25 死神の存在。そして、新たなる精霊
紅葉達は、西にある【ヴェリタス】という国に向かっている途中、【エジアール】村に訪れた。
そこは、暗い村だった。
ボロボロになった家の近くに、横たわっている村人が、たくさんいた。
そして、亡くなっている村人もいた。
「何…これ…。どうなってるの?」
「何者かに襲われたのでしょうか?」
「わかりませんね…。ただ、もうこの村は…」
「どうして…こんなことに」
紅葉達は、枯れ果てていく村や、村人達を見ていた。
「ここの村は…、紅葉様…枯葉様のように、肌が枯れているのと、一緒で枯れ果てていますね」
「そうなのよねー。最近、ちゃんと睡眠をとってないからかしら。だから、肌が枯れて…。って…誰が!枯葉ように、肌が荒れてるって?いつも、お肌の手入れをしているわよ!しかも、今、枯葉って言ったでしょ?枯葉じゃなくて、色鮮やかの方の紅葉よ!まったく!久しぶりに聞いたわ!それ」
「何それ?」
「あら、久しぶり聞きましたね。そのネタ」
「恐れ入ります。このやりとり、わたくしも、好きなのでございます(笑)これで、紅葉様と遊ぶことができますので」
「私で遊ぶな!!」
「言い直すまで、言うことだったか?」
「さぁ…」
(てか、ネタって…)
黒瀬は、ニッコリと喜ぶように言った。
セラティナとサラは、呆れて首を振っていた。
村の奥に進んでいくと、人影をみた黒瀬が、
「お嬢様…」
黒瀬の声に、紅葉達はふと前を向くと、そこに、犬の仮面をつけた者がいた。
「何あれ…。怖いんだけど…」
「黒瀬、いける?」
「ええ、いつでも行けますよ」
紅葉達は、いつでも戦闘ができるように武器を構えた。
「ちょ、ちょっと!そこのあなた!なんで、亡くなっている方を背負っているのよ!?どこに、運ぼうとしているの?」
紅葉はそう言うと、犬の仮面をかぶった者は、紅葉達を見ると、何も言わずに、山の方へと向かって行った。
「ちょっ…ちょっと!!待ちなさいよ!」
「お嬢様、行ってみましょう…」
黒瀬がそう言うと、犬の仮面をかぶった者に、ついて行った。
犬の仮面をかぶった者は、森を向け、広場に出ると魔法陣を出し、そこに死者をおいた。
魔法陣に吸い込まれるように、亡くなった村人はいなくなった。
それを犬の仮面をかぶった者はずっと見ていた。
「すみません。少し、よろしいですか?」
黒瀬の言葉に、犬の仮面をかぶった者は、紅葉達の方に向いた。
そして、
「すまない…。先程は…。仕事中だったのでな」
その犬の仮面をかぶった者が言った。
声からすると、男性のようだ。
「もしかして…。アヌビス…」
「アヌビスって…あの?」
「何?そのアヌビスって…」
「アヌビスは、エジプトの神話とされています。ミイラ作りの監督官とされ、実際に、ミイラを作ったり、死者を冥界へと導く祝詞をあげたりする際に、アヌビスの仮面を被って作業が行われたそうです。ひいては、医学の神ともされていて、また、死んだ人間の魂を速やかに、冥界へと運ぶために、足がとても速いとされています」
「へぇ~…。聞いたことないけど…?」
「まぁ、頭の中が何もないお嬢様にとっては、この説明をしても分からないでしょう?」
「人をバカにするのも、大概にしなさいよ!?」
と、言い合いをしていると、犬の仮面をかぶった者が、仮面を外した。
「そこの人、よくわかりましたね。私は…死神です。先程は、失礼致しました。私は、アヌビス様に、お仕えしている【ルビウス】と申します」
「これはこれは、ご丁寧に…。わたくしは、こちらのおバカと、おアホーのお嬢様に仕えています。執事の黒瀬と申します」
「ちょっと!!その言い方、腹が立つんだけど?私は、紅葉よ」
「てか、お2人さん?普通に自己紹介してますけど、今、その人《死神》と言いましたよ?」
「ルビウス…さんだっけ?その人が言ったこと、スルーしてない?」
「ちゃんと聞いてますよ?」
「まぁまぁ、細かい事は気になさらず…」
(めっちゃ、気になる所だけど…?)
少し疑問が残るが、それぞれ、自己紹介をし、終わったところで、紅葉はルビウスに話を聞いた。
「ルビウスさん、これは一体、何事なのですか?どうして、こんなことに?」
「それは、魔族の仕業なのです」
「!?」
「魔族?この村に?」
「ええ。ここ最近、時空が歪みつつあります。だから、魔族達が現われやすくなっています。だから、こうして、村を襲ったりしているのです」
「魔族はここに、存在しないのですか?」
「ええ、ここは、魔界側と繋がっていません。だから、私達、死神は異世界を行ったり、来たりしているのですよ」
「そうなのか…」
「今、《時空が歪んでいる》と言っていたが…これは…。もしかして、レギランスが引き起こしているのか?」
「あるいは…。私の妹を殺したあの仮面の奴か…」
「もう少し早く来ていれば、もしかしたら、村を…村人たちを救えたのでは…?」
紅葉は、そう言って悔しがっていた。
「でも、来ていても、村の人達を救えることができたのか…?」
「少なくとも、救えた命はあったはずだよ?」
「こんなにも、死人が多いとは…」
「とりあえず、今生きている人に、救いの手を差しのべるべきだよ!」
「そうだな…」
紅葉達は、急いで村へと戻った。
サラが、1人残っていた。
「サラ?」
「先に行ってて。後でちゃんと追いつくから」
「分かった」
サラは、ルビウスにある願いをした。
「ルビウスさん、あなたと通じていたら、アヌビスと交信ができますか?」
「できないことはないとは思いますが…」
「なら、精霊として、あたしときてほしいのだけど?」
ルビウスは、サラの言葉にびっくりしていた。
「それは…できません。私は、死神です。精霊は精霊でいますので…。それに、私よりも優秀な方を、お連れ致します。一旦、死神の世界(あちら側)に戻りますので、後ほど」
そう言うと、ルビウスは消えて行った。
サラは、急いで紅葉達の元へと走った。
◇◇◇
――――――紅葉達は、【エジアール】村に戻っていた。
まだ、意識ある人には、回復薬や回復呪文をかけて、村人達を元気にしていった。
「ありがとう…ございます」
「あまり無理しないで…」
黒瀬は、アイテム袋から、エジアール(ここ)に来るときに、倒した魔物、魔獣の肉や野菜、大きな鍋、器等出した。
「聖さん、準備がいいですね。しかも、アイテム袋にこんなにも入っているとは…」
と、ピーロンが驚いて言っていると、そこを見ていたラーガが、
「本当に、聖は凄いなぁ…。この事は、想定内に入っているのか?なんでもできるんだな…(汗)」
「まさしく、完璧執事!!」
ラーガとロザが感心していると、そこに、サラが走ってきた。
「はぁ…はぁ…」
「サラ!来た来た。ごめん…。あそこにいる男の子と女の子に、回復呪文をかけてほしいのよ」
「わ、分かったわ」
早速、サラは男の子と女の子に回復呪文をかけた。
―――――ヒール!!
男の子と女の子は、ほぼ衰弱していた。
「クソっ!!これじゃあ、力が足りない…」
(助けたいのに…。ち、力が足りないなんて…。この子達を助けたい!!)
サラの助けたい!という気持ちに応えたのか、魔力が上がっているのが分かった。
「何!?この込み上げてくるような力は…」
紅葉達が、ケガや瀕死状態にあった村人達を治していると、とてもない力に反応して周りを見ると、サラの体中に光が差していた。
「サラ?」
(呪文が頭の中に入ってくる…)
――――ケアルガ!!
サラがそう呪文を唱えると、みるみるうちに、男の子と女の子は元気になった。
「嘘っ!!」
「新しい呪文を!?」
紅葉達が、驚いていると、男の子と女の子は目を覚ました。
「んん…」
「うっ…」
「大丈夫?」
「うん…。お姉ちゃんが助けてくれたの?」
「お姉ちゃん、ありがとう」
男の子と女の子は、サラに礼を言うと、ラーガが来て言った。
「もう少し、横になっといた方がいい…」
「うん…」
2人は、また横になり、休んだ。
サラは、その場に倒れそうになった。
「おっと…。大丈夫か?サラ」
「…うん。大丈夫よ。こんなの根性で、なんとかなるから」
そう言って、サラは無理矢理体を起こした。
また、別の村人に回復呪文をかけていた。
ラーガは、サラをきにかけていた。
「できましたよ。村の皆様!列に並んでください。順番に、取りに来てくださいね」
黒瀬が作ったシチューや雑煮等が、テーブルに並んでいた。
村人達は、順番に列に並ぶ。
わいわい、賑やかにしていると、森の中から魔物が現われた。
黒瀬は、冷静に魔物達を倒していった。
ラーガとロザも、倒しに行った。
数体の魔物が出ていたが、ラーガとロザのおかげで、全部、倒せた。
「お見事です!ラーガ様、ロザ様。ありがとうございます」
「おじょーず~!!」
ピーロンは、2人に拍手をした。
「こんなの余裕だよ!」
「私は、皆を守る盾だからな!当然の事をしたまでだよ」
村人達も皆、2人にお礼を言う者、拍手をする者がいた。
それに、2人は少し照れているように見えた。
紅葉達は、その晩、【エジアール】村に泊まることにした。
◇
◇
◇
――――次の日。
紅葉達は、村を出ようとしていた。
「昨日は、本当に楽しかった」
「そうだな。また、来るとしようかなぁ…」
「やることをやってから、また、のんびり来ることにしよう…」
そう話していると、村人がやってきて、
「冒険者の皆さん。この瀕死状態にあった村を、救っていただきありがとうございました。あなた方は、エジアール村を救ってくださった」
「私達は、【モミジ】というギルドです。覚えておいてください。また、いつかこの村に来ますから!」
「はい。本当にありがとうございました!」
紅葉達は、村人達に見送られながら【エジアール】村を旅立った。
◇ ◇ ◇
【エジアール】村から、少し離れたところにきた所で、どこからともなく、声が聞こえてきた。
〈サラ様…〉
「ん?」
「こ、声?」
紅葉達が、周りをキョロキョロしていると、魔法陣が現われ、ルビウスがいた。
「昨日ぶりでございますね。サラ様」
「そうね。それで、アヌビスの答えは?」
「分かりました。とのことです。で、お約束通り。私より、優秀な精霊を連れてきました」
ルビウスがそう言って、魔法陣を呼ぶと、下から可愛らしい女の子が現われた。
「どうも。こんにちは!あなたですか?私を精霊に入れたいのは…」
「そうよ。あ、あなたの名前は…?」
「はい。私の名前は、【バンシー】と言います。ルビウスから、話を聞いています。いいでしょう。アヌビス様からも、お許しが出ていますしね」
「よかった…。じゃあ、一緒に来てくれるの?」
「はい!」
「では、契約しましょう」
そう言って、契約の儀をしようとしたとき、紅葉が突然、割り込んだ。
「ちょっと、待ったー!!なんで、こんなことになっているのよ!?どういうこと?」
紅葉が1人だけ困惑していると、黒瀬が説明をした。
「サラ様は、ルビウス様に、相談をされていたのですよ。要するに、仲間を増やしたい。という思いから、ルビウス様に言ってみて、『また、改めて』という事で、返事を待っていたのですよ」
「そうだったの?いつの間に、私がいないところで…?」
「ごめんね…。秘密にしてたわけではないのよ?てか、黒瀬はあの時、紅葉達と村に向かってたんじゃあ…」
「ああ…。その事ですか?わたくしの分身を居らせたのです。サラ様に何かあれば、すぐに飛んでいけれるようにと。だから、ばっちり見ていましたよ?」
「分身がいたのか…(汗)」
「では、改めて…契約の儀を…」
サラとバンシーは、契約をした。
「これからもよろしくね。バンシー」
「うん、こちらこそ」
「では、私はまだ仕事が残っていますので、これで失礼します。また、いつか会える日を楽しみにしています」
そう言うと、ルビウスは魔法陣に包まれ消えて行った。
◇
◇
◇
――――――そして紅葉達は、【ヴェリスタ】国に向かうのだった。
読んでいただきありがとうございます。
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また、誤字・脱字あればお願いします。
まだまだ、続きます。
必死になって、頑張って書きます!




