教育係と魔物の襲来
更新に時間がかかり申し訳ございませんでした。
投下いたします。
「ん……」
深く落ちていた意識が覚醒する。ベッドの上で横になっているところから察するに、どうやらあのまま眠ってしまっていたみたいだ。
あれだけあった体の痛みや疲れが一切感じられない。いったいどのくらいの時間が経ったのだろう。
「リタ様。お目覚めになられましたか」
起き上がって辺りを見渡すと、メイドのラナが茶を入れているところだった。
「どうぞお飲みください。わずかではございますが魔力が回復しますので」
「ありがとう」
テーブルにつき茶の注がれたカップを持った。独特の匂いだが自然と心が落ち着く。一口飲み、そのまま止まらず、あまりの絶品さに飲み干した。こんなにおいしい茶はいままで飲んだことがない。
空になったカップに再び茶が注がれた。私はそれもすぐに飲み干す。茶がのどを通るたびに、枯渇していた魔力が文字通り注がれる、そんな感覚が体中にいきわたった。
「この飲み物すごいね。魔力は回復するし、それにすごくおいしい」
「ありがとうございます。茶入れは、このラナが誇れることの一つでございます」
「ところで、私はどのくらい寝てたの?」
「六時間ほどかと。ですがご安心ください。エンタール様がここを出ていかれてから、外の時間はまだ一時間も経ってはおりません」
「外の時間?」
一瞬何を言っているのかわからなかった。呆けた私の表情を見て、ラナは「はい」と続ける。
「今私たちがおりますのは特殊な魔道具で作成した空間でございます。そのため外界との時間がずれているのです」
それはつまり、簡単に言えば時間操作の魔法。分類でいえば超級魔法の類いだ。いくら魔道具を使っているといえども、人生で一度お目にかかれるかどうか、そのくらい貴重な魔法である。どうやら寝ている間にとんでもない体験をしてしまったようだ。
「でも六時間寝ただけでここまで回復するだなんて」
「僭越ながらヒールをかけさせていただきました。六時間もありましたので、傷もなくすことができてよかったです」
「ちょっと待って。じゃあラナは六時間ヒールをかけ続けてくれたってこと?」
「ええ。ですが問題ありません。この茶がありますので、魔力切れにはなりませんでした」
「そっか。ごめんね、迷惑かけちゃって」
長時間も回復魔法をかけてくれたラナに私は深く頭を下げた。正直眠っているだけでは傷はここまで回復しなかっただろう。こんなに体が軽いのはラナの懇親的な行動のおかげだ。
「とんでもございません。それより、お体のご様子はいかがでしょうか。ヒールを掛けたとはいえ、どこか痛みを感じるところはございませんか?」
「しっかり休ませてもらったからね。もう大丈夫だよ」
「それは何よりでございます」
私はベッドから降り、整えられていた装備品を装着する。
「それじゃあ行こうかな」
外ではすでに一時間が経過しているという。一時間の間に物事がきっと進んでいるはずだ。いつまでもここで休んでいるわけにはいかない。
聖教会。騎士団。大神官。色々あったけど、どんな理由があろうとヴァレスタの人たちを欺いていたことに変わりはない。とりあえず、あの大神官は三発ほどぶん殴らないと。
「リタ様、お待ちください」
ラナが懐から小さな硝子球を取り出した。向こう側が見えるほど透き通ったきれいな硝子球を、ラナは私に渡す。
「こちらをお持ちください」
「これは?」
「教皇様より賜りました。リタ様にお渡しするよう仰せつかっております」
「教皇、様が?」
さすがに呼び捨てはまずいかと思い慌てて言い直す。教皇様がわざわざ私を指名して渡すということは、何か特別な硝子玉なのだろうか。意図はわからないが、とりあえず渡された硝子球をしまう。
「わかった。たしかに受け取ったよ」
「はい。ではお気をつけて」
ラナに手を振り、私は部屋を出る。開いていた扉を閉めた瞬間、扉はまばゆい光を放ちその場から消えてしまった。時間の流れが違うからなのか、それとも別の理由なのかはわからないが、もう扉が現れる気配はない。改めてラナに感謝し、私は前へと進む。
少し進むと、目の前には覚えのある階段が上へと続いていた。
「あれ、この階段って」
セリスに案内されたあの小さな教会にあった階段だ。階段を上っていくと、案の定教会に出た。どうやらヴァレスタ支部の地下とこの教会の地下をつなげていたらしい。
辺りを見渡すと、老若男女問わず大勢の人が教会の中にいた。中には怪我をしている人もいる。
「これは、いったい……」
「おいあんた! 確かセリスと一緒にいた冒険者じゃねぇか!?」
ふと奥のほうから呼び止められる。声を発したのは大柄な男。露店で饅頭を売っていた店長だった。ところどころ傷だらけで、着ていたエプロンはボロボロに破れている。
「おじさん! なにがあったの?」
「魔物だ! 大量の魔物が街に現れたんだ!」
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