教育係とヴァレスタ内部
投下します。
よろしくお願いいたします。
門を通り、私は都市の中へ入る。
城塞都市ヴァレスタ。都市というだけのことはあり、目に映る建物や模擬店の規模が今まで見てきた街とは段違いである。そこかしこに食べ物を販売している店があり、さながら祭りのようだ。
見渡してみると、建物の装飾は白で統一されている。聖教会の聖職者である大神官が治めている大きな支部があるということも影響しているのかもしれない。
そして先ほどの門の一件で、私はイザークさんの『聖職者』としての地位に助けられた。
本来であれば通行許可証の提示または通行料を支払うことで門を通りヴァレスタに入ることが出来る。だが先ほどはその両方をせず、イザークさんが十字架を見せることによって門をくぐりこうして都市に入ることが出来た。
後から聞いた話だと、聖教会の聖職者は身分を証明するための十字架を贈られるらしく、それを提示することで通行許可証、通行料が免除されるという。
出発の際に通行許可証を発行しなかったのはそのためかと納得した。まぁ話してくれてもよかったとも思ったけど。
「そういえばイザークさん。あの門番のおじいちゃんと知り合いだったの?」
「ええ。彼とは私が以前この街にいたときからの友人でして、とても良くしていただきました」
聖職者と都市の門番。あまり接点はなさそうに思えるけど、イザークさんの話している楽し気な表情で気の許せる仲なんだと察した。私とプレミアみたいな関係かも。プレミア、今頃何してるかなぁ。
ヴァレスタの街並みに目移りしながら足を進めていくと、目の前にひと際大きな建物が現れた。周りの建物と比べても、その装飾の違いが一目でわかる。さながら城のような巨大な建物にはイザークさんと同じ服装の人が何人も出たり入ったりしていた。
「リタさん、レクトくん。ここが聖教会の中でも本部を除けば一番大きな場所であり、聖職者の中でも強い影響力を持つ大神官の内の一人、ロズウェル・フォード大神官様が治められている拠点。聖教会ヴァレスタ支部です」
「へぇーここが」
「大きいですね」
「数百年前オリジン一行が滞在していた時、この建物は魔物と戦うための城だったと記録されています。その城を立て直したのがこのヴァレスタ支部なのです」
「なるほど。通りで見た目が城まんまなわけだ」
外装が古城じみているのもうなずける。かつての魔物との戦闘では拠点として大いに役立ったに違いない。
「ここでは聖徒になるための試験を受けることが出来たり、回復魔法を覚えることも出来ます。回復魔法については初級のヒールが覚えられますよ」
「それはありがたい。この先ポーションだけじゃ対応できない場面も出てくるかもしれないからさ」
今後旅を続けていくうえで、今のようにお金が常に十分足りている状況が続くとは限らない。万が一路銀が付きポーションが買えなくなった場合、今の私に回復手段はないのだ。魔物との戦闘や旅の道中で傷を負い、ポーションが切れて傷を治す手段がない。負傷の具合によっては最悪死に至るのだ。
今まで負傷した時は薬草やポーションで凌いできたが、その方法で事態を回避するのはもう無理だろう。そんな最悪の事態を未然に防ぐために、どうしても回復魔法が必要だった。
「ここで……聖徒に」
聖徒になる試験を受けられると知って、隣のレクトにも気合が入っている。
「今から試験を受けるよりも、この後の時間は試験前対策にしたほうが良いかと。試験は明日一番に受けましょう」
確かに、いきなり試験を受けて合格するほど聖徒になる試験は甘くはないだろう。イザークさんの提案にレクトは納得したようにうなずいた。
「ではレクトくんは私と試験対策をするとして、リタさんはどうされますか?」
「せっかくだしヴァレスタを見回ろうかな。なかなか来れない場所だし、試験対策の邪魔しちゃ悪いしね」
「では夕暮れになりましたらまたここに集まるとしましょう。本日の宿についてはその時にお話しします」
「了解。それじゃあとでね」
「リタさん。迷子になってここに戻ってこられないなんてこと無いようにしてくださいよ?」
「おやぁ? 生意気言っちゃって。またこめかみグリグリされたいのかなぁ?」
人を小ばかにしたような顔をしていたレクトの表情が一瞬で引きつり、両手でサッと頭の側面を覆い隠す。そんなに痛かったのかあれ。なんかごめんね?
二人を見送った後、私も反対方向へ足を進めた。
「さてと。まずはどこに行こうかな」
知らない街に訪れ自由に散策する。これも旅に出ると決めたとき楽しみにしていたことの一つだ。
オリジンにいたころは基本クエストでほかの街に行くことが多かったが、こうして自由に街を回ったことは実は少ない。なので今、初めて目的もなく散策していることに私はわくわくしていた。
幸い路銀はたんまりある。せっかくヴァレスタという見知らぬ街に来たのだ。新しい武器や装飾品、名物料理も押さえておきたい。
そんなことを考えていると、不意にお腹の虫がググゥ~と音を発する。
「……まずは腹ごしらえと行きますか」
お腹をさすりながら、私は先ほどの模擬店が多く並ぶ場所に向かうべく歩き出した。
試験前の対策は重要です。
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