教育係と回復魔法
お待たせしてすみません。
投下します。
「では、回復魔法の講義を始めたいと思います。まずはお配りした冊子をお開きください」
窓口で受付を済まし案内された部屋で、回復魔法の講義が始まった。受付の際に配られた冊子を試験官の指示通り開き中身を確認する。ずらずらと文字が並んでおり、どうやら回復魔法の起源が記載されているようだ。
回復魔法の起源は遥か昔、人間や亜人、魔族といった種族の区別がされる前まで遡る。聖なる魔力を持つ一人の女性が傷ついた者の傷を癒し、その力がやがて魔法として世界に広がった。その女性は聖女としてあがめられ、のちにとある組織を作った。それが今の聖教会である。
淡々と描かれている文章を読み上げる職員。
「回復魔法は今でこそ聖属性魔法の一つと認識されていますが、大昔には『神の奇跡』と呼ばれていたそうです」
「神の奇跡……」
そう呼ばれるのも納得だ。どんな怪我でも治ったりしてたのなら、それは神の御業、奇跡と思わざるを得ない。きっと当時の聖女様は神のように崇められたのだろう。
「現在は魔力さえあれば誰でもその奇跡の一端を回復魔法として扱うことが出来るようになりました。代表的なのはヒールですね。ヒールは回復魔法の初歩中の初歩です。魔力の流れさえ理解出来ればすぐにでも使えるようになりますよ」
「それは助かるよ。今後の旅に必要なんでね」
「リタさんは旅の方でしたか。今時珍しいと思っていたんですよ、回復魔法の講義希望者がわざわざここに来るだなんて」
今回の講義を担当してくれるのは聖教会職員のフローディさん。聞けばこの講義を担当して長いんだとか。慈愛に満ちた柔らかい笑顔は優しいおばあちゃんそのものである。
フローディさんが珍しいと言った理由の答えはこの講義室の人数にあった。
数十人は入る部屋の中で現在回復魔法の講義を受けているのは私ひとり。あとは誰もいないのだ。
「他の街に配置された聖職者はもちろんですが冒険者の方も、このヴァレスタに外から来る方の多くが回復魔法を習得しています。街の住民はここがありますので回復魔法を覚える必要もありませんし」
「前は覚えてなくても大丈夫なところに居たんだけど、旅となるとそうも言ってられなくて。だから回復魔法を覚えるために一番初めの目的地をここにしたの」
「そうだったのですね。ではリタさんにはヒールのほかにも色々とお役に立てそうな回復魔法をお教えしましょう」
「え? いいの?」
「ええ、構いません。時間もありますし、受講者はリタさんだけですからね」
コホン、とフローディさんは軽く咳ばらいをし講義を続ける。
「回復魔法の代表格であるヒール。次に周囲を回復するエリアヒール。さらに広範囲の回復を可能とするフロアヒール。エリアヒールとフロアヒールに関しては聖属性魔法の適性がないと扱うのは難しいです」
「ヒール一つとっても色々な種類があるんだ」
「次に状態異常ですね。状態異常はいくつご存じですか?」
「麻痺に毒、火傷に氷に混乱。あとは精神操作くらいかな」
ここはオリジンの冒険者教育係として自身を持って答えられた。何しろ自分が新米の冒険者たちに教えてきたからである。ちなみに精神操作以外は実体験済み。たまたま解除ポーションが切れてて腕を凍らせたままギルドに戻ったときは、プレミアにそれはもう怒られたっけ。
「そうですね。それらの状態異常を解除できるのがキュアと呼ばれる回復魔法です。こちらはヒールよりかは覚えるのに少し時間が必要ですが、例えば解除のポーションが切れたとき役立ちます」
「キュアにも上位互換が?」
「もちろんあります。エリアキュア、フロアキュアといった回復魔法があり、習得できれば広範囲の状態異常を解除することが可能です。これを使えるのは聖職者か高ランクの冒険者くらいでしょうね」
なるほど。じゃあイザークさんは使えるわけだ。
冒険するにあたって使える魔法は多いほうが良い。ヒールだけのつもりだったけど、この際だからキュアも習得していこう。
魔力の流し方を一から教えてもらい、二時間いっぱいは使ったが、何とかヒールとキュアの習得には成功した。
「ありがとうフローディさん。これで旅がしやすくなったよ」
「それは何よりです。ただ、一番いいのはヒールやキュアに頼らないように気を付けることですからね。回復魔法を覚えたからといって油断して、命を落とす方も少なくはありませんから」
「肝に銘じておきます」
一通り講義が終了し、私はフローディさんに一礼をして講義室を出た。レクトの試験はもう始まっているころだろう。
私は人とぶつからない程度の速度で聖徒の試験会場を目指し通路を歩きだした。
更新が大幅に空いてしまいすみません。
誤字脱字、ご感想などあればよろしくお願いします。




