21 魔導書
《ユーネリア…早く逃げなさい!この、ペンダントを持っていきなさい。絶対に、敵に渡したらだめよ?》
《お母さん!》
《さぁ!早く!》
《いや!お母さん…!》
ユーネリアは、夢から覚めた。
目には涙が浮かんでいた。
「あのときの事が…夢に…。くっ…。うっ…。お母さん…」
ユーネリアは、襲われたあの日の事を思い出して、泣いていた。
―――――トントン。
戸をノックする音がした。
「おはよう…。紅葉よ?部屋に入ってもいいかしら?」
「え…ええ。大丈夫ですよ。どうぞ」
ユーネリアは、慌てて、手で涙を拭った。
紅葉と黒瀬が部屋に入ってきた。
「朝からごめんなさい。どうしても、聞きたいことがあって…」
「はい…。いいですよ?」
「この前に、私…。夢を見たの。凄く、不思議な夢…。霧が濃くて、女の子が私に《助けて…》と、問いかけてくるの。その…声に、少しあなたと、似てる感じがするの」
「…っ!」
「教えて?あのとき、私に助けを求めてきたのって、ユーネリア…。あなたなの?」
ユーネリアは、俯いていた。
少しして、ユーネリアは、言った。
「はい…。多分、意識がもうろうとしている中で、問いかけてしまったのでしょう…。ごめんなさい…」
「謝らなくていいのよ?おかげさまで、ユーネリアを助けることができたし。出会うこともなかった」
紅葉は、ユーネリアの手を取り、そう言った。
ユーネリアは、その言葉に涙を浮かべた。
◇ ◇ ◇
紅葉は、ユーネリアと一緒に食堂へと向かった。
ユーネリアは、ペンダントの事を紅葉達に伝えた。
「このペンダントは、私がいた【サニーライム】の紋章、蝶々と表しています。これは、お母さんの形見です。逃げる時に、お母さんから、『このペンダントを守りなさい』と言われました」
「これに、何かあるのだろうか…?」
「ただのペンダントだと思うんだけどなぁ…」
「綺麗ね…」
紅葉達は、そのペンダントを順番に見ていた。
「お母さんは、このペンダントについては、何も教えてくれなかったんです。だから、私にもさっぱり…」
「昨日、サラッと受け流したけど、『変な人達』って言ってたよね?それって…」
「レギランスの奴らかもしれない…」
「仮面はかぶってなかっただろう?」
「か、仮面…ですか?」
ユーネリアは、少し考えて言った。
「…はい。多分…仮面はかぶってなかったかと思います」
「やっぱり、奴らだな…」
「絶対、許さない!」
「ユーネリアの村に行ってみようよ?そこに行ったら、何か、このペンダントについて、分かるかもしれないし…」
「でしたら、いろいろ用意する必要がありますね」
黒瀬は、ニコッと笑って、買い物に行った。
紅葉達は、明日、ユーネリアの村に、行くことになった。
◇
◇
◇
――――――――――――次の朝。
「お嬢様、早く起きてください。今日は、早起きをして、ユーネリア様の村に行くと言ってませんでしたか?」
「んっ?あっ!?そうだった!今何時?」
「昨日の今頃です」
「ちょっと!ちゃんと言いなさいよ!」
「今は、8時でございますよ?」
「もうちょっとしたら、出ないといけないじゃない!もうちょっと早く起こしてよ!」
「起こしましたよ?クロナ様が…。ですが、お嬢様、寝ぼけてクロナ様をぶっ飛ばしていましたよね?」
黒瀬はそう言い、部屋のドアを開けた。
そこには、壁に食い込んだクロナが気絶していた。
その表情はどこか幸せそうだった。
「あっ…。私…やっちゃった…?」
「さようでございますね(笑)ですが、わたくし、少々嬉しく思っています」
黒瀬は、ニッコリと笑った。
紅葉は、着替えを済まして、食堂へと急いだ。
食堂には、セラティナ達がいた。
「紅葉、いつも大事な時に、若干寝坊するか、ちょっと早く起きるかのどっちかよね?」
「だって、前の日になかなか寝れなくて、結果、寝るのが遅くなっちゃうのよねー(汗)」
そう言って黒瀬が持ってきた朝食を急いで食べる。
「お嬢様、そんなに急いで食べていたら、喉に詰まらせてしまいますよ?」
「ん?大丈夫よ!早く食べて、早くユーネリアの村に行かないとね」
紅葉は、急いで食べると、支度もすぐ済ませ、ユーネリアの住んでいた村【サニーライム】に向かった。
◇
◇
◇
――――――――【サニーライム村】に着いた。
村に着くと、辺り一面、焼け野原になっていた。
家も真っ黒に焼け、ボロボロになっていた。
「む、村が…」
その変わり果てた村を見て、ユーネリアは、その場に崩れるように座り込んだ。
「これは…ひどいなぁ」
紅葉は、その光景を見て、怒りが込みあがってきた。
「皆!かすかに、奴らの気配を感じる…。気を付けた方がいい…」
そうサラが言った。
紅葉達は、辺りを警戒した。
「結構な日数が経っているのにも関わらず、まだ、奴らがいるというのか…」
「ここは、ユーネリアを守りつつ、辺りを警戒しなくては…」
「ユーネリア、大丈夫?この光景を見て、大丈夫なわけないと思うけど…」
ユーネリアは、首を横に振った。
「いえ、大丈夫です!ここに来たのは、このペンダントについて知りたくて来たのですから…」
「無理しなくていいのよ?」
「はい。ありがとうございます」
辺りを警戒しながら、手掛かりを探していたロザが、砦を見つけた。
「皆!ここはいったい…」
その声に、紅葉達は砦を見に行った。
「私…、こんなところに、立派な砦があること自体、知らなかった…」
「きっと、ごく一部の人達にか知らなかったんじゃあ…?」
「それも、あるかもしれませんね…。実際に、村から少し離れていますし、しかも目につかないところに…。魔法で隠していたのですね」
「ちょっと、中に入ってみるか」
紅葉達は、砦の中へと入っていった。
それを見ていた者がいた。
「ここか…」
紅葉達の後を追って、砦の中へと入った。
◇ ◇ ◇
真っ暗な中、紅葉は、魔法で明かりをつけた。
「どこまで繋がっていると思う?」
「とりあえず、一番奥まで行ってみよう」
紅葉の明かりを頼りに、奥へと進む。
広い場所の中央に魔導書が浮かんでいた。
「あれって…。魔導書…?どうしてあんなところに?」
「よく見たら、ユーネリアが持っているペンダントと一緒の形をした蝶々の模様がある…」
「あれに、入れるのか…?」
「だが、奴らの気配がかすかにある…。どこかにいるに違いない!」
紅葉達が、魔導書の所へと行こうとしていた時、攻撃を受けた。
―――――鋼の盾!!
ラーガが、攻撃をしのいだ。
「ラーガ!大丈夫か?」
「ああ…。大丈夫だ」
「今の攻撃は、身に覚えがある!」
「奴らか…」
入り口から、笑い声がだんだんと近寄ってくる。
「あははは…。僕の事、呼んだー?呼んだよねー?」
不気味な笑みをしながら、パラディスがルトと来ていた。
「やっぱり、お前らか!?」
「だって、チミ達の事待ってたよー?まぁ、僕的には、そこにいる執事に、用があるんだけどねー」
「恐れ入ります。ありがたいですねー。また、こうしてお会いできるなんて、光栄に思います(笑)実は、わたくしもあなた様に用事がございます」
黒瀬は、ニコニコ笑っていたが、真顔になり、
「あなたを倒します!」
黒瀬は、そう言うとパラディスに向かって行った。
「ちょっと!黒瀬!!」
紅葉の問いかけにも動じない黒瀬は、パラディスに攻撃をしていた。
「紅葉、私達もいくぞ!!」
「もう!分かったわ。」
そう言って、紅葉は、攻撃力を上げる魔法をかけた。
―――――アーゲル・フィールド!!
「ラーガは、私と一緒に、ユーネリアを守って!」
「サラ!ロザを援護しながら、魔導書の元へ!絶対に、奴らに渡したらダメだ!」
「分かった!」
サラとロザは、魔導書の元へと急ぐが、そこに、ルトが道を塞ぐ。
「…っ!」
「そこを通して!」
「通すわけにはいかない!」
「サラ、ロザ!」
(挟まれた!?これじゃあ、魔導書までたどり着かない…)
魔導書まで行く細い道が、全部塞がれてしまった。
落ちるギリギリの所で紅葉達は、戦っていた。
それを見ていたユーネリアは、隙を見て魔導書の元へと走った。
「ユーネリア!」
「…!?」
「あいつ!あの村にいた奴か!」
走り出したユーネリアを見て、パラディスは攻撃を仕掛けた。
「どこに行こうというのです?あなた様は、わたくしがお相手をしているのですよ?寂しいでしょ?」
黒瀬はニヤリと笑い、パラディスを行かせないようにしていた。
「ほっんと腹立つ執事!いいよー?僕が、お前を殺してやるよ!」
「それは、嬉しゅうございますね(笑)わたくしも全力で殺しますよ。こないだ、殺し損ねましたからねー。次こそは、逃がしませんよー?」
黒瀬とパラディスの戦闘が激しさを増していた時、サラとロザは、ルトを相手に苦戦していた。
「クソっ!?すばしっこい!」
「炎の精霊よ!我に力を!!サラマンダー!」
サラの呼びかけに、サラマンダーが出てきた。
サラとロザは、その背中に乗り、ルトを攻撃していた。
やっとの思いで、ユーネリアは中央にあった魔導書の元へと来ていた。
「これが、秘密を解く鍵なのね…」
魔導書をとろうとしたとき、ユーネリアの前に、謎の女性が現われた。
「この子ねー。鍵となる子は…」
「っ!」
「あっ!やっと来たー。キャネル」
「もう1人いたのか!?」
「そいつを連れて行こうよ」
「しょうがないねー。一緒に来てもらうわよ?」
「い…いや…」
ユーネリアは、恐怖でその場から動けなかった。
「ユーネリア!」
紅葉は、攻撃をしたが弾かれた。
「危ないでしょ!?」
キャネルは、紅葉に攻撃をした。
その突風で紅葉は、谷底に落ちそうになっていた。
「…っ!うわー!」
「っ!紅葉!!」
「お嬢様!」
黒瀬は、すぐに紅葉の元へと行こうとしていたが、パラディスに邪魔された。
「待ってよー?まだ、決着はついてないよ?」
パラディスは、ニヤリと笑った。
紅葉は、必死に道の端をつかんでいた。
「ゆ、ユーネリア!」
「や、やめて…」
「やめろ!」
「ユーネリア!」
誰もが、ユーネリアの元に行こうとするが、敵に塞がれていた。
ユーネリアは、キャネルに催眠術をかけられ、連れ去られた。
「ふん!パラディス、目的を果たした。ここは、引くぞ」
「ちっ…。またかよ…。まぁ、いつでも、お前を殺しにきてやるよ!またな、執事」
3人は、消えて行った。
「くそっ!!」
「ユーネリア…」
紅葉達は、途方に暮れていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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まだまだ、続きます。
頑張って書きます!




