11 サラの決意
「いた!」
サラの乗ったサラマンダーは、冒険者の頭上を飛んでいた。
魔導士の者、感知の者は、その大きな力に気づいていた。
「上か!」
その瞬間に、サラマンダーの流星弾が降り注いだ。
よける者、魔法でバリアで防ぐものがいた。
「ここから出て行け!!」
サラは、また、流星弾を放つようサラマンダーに問いかけた。
だが、その問いかけをかき消すように、攻撃を仕掛けてきたものがいた。
「キャッ!」
サラは、態勢を崩しサラマンダーから落ちていった。
冒険者の者たちは、それを見ていた。
魔法の者は、攻撃をしようとしていた。
「ひんし状態にしろよ?絶対に殺すな」
「わかりました」
(クソッ!!シロン…、助けて)
落ちていくサラは、そう思い目を閉じた。
―――――ウィンドー・トルネード!!
サラをギリギリ受け止めた。
「ナイス!紅葉」
「お嬢様、お見事です!」
「エッヘン!どんなもんよ」
サラは、目を開けると、そこには紅葉たちがいた。
そして、ゆっくりと地面に降りた。
「あなたたちは…こないだの!どうして?あたしを…?」
「だって、1人の子をほっとけないもん!だから、ここにいる皆であなたを助けに来たの」
紅葉のその言葉に、サラは涙を浮かべた。
「どうして…。ずっと、1人でここに…。来る人来る人、追い払っていった。今もあたしのことを、気に入らない人たちが、こうやって、あたしを狩ろうとここに来ている!」
「そんなことは、絶対に私達がさせないから!」
「そうよ。そのために私達が来たんだもん。あなたを救いたい」
「だからね!」
紅葉とセラティナは、顔を合わせ、サラに言った。
「私達の仲間になってほしい。一緒に来てほしい」
「あなたが、これまでのことを聞いたわ!私だったら、そんなこと絶対に耐えられない!」
「1人でいるのは寂しいと…。私は分かるから…」
「だから!」
そう言うと、2人は冒険者たちに攻撃をした。
「あの人たち…」
「失礼ながら、少しよろしいでしょうか?」
話を聞いていた黒瀬がサラに向かって言った。
「わたくし達は、サラ様、あなたの過去のことについて調べました。村のこと、奴隷にされそうになったところに旅人【シロン】様というお方に命を救われたこと…」
黒瀬は、サラの過去のことについて一通り言った。
そのたびに、サラは顔をゆがませていた。
涙が、溢れて出ていた。
「あなたは、もう、1人で抱え込まないください。もう、楽になってもいいのですよ?お嬢様やセラティナ様が言われたみたいに、よかったらわたくしたちの仲間になってほしいのです。そして、魔王を、四天王を一緒に倒しませんか?シロン様の仇を討ちたくありませんか?」
サラは、唇を噛みしめて、
「あたしは…、あなた達と一緒に行けば、憎たらしい四天王やもう1つの組織を倒せるの?そんな保障どこにあるの?」
「それは、わたくしが保証します。できなければ、、、お嬢様を何していいですよ」
黒瀬は、ニコッと不気味に笑って言った。
「ちょっと!!黒瀬、おかしくない?なんで、私なのよ!?あなた、私の執事なのに主人を売るようなこと言わないでよ!」
「でも、お嬢様。そういうふうに言わなければ、もしかしたら、サラ様は、首を縦に振ってはくださらないかと思いましたので…」
「勝手に決めるんじゃないわよ!?」
「2人とも、口を動かさず、手を動かしてほしいのだけど?」
セラティナが1人冒険者達に、攻撃をしていた。
「てか、この話はこの人達を倒してからにしましょう!黒瀬、頼んだわよ!!」
「仰せのままに…。我が主よ」
黒瀬は、一気に攻撃は仕掛けに行った。
素早い動きに冒険者達は、ついていけなかった。
「クッソ!」
「あの男、素早くて攻撃しても当たらない…」
冒険者達は、焦っていた。
「うちの執事は、1番強いのよ!何もかも完璧にこなせるのだから。あまり甘く見ない方がいいわよ?」
「なんか、黒瀬楽しそうね…」
「いつも、こんなに舞うように動いてないからねー。最近は…」
黒瀬の顔は、不気味に笑いながら、冒険者達の攻撃をヒラリと交わし、攻撃をしていた。
「私達…いるか?」
唖然としているセラティナは言った。
その光景を見ていたサラはふと思った。
(シロンみたいに、きれいな戦い方だ…。それから、あの笑顔は、、、何かを狩っていた時のシロンの顔にそっくりだ)
サラは、そう思いながら黒瀬のことを見ていた。
「やれやれ…。ざっとこんなものでしょう」
黒瀬がほとんど冒険者達を倒した。
「黒瀬、よくやったわ。ただやりすぎよ…」
「やりすぎてはいませんよ?痛めつけているだけですよ」
そう言い、ニヤリと笑い冒険者達の方を向く。
その不気味な笑みを見て、
「ひぃぃ!」
「うわーー!」
冒険者達が山を下りようとした。
すると、アジトを襲撃に行っていたラーガとロザが来ていた。
「あっ!2人ともいいところに―――。そいつらを捕まえてー?」
と、突然紅葉に言われ、ラーガとロザは言われるがままに捕まえた。
「お前ら、あまりあの人達を怒らせない方が身の為だ」
とロザが言うと、冒険者達はため息をつき、その場に座り込んだ。
「どうしてあなた達は、このサラ様を狙ったのですか?」
「誰からの命令よ!はっきり言いなさい!」
紅葉は、そう問いかけた。
「それは…」
冒険者達の言葉が一気に口を紡いだ。
「どうして言えないんだ?」
「俺達は、雇われただけだ。何も知らない!」
「嘘だ!?」
「嘘じゃない!!俺達は、サラマンダーを扱う獣人の小娘を狩ってこい!と言われただけだ」
「…っ!?」
紅葉が、そう言っている冒険者に向かって行き、魔法を唱えた。
「ファイヤーーーーー・トルネード!!」
「ちょっと!紅葉?」
セラティナが止めようとしたとき、黒瀬は何かの気配を感じた。
そして、ロザに、
「ロザ様!!1時の方向に向けて銃を撃ってください!」
「ん?分かった!」
ロザが、突然、黒瀬にそう言われたが、すぐに理由が分かったのか、銃を構え、黒瀬が言った方向に撃った。
撃った先には、紅葉達が追っている敵がいた。
「黒瀬!逃がすな!!」
「分かりました」
黒瀬は、その敵を追って行った。
「なんだったんだ?」
「恐らく、この者たちをお金で雇った奴だろう」
と、紅葉は言った。
冒険者達を、縄で縛り、山を下りて行った。
黒瀬も敵を追って行ったが、途中で邪魔が入り、追うことをやめた。
(厄介ですね…。まぁ、仕方ない事です。帰ってお嬢様にお伝えしなければ…)
黒瀬は、紅葉の元へと帰って行った。
その様子を見ていた者がいた。
「危なかった…。助かったよ。ルト」
「シルバーン、お前がしくじるからだ」
「悪かったよ。でも、面白くなってきたな…」
敵は、消えた。
◇ ◇ ◇
「お嬢様、すみません。取り逃がしました」
「珍しいわね。黒瀬が取り逃がすとは…」
「あともう一歩のところで邪魔が入りました」
「やはり、どこかで見ていたのね。仕方ないわ。またにしましょう」
そう言い、町へと帰った。
♢
♢
――――【ウトエスト】町へと帰ってきた。
紅葉達は、捕まえた冒険者達を差し出し、こう言った。
「町の人達よ!よく聞いてほしい」
紅葉の言葉に、町の人達は足を止める。
そして、近寄ってきた。
獣人のサラを見て、石を投げつけてきた者がいた。
「…っ!!」
サラは、思わず目をギュッと閉じた。
――ガツン!
凄く鈍い音がしたが、サラは
(あれ?痛くない…?)
サラがそーっと目を開けると、そこには紅葉がいた。
紅葉の額には、血が少量出ていた。
「いいですか?町の者たちを!このサラは、あなた達を救うために、この町にきたのです!旅人と。ですが、ある者にサラの召喚獣が操られていたのです。私達は、それを調べました。私達が追っている四天王の1人がその旅人を殺せ!と命じ、召喚獣に襲わせたのです!だから、サラをどうか、どうか責めないでほしい…。」
そう言い、紅葉は町の人達に向けて頭を下げた。
それを見た黒瀬も同じく頭を下げた。他の仲間達も頭を下げた。
サラは、それを見て、
(どうして…。こんなあたしのために…)
町の者達は、紅葉の話を聞いて顔を見合わせていた。
町の中心となる人がやってきた。
「話は聞かせてもらいました」
「あなたは?」
「この町をまとめています。『ギル・バディーン』と申します。ギルとお呼びください」
「はい。紅葉と言います」
と、紅葉達は自己紹介をし、話をしていたことを言った。
「それは、私がよく知っています。だって、私がそれを見ていたのですから…」
「…っ!!」
「どういうことですか!?」
「ここでは…」
「では、場所を変えましょう。それから、額の傷を手当しませんと…」
紅葉達は、ギルの屋敷に行った。
ギルから話を聞いた。
「すみません…。町の者が失礼を」
「大丈夫ですよ。お嬢様の額は、そう弱くないですから」
「そうね。よく高いところから落ちていたから、強いのよ…。って、何を言わせてるのよ!私のこといいのよ!すみません。話とは…?」
「皆さんは、どこまでそのサラさんのことを知っていますか?」
「そうですね…。ざっくりと言うと、ほとんどは知っています。旅人の名前が【シロン】様という方で、奴隷の者達が売られているところにサラ様がいて、救ったり、いろんな所を旅をしていた。ということを知っています」
「よく知っていますね。私は、サラさんと最初にお友達になりました。子供の時にね…」
ギルは、子供の時の出来事を紅葉達に詳しく話していた。
ギルは、もう少しで馬車にひかれそうになったところを、またまた、シロンとサラが町に訪れいた。
そこをちょうどシロンとサラが見ていたのだ。
サラは、そのこと言われて、
「そういえばそういうことがあったなぁ。では、あなたはあの時の子供だったのか?」
「そうですよ。あの時は、助けていただきありがとうございます。それから、私には友達がいないことから、サラさんあなたは私の友達になって下さいました。でも…」
ギルは、歯を食いしばって、
「サラさんを…町の者はおかしかった。私でもわかる。魔物達が暴れていて、サラさんとシロンさんが助けててくれていたのに…。暴走し、壊滅になったこと…、よくよく考えてみると、不自然なところがありすぎます!急に召喚獣が暴れるなどはありません」
「そうなのですか?」
「ええ、召喚獣とかは契約していますから…」
「では、いきなり暴れたりはしませんね。では、やはり何者かが手引きをしたのでしょう」
「許せない…」
紅葉は、胸を痛めていた。
絶対に操った者を許すことができないと。
四天王がやることが腹を立てた。
一通り、ギルの話を聞いて、ギルは町の人達に真実を伝えると約束をした。
◇ ◇ ◇
「サラ、あなたはもう、自由の身よ。私達と来てほしい…」
「少し考えさせてほしい」
「…。ええ、分かったわ。いい返事を待っているから」
そういって、紅葉達は、宿へと向かって行った。
サラは、自分の住処に戻り、紅葉と一緒に行くか悩んでいた。
(シロン…。私はいったいどうしたらいいの…。あの人達と一緒に旅に出てもいいのかしら…)
サラは、そう思いながら眠りについた。
その日サラは、夢を見た。
≪サラ…。サラ…。≫
誰かがサラを呼んでいる。
≪だ、誰?あたしを呼んでいるのは…≫
濃い霧の中から、男の人が現われた。
≪し…シロン。≫
亡くなったシロンが夢に出てきた。
≪サラ…。何をそんなに迷っているんだい?あの人達なら、サラ、君が幸せになれるんだ。僕が、君を幸せにしたかったんだけど…。もう、それは叶うことはできない。だから、サラ…。僕の代わりにあの人達と共に旅をするんだ。そして、幸せになってほしい…。お願いだ…≫
≪待って!シロン…≫
≪サラ…≫
シロンは、また、濃い霧の中に包まれていった。
サラは、夢から覚めた。
すると、もう朝になっていた。
「シロン…。あなたがそういうのなら…あたしは、紅葉達と共に旅をするわ。シロンが、昔、言っていた、いつか広く自由な世界を見たい。と…。あの人達となら、夢が叶うかもしれない…。見守っていて、シロン」
(シロンが居なくなったあの時から、心の中がぽっかりと穴が開いたようだったんだ…。でも、あの人たちといるのなら、少しでも穴が埋まるだろうか…)
サラは、住処を後にし、紅葉達の元へと急いだ。
◇ ◇ ◇
紅葉達は、身支度をしていた。
「紅葉…。本当にサラは来るのだろうか?」
「絶対に来るわ。サラを信じてるから…」
「お嬢様は、男を見る目はないですが、ああいう人達のことは、ほっとけない人柄をしていますからね」
と、黒瀬はニコリと笑いながら言った。
「ちょっと!黒瀬。一言多いわよ?余計なことを言わなくていいから」
紅葉は、顔を赤くしながら言った。
宿を出て、町の外へと出た時、サラが待っていた。
「どう?答えは見つかった?」
「ええ、あたしは…。あたしはあなた達と行くわ」
その言葉に、もの凄く嬉しかったのか、紅葉は喜びを隠せれなかった。
「その言葉を待っていたよ。ありがとう、一緒に来てくれることを選んでくれて」
「あたしは、いつか四天王を倒す!シロンの仇を討ちたい!」
「うん。一緒に頑張りましょ」
紅葉達は、【ウトエスト】をあとにした。
また少しずつ書いていきます。
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