教育係と尋問
投下します。
「う……」
途切れていた意識が徐々に戻ってくる。頭がぼうっとし依然として手足はまだしびれていた。
薄暗い中辺りを見渡すと、石造りの壁が四方を囲み出入口は正面の一つのみ。両手は鎖で上に繋がれ足には重石が繋がれている。
だんだんとはっきりしてくる頭を無理やり回転させながら私は今の状況を把握した。
「捕まってる……でも、なんで」
確かさっきまで大神官の部屋にいたはずだ。二人きりになり、魔法か何かで意識を奪われ、腹に一撃。思い出したらお腹が痛くなってきた。
こういうところに連れてこられたあたり、これから行われることは大体想像がつく。だが本当に魔人となんて繋がりを持ってないし、魔人に対しての詳しい情報なんてものもない。しいて言うならアンドラスに襲われたことくらいだ。
ガチャリとドアノブが回され石造りのドアが開けられる。入ってきたのは仮面の男と大神官だった。
「初対面の相手に対して、大神官様ともあろうお方がちょっと酷んじゃないの?」
バシッ、と仮面の男に顔面をはたかれる。
「大神官様に無礼だぞ。自身の立場をわきまえろ異端者め」
異端者、ね。
どうやらこちらの話を聞いてくれる雰囲気ではなさそうだ。下手をすると一方的に手をあげられて人生終了しかねない。仕方ないので私は大神官の言葉を待った。
「少々手荒になってしまって済まない。なに、少しばかり聞きたいことがあるだけさ」
「聞きたいこと?」
「幻惑のアンドラス」
大神官の口から出てきたのは、数日前に遭遇した魔人の名前だった。
「危険度Aの魔人。冒険者としてのランクが低い君でも聞いたことはあるんじゃないか?」
「……話くらいは」
「実は最近そのアンドラスが消滅したと報告があってね。なんでも始まりの街であるオリジンに襲撃していたとか」
大神官が私の周りを歩きながら話を進める。
「そのアンドラスに捕らわれた冒険者がいることまでは突き止めたのだが、名前までは特定できなかった。その矢先に君が現れたのだよ」
「あの、話が見えないんですけど」
この大神官は結局何が言いたいんだろう。確かにアンドラスに捕らわれたのは事実だ。でもそれだけで私が魔族と繋がっていると断定するのはいくら何でもおかしい。
「君はほかにもセカンドという街で面白い体験をしているね。魔剣を使い高ランクの魔法を使ったりしている」
「なんでそんなこと……」
「つまりだ。我々にとって君は危険なのだよ」
大神官に頭を乱暴に掴まれ、そのまま手の握力で締め付けられる。
「たかがランクD。そう軽んじてアンドラスは消滅したのだろう。君の持つ隠された力に気づくことなくね」
「がっ! あぐっ!」
痛い。痛い痛い痛い痛い。締め付けられているのは頭なのに、そこから全身に痛みが広がっていく。全身の痛みとともに魔力が吸われていく感覚が体中を駆け巡った。
ガクガクと足が震える。鎖で両手を吊るされていなければ地面に倒れていたところだ。
「君の魔力を余すことなく吸収出来れば、魔人消滅のために使った力が手に入り危険分子も消せる。一石二鳥とはまさにこのことだな」
エナジードレインが終わる。どうやらすべて吸収されてはいないようだ。ほんのわずかだが魔力が残っているのを感じる。だがこの残りかすの魔力では何もできないのは明白だ。初級魔法だって発動できないだろう。
「さて、長くなってしまったが本題だ。報告では君のほかにもう二人、アンドラスによって捕らえられた冒険者がいた」
うなだれた頭を起こすように髪を掴まれ無理やり顔をあげさせられる。なるほど、そういうことか。
「その二人の名前と居場所を教えてはくれないかね」
「だ……れ、が」
絞りだした言葉で拒絶する。カレンとリリルの事を喋れば二人も同じ目に合うかもしれない。それだけは絶対に避けないと。
「ふむ。そうか」
引っ張っていた髪から手を放し、やれやれと息を吐き首を振ると、大神官は後ろで控えていた仮面に何か指示する。すると仮面は腰に装着していた鞭を手に取り私の右腕に向かって勢いよく打った。
「あぐっ! あああああっっ!!」
打たれたところが真っ赤になり、後からヒリヒリとした痛みが襲い掛かる。鞭打ちなんて冒険者をやってて初めての経験だ。その強烈な痛みは今まで感じたことがなく、どう我慢していいかわからない。その後左腕、腹部、背中と鞭を打たれ、その度に私はのけぞり悲鳴を上げた。
「どうだね。教える気になったかね」
大神官は再び私の髪を掴み顔をあげさせる。
「ほう」
声も出せないほど疲弊しきった私にできることは、目の前の相手を睨みつけることくらいだった。
「その目が物語っているな、やれやれ。少し時間がかかりそうだな。私は上へ戻る。お前はここに残って続けろ」
「はっ!」
髪から手を放し、あきれた様子で大神官はドアを開け部屋から出ていった。
その後も仮面によるむち打ちは終わることなく、むしろ大神官がいたときより激しさを増す。
仮面による鞭打ちは私が気を失うまで容赦なく続けられた。
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