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新米冒険者の教育係  作者: ユトナミ
第四章
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魔人のヒント

投下します。

「報告ご苦労。引き続き頼むよ」


「はっ! では失礼します」


 魔物討伐の報告をしに訪れた聖騎士にねぎらいの言葉をかけ、大神官ロズウェル・フォードは報告書に目を通す。ヴァレスタ近隣で発生している魔物の活性化、出現している魔物の種類についての内容が事細かに記載されていた。


 討伐数も以前の報告よりも増えている。さすがは聖教会が誇る聖騎士団だとロズウェルの口元が緩んだ。魔人の手のひらで踊っているとも知らずにと。


 カモフラージュは万全だ。この分なら正体が露見することはない。まさか聖教会の大神官が魔人であったなどと誰が思うか。


 ロズウェルはグラスにヴァレスタ産のワインを注ぐ。この体の前の持ち主は相当の酒好きだったようで、執務室に隠し部屋を作り貯蔵するほどだったようだ。


「聖女がヴァレスタに来たときは肝を冷やしたが、所詮は小娘だったということか。私の正体にも気づかぬとは。担ぎ上げられた人形だったか」


 数日前。視察という名目で突然聖教会内で教皇に次ぐ力を持つ聖女がやって来た。各地を回り浄化活動をしている最中、ある噂を聞きつけて訪問するに至ったという。


 ヴァレスタに魔人の影あり。


 どこからか出てしまったその噂のせいで、ロズウェルは大層焦った。


 魔王候補に名乗りを上げ、やっとの思いで大神官の体を乗っ取り、聖教会を内側から崩壊してやろうと考えていた矢先の出来事。対応を誤れば聖女に消されてしまうのは間違いない。


 魔人といえど物理的な力はほかの魔人に遠く及ばず、真正面から来られてはひとたまりもないほどに己の弱さは自覚していた。大神官の体を乗っ取れたのは準備に準備を重ね、それでもギリギリ達成できた結果である。


 いくつもの不安を抱えながら聖女と対談したロズウェルだったが、その内容は拍子抜けだった。


 魔物の活性化の件。ヴァレスタ内での治癒料金の増額について。そして魔人出現の話。


 あたりさわりのない回答を返すと、聖女は納得しこの街を後にした。


「そのあとに来た凄女には本当に消されるかと思ったがな」


 聖女の脅威は去った。だがその直後別の脅威がロズウェルを脅かすことになる。冒険者でありランクS、『凄女』の二つ名を持つ女がヴァレスタに現れたのだ。


 聞けば聖女と同じく魔人の噂を聞きつけやって来たという。ロズウェルは聖女が先にここを訪れ、特に問題はなかったと説明をした。聖女が何もせずに立ち去った以上、この地に危険はない。そういった意味を込めて説明をしたのだが、凄女はそう簡単には納得してはくれなかった。


 ヴァレスタ内の調査と称し街の中を歩き回り、支部内の調査、果ては市街のはずれにある古ぼけた教会まで調べていたようだ。近々取り壊す予定の教会なぞ調べたところで何も出て来やしないが、これ以上居座られてはまずい。そう判断したロズウェルは自身の力で魔物を生み出し、近隣の森へ放つ。


 こうして凄女に近隣の魔物の退治を懇願する形で、半ば強引にこの街から退去させることに成功したのだった。


「あとはアベルが言っていた冒険者か」


 ランクDの冒険者がこの街に向かっている。あの魔人はわざわざそれを伝えにきたのだ。あの時はたかがランクDと鼻で笑っていたが、事の重要性が分からないわけではない。幻惑のアンドラスが倒された件についても言及していたことから、その冒険者が何かしらの形でかかわっていることは間違いないだろう。


「アベルにはさっさと次の街に進ませろと言われたが……」


 極力そうしたい。むやみに突いて大事になってしまったら今までの苦労が水の泡だ。ここはことを荒立てずこの街から出るように仕向けるのが得策だろう。


 だが残念なことにアベルはその冒険者の名前を教えはしなかった。つまり誰をこの街から追い出せばいいかわからないのである。聖騎士団に探させているがいい報告はまだ来ていない。


 グラスに注がれたワインを飲み干し大きく息を吐く。


「さて、どうやって探すか」


「お困りのようですねぇ」


 突如目の前の空間がねじれる。これは空間系魔法を使用した時の魔力の流れが可視化したものだ。声とともに現れたのはいつも胡散臭い笑顔を絶やさない魔人アベル。ロズウェルの前まで進み一礼した。


「貴様がランクDの冒険者の名を明かさないんでな。どうやって見つけようかと思っていたところだ」


「なるほどなるほど。それはお手数をおかけしてすみません」


 よく言う、とロズウェルは吐き捨てる。思ってもいないことを言われ、またアベルの小ばかにした態度に腹が立った。


「それで、何しに来た」


「いえ。そろそろヒントが欲しい頃合いじゃないかと思いましてね」


「勿体ぶらずに答えを言ったらどうだ」


「ボクとしてはそれでもいいんですが、何分中立な立場なものでして。ロズウェルさんだけに肩入れするわけにはいかないんですよ」


 中立的な立場と。確かにアベルはそう言った。何を基準にしての中立なのかはわからない。ほかの魔王候補の魔人か、それとも。


「わかった。それで? そのヒントとやらをさっさと教えろ」


「理解していただけたようで何よりです。ではヒントですが、件の冒険者は今この支部の中にいます」


「……それだけか?」


「まぁまぁ慌てずに。今は何かの講義を受けているようですね。勉強熱心で感心感心」


 アベルの後ろの空間がねじれる。


「ボクからはここまでです。あとはお任せしますね。では」


 そういって手を振りながら、アベルは空間の先へと消えていった。


 ロズウェルは少し考えたあと聖騎士を数人呼びつけ命令を下す。


「緊急だ。今日行っている講義の受講者でランクDの冒険者を探し出し捕らえよ」

空けずに投下できました。


お読みいただきありがとうございます。

誤字脱字、ご感想などあればよろしくお願いします。

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