教育係と大神官
投下します。
よろしくお願いいたします。
聖教会ヴァレスタ支部。聖教会の数ある支部の中でも最大級の規模であり、その外観は城塞都市の中心に位置する建物として十分だった。内装もきらびやかで、荒くれ者が集う冒険者ギルドとは比べ物にならない。
「おい。あれが――――――」
「ああ。どうやら魔族と―――――」
すれ違いざまに聞こえてくる声。どうやらいつの間にか有名人になってしまったようだ。私を見るなりローブを羽織った聖職者たちが険悪な表情を向けてくる。そりゃそっちからしたら忌むべき存在なんだろうけど、本当に身に覚えがない。一体情報源はどこなんだろう。
長い廊下を抜けると今度は長い階段が待ち受けていた。ヴェルグ卿は私の前を歩いているが一言もしゃべらない。それどころかこちらを見ようともしなかった。
「余計なことはするな」
やっと口を開いたかと思えばその一言。どうやら少しづつ距離をとっていたことに勘付かれたらしい。背中に目でもついているのかこの男は。
隙を見て逃げ出すことも敵わないまま階段を登りきる。そこでは仮面を被ったローブ姿の聖職者が二人ドアの前で待ち構えていた。
「お待ちしておりましたヴェルグ卿」
「ここから先は我らが引き受けます」
目の前の二人は聖職者にしては佇まいが明らかに違う。聖徒の試験の時にヴェルグ卿が着けていた仮面とは違うデザインのものだ。聖教会内の階級か、それとも所属部隊の証という線もある。なんにしても顔を隠すのが好きな組織だ。
「それには及ばん。貴殿らの手を煩わせずとも、このまま大神官様の元へ連れていこう」
ヴェルグ卿がドアに手を伸ばす。が、それは仮面の二人によって阻まれた。
「何のつもりだ?」
「ヴェルグ卿。我らは大神官様の命により、捕らえた異端者を連れてくるよう命じられております」
「異端者を連れて行くのは我ら意外に許されておりません。卿の任務はここまでとなります」
どうやらヴェルグ卿はこの先には行けないようだ。顔色を窺うと明らかに不服そうに顔をしかめている。聖騎士団長でさえもこの先に行くことは出来ないとなると、この二人は大神官の直属の部下かなにかなんだろうか。
なおも引かないヴェルグ卿に対し、仮面の二人は腰の剣に手を添える。
「これ以上の行為は大神官様への反逆行為とみなしますが、よろしいでしょうか」
「……承知した。連れていけ」
不服ながらも手を引き、ヴェルグ卿はドアに背を向け階段を下りる。ふと目が合い、そしてすれ違いざまに肩に手を当てられ、聖騎士団長そのまま消えていった。
残された私は仮面たちに連れられドアの向こうへと進む。
また長い廊下が姿を現し、無言のまま進んでいくと装飾されたドアが見えた。おそらく目的地はあそこだろう。
前を歩いていた仮面がドアをノックした。中から聞こえたのは男の声。どうぞという声に仮面はドアを開ける。
「失礼いたします大神官様。異端者リタ・フレイバーを連行しました」
ドアの向こうは執務室のような造りになっていて、向かい合わせのソファと本棚、それに立派な机が置かれていた。その机からこちらを見るように座る男。装飾されたローブを羽織り、紅茶を飲むその余裕綽々とした姿は統治者としての威厳を醸し出す。
「ご苦労。よく連れてきてくれた。もういい、下がりなさい」
「ハッ! 失礼いたします」
そう言い残しガチャリとドアを閉め仮面たちは部屋から退室した。
残されたのは私と、おそらくは。
「ああ、これは失礼。挨拶がまだだったね」
紅茶の入ったカップを置き近づいてくる。近くで見るとかなり大柄だ。その大きさはヴェルグ卿を彷彿させる。
「私はロズウェル・フォード。このヴァレスタ支部の支部長を務めている大神官でもある。よろしく」
「リタ・フレイバー。ただのランクDの冒険者です。あの、どうなっているんですか? 私は魔族との繋がりなんて持っていません。何かの間違いじゃ」
「いいや。間違いではないよリタ・フレイバー」
大神官がそう言った直後、突如意識が薄れる。
「なっ……こ、れは……」
突然のことにうまく思考が働かない。手足がしびれ、立っていられず膝をつく。何をされた、何がどうなってるんだ。
「幻影のアンドラスを屠ったその力、解析させてもらおうか」
意識がもうろうとする中、ガスッ!! と腹部に強烈な痛みを感じる。呼吸もままならなくなり、私の意識はそこで途切れた。
リタと大神官、ようやくご対面です。
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