20 謎の少女
―――ある日の朝。
紅葉は、夢を見ていた。
◇◇◇
≪何ここ…。なんで、辺りが濃い霧で包まれている…。これは、夢なの?》
辺り一面、濃い霧の中に、紅葉は1人いた。
≪誰か…。誰か…、助けて…≫
誰かが紅葉を呼んでいる。
女の子の声がした。
≪あなたは、誰なの?≫
≪誰か、私を助けて…≫
紅葉は、辺りを見渡したが、濃い霧が邪魔をして見れなかった。
紅葉は、もがいていた。
すると、人影が見えた。
≪あなたが、私を呼んだの?≫
近づくにつれ、その人影は遠ざかっていった。
≪待って!!≫
紅葉は、手を伸ばしたが、届くことはなかった。
「…様。…お嬢様…」
≪黒瀬の…声?≫
「お嬢様!」
紅葉は、ハッと目を覚ました。
目を覚ますと、黒瀬が心配していた。
「お嬢様!大丈夫でございますか?うなされていましたよ?」
「わたくしも、びっくりして…」
黒瀬の横に、クロナがいた。
「クロナもいたのね…。はぁ…」
(何だったんだろう…。今の夢は…)
紅葉は、頭を抱えて、さっき見ていた夢の事を考えていた。
その様子に、黒瀬が聞く。
「お嬢様、どんな夢を見ていたのですか?」
「それ、わたくしも聞きたいですわ」
「その前に、黒瀬は分かるけど、なんで、クロナまでいるのよ…」
「クスッ。お嬢様、今に始まったことではないでしょう?」
「まぁ、そうなんだけど…。毎回毎回、ほんとっ、懲りないわねー。今日は、一体何を取ろうとしていたの?」
「と、とろうとはしていませんよ?嗅ごうとしていたのです」
「全く…」
「履きたてのパジャマ、履きたての靴下等々、、、嗅ぎたくて、嗅ぎたくて…仕方ないのです!昨晩は、紅葉様の人形を作って遊んでましたのー。オホホ…。ギャン!」
クロナは、黒瀬に回し蹴りをうけた。
部屋の外へと蹴り飛ばした。
黒瀬は、ドアを閉め、手をパンパンと祓って、さっきの紅葉の夢の続きを聞いた。
「これで、邪魔者は消えましたね。落ち着いて、聞けれます。お嬢様、先程の夢の話の続きを、よろしければ聞きたいのですが…」
「ええ、いいわよ」
紅葉は、さっきの夢の事を黒瀬に話した。
黒瀬は、少し考え込んでいた。
数分後、黒瀬は、口を開いた。
「多分、近々、何か起ころうとしているのでは…。お嬢様が、あんなにうなされて、変な夢を見た時は、大抵、面倒な事が起きますので…」
「若干、なんか…。私の事をバカにしてない?まぁ、確かに…。変な夢を見た後は、正夢と言ってもいいくらい、当たるからねー(汗)」
「少し構えておいた方がよろしいですね…」
「そうね…。」
「今、話した夢の内容を、皆様にも話されては…?」
「そうね…。ちょっと話してみましょうか…」
紅葉と黒瀬は、食堂へと向かった。
クロナは、黒瀬に引きずられながら食堂に行った。
食堂に行くと、セラティナ達が朝食を食べていた。
「今日は、えらい遅かったじゃないのよ」
「どうしたの?紅葉、顔色が真っ青よ?」
「うん…。皆に聞いてほしい事があるのよ」
紅葉は、黒瀬に言った夢の内容をセラティナ達に話した。
「それは、なんか…変な夢だな…」
「しかも、その変な夢を紅葉が見たら、ある程度、当たるって…」
「それも、怖いけどなぁ…」
「とりあえず、少し気を付けといた方がいいって事だな…」
「分かった。気を付けることにしよう」
セラティナ達は、そう言うとそれぞれの部屋に戻っていった。
「何が起ころうとしているんだろう…」
「大丈夫でございますよ?この黒瀬が、お嬢様の傍にいます。ちゃんと、お守り致しますから、ご安心を」
そう言って、黒瀬はニコリと微笑んだ。
それを見て紅葉は、はぁーとため息をついた。
◇
◇
◇
紅葉達は、昼時に、クエストに出掛けようとしていた。
「よし!準備ができたわ」
「では、行こうか」
ドアを開けようとすると、巫女の格好をした少女が倒れてきた。
それを紅葉が受けとめた。
「この子…。すごい傷!早く部屋に連れて行きましょう!クエストは、中止よ!」
その少女を部屋に連れて行った。
少女は、切り傷やかすり傷など、体は傷だらけになっていた。
紅葉やサラの魔法でなんとか少女は、一命を取り留めた。
「お嬢様、サラ様、お疲れさまでした」
黒瀬は、紅葉とサラに、紅茶を渡した。
「この子、どうしてあんなところに…」
「しかも、泥だらけの傷だらけって。魔物に襲われたのかしら…?」
少女をセラティナ達は見ていた。
「皆、今日はごめんね…。クエストを中止にして」
「で、こればっかりは仕方ないじゃん?」
「この子の事が心配なんだもん…」
「クエストに行っても、心配なんだから…。クエスト所ではないよ。私達は大丈夫だから。紅葉は、その子の傍に居てあげればいいから」
そう言って、ラーガは部屋から出て行った。
その他の皆も部屋から出て行き、紅葉と黒瀬だけが部屋にいた。
◇
◇
◇
それから、3日が経った。
「…っ」
「あっ!気が付いた?」
「大丈夫でございますか?」
その少女がようやく目を覚ました。
少女は、紅葉と黒瀬の事を見て言った。
「あ、あの…。ここは?」
「ここは、【モミジ】っていうギルドの家よ。あなた、家の前で倒れていたのよ」
「そうなのですか…。すみません…。すぐに、ここから出ますから…」
少女は、無理矢理、体を起こそうとする。
が、3日間も寝ていたせいで、ベッド上で起きるだけでやっとだった。
「ほら、あまり無理しないでよ?大丈夫よ!治るまでいくらでも居てくれたらいいからさ。黒瀬、何か食べやすいものを作ってきて」
「ですが…。そんなの悪いですよ」
「大丈夫よ。何かお腹に入れた方がいいわ。ねっ?」
「では、お粥でも作ってきましょうか」
そう黒瀬が言って、部屋を出た。
「あなた、名前は?どこから来たの?」
「私の名前は、【ユーネリア】。呪術師をしています。私は、【サニーライム】という小さな村に住んでいましたが、変な人達に村が襲われ、私は逃げてきました。その道中に、変な人達に、命を狙われて…。やっとの思いで、この町に来たのです。ですが、あの大きな町に、入る前に、このお城が目に入り、いつの間か倒れてしまったのでしょう…。気づいたら、ここに…」
「そういう事だったのね…。でも、本当に良かった。ずっと、寝ていたのだもん…。もしかしたら…と思ったら、毎日のように気になってて」
「すみません…。ご心配をおかけしました…」
―――トントン。
と戸を叩く音がした。
「失礼致します。出来ましたよ。お粥をどうぞ」
「ありがとう、黒瀬。そこに、おいといて」
「かしこまりました」
机の上に置く。
また、戸を叩く音がした。
すると、セラティナ達が部屋へと入ってきた。
「大勢ですまない…。どうしても心配になって…」
「その…体調とか大丈夫なの?」
「はい。なんとか大丈夫です。ご心配をお掛けしました」
「いいって事よ。もうちょっと、ゆっくり休んどいた方がいいわ」
「はい…。ありがとうございます」
紅葉達は、いろいろ話していた。
そして、数分後セラティナ達は、部屋を出ていった。
「さてと、皆いなくなったことだし、ゆっくり休んでね。なんか用事とかあれば呼んでね。私でもいいし、黒瀬でもいいからさ」
「分かりました。ありがとうございます」
紅葉は、部屋を出て、食堂へと向かう。
食堂に着くと、もうセラティナ達は夕食を食べていた。
紅葉は、ユーネリアが言った事を皆に言った。
「その変な人達って…。まさか…」
「仮面とか言ってない時点で、【レギランス】達だろう…」
「奴らの目的はなんなんだ?」
「それは追々分かることだろう」
「そうね…」
紅葉は、考え込んでいた。
ユーネリアの事、そして、今朝見たあの夢の事と…。
(なんか…。あの子…夢の中で聞いた声とよく似ている感じする…。気のせいかしら)
そう1人、紅葉は思っていた。
「どうしたの?」
「紅葉、具合でも悪いのか?」
「ん?いえ…、そんなことはありません…。ただ…。」
「ただ?」
少し俯いていた紅葉が、頭をあげて言った。
「私の思い込みかもしれないけど…。あの子の声…今朝夢に出てきた声に似ているのよ!」
「…っ!!」
「なっ!本当なのか!?」
「多分…。わかんないけど…。でも、そんな感じがするのよ」
「紅葉の夢は、正夢に近いんだろう…?そう思うと、なんか…そのように、思ってしまう。だって、聖が言った通り。夢が正夢になるんなら、今がそうなんだろう…」
「そうね…」
「確かに、それは思う。現に今起きているからなぁ…」
「うん…」
「でも、今日は休ましてあげよう…。また、明日話を聞けばいいさ」
そう言って、紅葉達は自分達の部屋へと戻っていった。
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まだまだ、頑張って書きます!
だいぶ、走り書きになっているので、誤字・脱字があればお願いします。
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