロナの方を見た。
クロナは、少し表情が曇っているように見えた。
紅葉は、一体、どういうことなんだろう思っていたが、さほど気にはしてなかった。
そして、その戦いがやってきた。
◇
作戦通り、ロザは全体がよく見える岩の上へと行く。
ラーガは、いつでも守りに入れるように武器を構える。
黒瀬は、暗殺者、特有のスキル。
―――サイレント・ウォーム!!
スキルを発動した。
クロナは、少し目を閉じ、妹・シロナに問いかけた。
〈シロナ…。わたくしに力を貸して!〉
そう思った時、クロナとシロナが合わさった。
クロナの目には、右目が赤く、左目が青く光っていた。
それを見た皆は、驚いていた。
「何あれ…」
「目の色が、左右とも違う…」
「やはり、そうでしたか…」
黒瀬は、1人その理由が、なんとなく分かっていた。
(あの時ですね…。違和感を覚えたのは、この事だったのですね)
クロナは、先程戦った動きとは、全く比べ物にならないくらい素早さが、確実に上がっていた。
「な…に?あの動き…。さっきとは、全然違うじゃんか!!」
「凄い…。一体、クロナの中で、何が起こったんだ?」
紅葉達が、唖然としていると、黒瀬がウェザーウルフの攻撃をかわしながら、
「クロナ様の凄さを今、お伝えしたいのですが…。こちらが、精一杯でございますから。一段落、つきましたら、改めてご説明をしたいと思います。まずは、このウェザーウルフを倒すことに、専念致しましょう」
「分かったわ…」
紅葉達は、ウェザーウルフに、攻撃をしていた。
「もう!ちょこまかと―――!!」
――――バインド・フィールド!!
ウェザーウルフは、紅葉が張った魔法に、引っかかった。
「かかった!皆、今よ!」
紅葉達は、一斉に、ウェザーウルフに攻撃を放つ。
―――ガルル!!
砂煙からウェザーウルフが現われた。
「あれでもダメなのか…」
「クソッ!!命中したはずだ!?」
「もう少し、ダメージを与えなければ、倒れないということなのでしょう。それか、弱点がどこかに、あるはずです!」
「それを、探してみるか…。よし!もう1度、私がお取りになる!」
「分かりました。ロザ様は、ラーガ様の援護をお願いします!」
「りょー」
「サラ様は、引き続き、ロザ様の守りをお願いします!これを続けていけば、ウェザーウルフも倒せるはずです!!」
紅葉達は、また再度攻撃を始めた。
――――アサシンズ・ライト!!
――――デッド・ムーン・クラッシュ!!
――――クリスタル・ブリザード!!
ウェザーウルフは、紅葉が放った氷魔法で、氷漬けになった。
その時、黒瀬は気づいた。
(あそこは…!?)
「皆様、ウェザーウルフの弱点が分かりました!羽です!!」
「羽か!了解した!」
紅葉達は、今度こそ皆で一斉に攻撃をした。
ウェザーウルフに命中した。
「やったか?」
ウェザーウルフは、混乱していた。
「混乱している!今、攻撃すれば!」
紅葉達が、攻撃をしようとした時、紅葉の背後に気配を感じた。
「…っ!?」
「お嬢様!!」
黒瀬は、とっさにスキルを発動し、紅葉の元へと向かった。
「お嬢様、すみません!」
黒瀬は、一言そう言うと、紅葉のローブのフードをつかんだ。
後ろに思いっきり引っ張り、黒瀬の元に寄せた。
いつものように、お姫様抱っこをした。
その場を急いで離れた。
「びっくりしたーー!!やられると思ったわ」
「お嬢様、すみません…。フードを引っ張ってしまい…」
「えっ?いやっ、いいのよ?お陰様で、助かったしね…」
(なんか…。リードを引っ張れた犬の気持ちが、あれで、よく分かった気がするわ…)
「2人とも大丈夫かい?」
「はい。大丈夫ですよ?」
「ウェザーウルフが、もう1体現われるとは…」
「でも、弱点一緒です!」
「なんとかなるっしょ!?」
紅葉達はまた、攻撃を仕掛けた。
また、紅葉は念入りに、攻撃力をあげる魔法をかけた。
―――アーゲル・フィールド!!
黒瀬達の攻撃力は、格段に上がった。
「攻撃力がめっちゃ上がった!?」
「どうして、多分、レベルが上がっていったのでしょう。先程、倒したハギスが、恐らくレア物だったのでしょうねー」
黒瀬は、もう1体のウェザーウルフの攻撃をヒラリヒラリとかわしていく。
クロナも黒瀬と同じようにかわしていた。
(強い相手こそ、燃えますわ!!)
クロナのオーラが一気に強くなった。
黒瀬はそれを見て、
(ほう…。これは面白いですねー)
ニヤリと、不気味な笑みを浮かばせていた。
クロナが攻撃を仕掛けると、同時に、黒瀬もクロナに合わせるように、攻撃を仕掛けた。
2人の動きは、また、素早さが上がっていた。
ヒラリと舞うように、ウェザーウルフに攻撃をしていた。
それを、紅葉達はびっくりして見ていた。
「あの2人の動き…。速い…」
「クロナの動きに、黒瀬が合わせているんだ…」
「ちょっと、皆?だからと言って、手を休めちゃあいけないわ!!」
「そうだな。私達も攻撃を!」
紅葉達も、黒瀬とクロナに、負けないくらいに攻撃をしていた。
だんだんと、ウェザーウルフも弱ってきた。
―――バインド・ストライク!!
ラーガは、2体に痺れの攻撃をし、ウェザーウルフは痺れ、動けなくなっていた。
「よしっ!!入った!皆、今だ!!」
紅葉達は、またもう1度、攻撃を放った。
ウェーザーウルフに、見事に命中。
―――ガルルルル!!
―――ドサッ!
2体ともその場に倒れた。
紅葉達は、心の底から喜んだ。
だが、クロナは完治はしたものの、力の使い過ぎでフラフラになっていた。
紅葉は、クロナに話しかけようとした時、クロナが倒れてきて、とっさに抱きかかえた。
「クロナ!?」
慌てている紅葉を黒瀬が見て、
「大丈夫ですよ?お嬢様。ほら、見てください」
そう言うと、紅葉はクロナの顔を見た。
クロナは、スースーと寝息をたてていた。
「寝て…る?」
「まぁ、皆、頑張ったんだし、体力も魔法もすっからかんだから、無理もないよ」
「クロナは、病み上がりだからね…」
「僕の銃も弾切れになるし…。危なかったよ…」
「でも、皆無事でよかった…」
「うん。そうだな」
「さて、皆様」
黒瀬は、ポンと手を鳴らし、
「町に帰りましょうか」
黒瀬がそう言ってニコリと微笑むと、紅葉達も笑って洞窟を出て行った。
クロナは、ピーロンが抱えていた。
「なぜ、私がクロナさんを?」
「わたくしは、お嬢様しか触れてはいけませんので…」
「意味分からないし…」
(多分…、襲われるのが黒瀬には目に見えているのでは…?)
と、セラティナ達は思った。
読んでいただきありがとうございます(_ _)
評価☆→★に。
ブックマーク、感想等ありましたらお願いします。
また、誤字・脱字等あればお願いします。
まだまだ、続きます!