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新米冒険者の教育係  作者: ユトナミ
第四章
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教育係とリザードの習性

投下します。

日に日に暑くなってまいりました。

熱中症にはお気を付けくださいませ。

 冒険者の討伐対象で名をあげるとすれば、ゴブリンやスライムが一般的だ。その弱さもさることながら、冒険者になり立ての新米冒険者にとって最初の関門でもある。


 そうして少しづつ魔物討伐になれてきたところで、新たな関門になるのがリザードだ。


 リザードには種類が存在し、冷気に身を包んだ『アイスリザード』やすさまじい風を発生させる『エアリザード』、そして炎を吐き出す『フレイムリザード』が現在確認されている。


 アイスリザードとエアリザードは以前から姿が確認されていたが、フレイムリザードが発見されたのはほんの数年前。前からいた二つの個体は力こそ強かったが決してむやみに人を襲ったりはしなかった。それに対してフレイムリザードは力こそ弱いものの凶暴性を備え、人を見つけると容赦なく襲い掛かってくる。


 一説では普段温厚なリザードが何らかの形で凶暴な性格となり、それに伴って体が変化したと言われているが、発見から数年たった今でもそれは定かではない。


「お二人はフレイムリザードとの戦闘経験は?」


 道中。一時的にパーティを組んだイザークさんが私たちに問いかける。


 フレイムリザードは特段強い魔物ではない。リザードに毛が生えた程度の強さだ。一体かそこらなら問題なく片付けられる。だが徒党を組まれた場合。その対処法を知っていると知らないでは大きな差が出る。


「私はあります。単体も集団も」


「僕は……ないです」


 レクトがうなだれる。あの藁のあった小屋をねぐらにしていたのであれば、フレイムリザードどころか魔物との戦闘経験すらあまりないのかもしれない。それもそうだ。あの周辺は基本的に魔物が発生しない安全地帯。商人などが街を行き来する道で魔物に出会うはずもなく。


「そうですか。ではレクトくん、リザード系の魔物の集団と戦うとき何が大切かわかりますか?」


「え? うーん、囲まれないようにとか?」


「ええ、それも大切です。リザードは動きが早く油断しているとすぐに懐に潜り込まれますからね」


 実際、以前ルーペンとサーラの大森林にクエストに行ったときえらい目にあった。二度とあんな目には遭いたくない。今思えばよく生きてたな。


 リザードは動きが俊敏であり不規則に攻撃を仕掛けてくる。一対一なら動きを見ながら対処できるが、二体三体いるとそうもいかない。前に五体同時に相手にした時は見事に動きに翻弄され、あと少しで死ぬところだった。途中でマージとエルギンが来てくれなければ今頃土の下だったかもしれない。


「多数のリザードを相手取る場合は、絶対に一対多数にならないこと」


「リタさんお見事。その通りです」


 リザードに囲まれたり、数を相手にする場合の対処法。それは絶対に一対一に持ち込むことだ。正直リザード自体はそこまで強くはない。フレイムリザードも同様だ。各個撃破を心がければ突破は難しくはない。


 リザードと侮って纏めて撃破しようとするのが一番ダメだ。はい昔の私ですね。反省してます。


 普段勝てている魔物が徒党を組んだところで、という慢心や油断を見逃さずやつらはその隙を容赦なく突いてくるのだ。


 ランクFからEに上がりたての、調子づいてくる頃に受注するクエストとしてはこれほど適正な物はないだろう。おかげで私とルーペンは慎重になるということの大切さを思い知ったのだ。


「リタさん、どうかした?」


 レクトが呆けている私の顔を覗き込む。


 いけないいけない。昔の嫌な思い出に浸ってしまったせいで上の空だったようだ。これから討伐クエストだっていうのにそれじゃいけない。


「どこかお加減が優れませんか?」


「ううん。なんでもないよ。あっ……ないです」


 ついついいつも通りの返事を返してしまう。相手は教会の支部長を務める聖職者で、無骨な冒険者とは違うのだ。気を付けないと。


 イザークさんは私の考えを察したのかほほ笑みながら言う。


「ふふ。大丈夫ですよリタさん。どうか自然体で」


「でもイザークさんは」


「私は昔からこれが自然体なのですよ。それにパーティメンバーなのですから遠慮は無用です」


「……わかった。それじゃあお言葉に甘えて」


 それからは徐々にうちとけながら、私たちは道なりを進んでいった。レクトは教会の事や聖女様のことについてイザークさんを質問攻めにし、イザークさんもまた一つ一つ丁寧に答える。やり取りの中で私も知らないことが多く、聖教会についての知識がさらに身に着いた。


「私も聖教会の聖職者になってずいぶん経ちますが、聖女様にお会いしたのは数える程度しかありません」


「あまり表に出てこないの?」


「いえその逆です。普段は聖教会本部にいらっしゃいますが有事の際は聖なる魔力を使い、魔の眷属を滅ぼしているのです。ここ最近の魔物の活性化の件もあるので、聖女様自ら被害のあった街に赴いているのですよ」


「じゃあ僕があの時あった聖女様は」


「間違いなく聖女様本人でしょう」


 そうこうしているうちに、私たちはフレイムリザードの目撃が多数された場所にたどり着いた。


 今まで通って来た道とは違い、辺り一面が荒れている。木々も焼け焦げていることから、フレイムリザードの仕業で間違いない。焦げた木に触るとまだ熱を持っていた。おそらくまだこの近くにいるのだろう。


「どうやらさっきまでここにいたみたいだね」


「なるほど。私たちの気配を感じ取って離れましたか」


 リザード系の魔物は気配察知能力がほかの魔物に比べて高い。自身の種族以外が近づいてきたとき、素早くその場から離れ身を隠すのだ。そうして相手の様子を伺い、隙が出来たところで一斉に囲む。低級な魔物であるからこその生き残る術だ。


 焼け焦げた跡は道を外れ森の奥に続いている。逃げているのにわざわざ痕跡を残すのは、こうやって自身の敵をおびき出しているのだ。


「この奥ですね。行きましょうか」


 先行するイザークさんに遅れまいと、私とレクトも後に続く。


 少し進むと開けた場所にたどり着いた。そこにいたのは討伐対象のフレイムリザード。どうやら食事中見たいだ。ウルフ系統の魔物『キラーウルフ』を捕食している。数は一体。


「イザークさん」


「ええ。わかっています」


 姿は見えないが、周りに魔物が集まってきているのが気配で分かる。私たちが目の前のフレイムリザードに接触するかどうか見ているのだ。ここはあえて罠に乗ってやることにしよう。


 短剣を構え、目を離さずにじりじりと距離を詰める。目が合い、フレイムリザードはそれぞれの顔を確認すると、捕食を中断し鳴き声を上げた。


「ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィl!!!!!!!!!!!」


 耳障りな奇声の直後、周りの茂みからフレイムリザードが姿を現す。数は五体。目の前のと合わせると合計六体だ。


「リタさん、各個撃破で行きましょう。レクトくんはこちらへ」


「了解!」


「は、はい!」


 レクトが呼ばれイザークさんのもとに駆け寄る。その時一つ疑問が浮上した。


「そういえばイザークさん武器は?」


 道中、というか聖教会支部から一緒に来たけど、彼が武器を手にしたところをまだ見ていない。腰に剣は下げていなかったから懐に短剣でも隠し持っているのだろうか。それとも魔法を使って戦うのかも。


 聖魔法を使えるのだから、きっとほかの魔法も使えるはずに違いない。ユキノちゃんみたくフレイムランスとかサンダーブレードとか。


「聖教会に所属する聖職者は騎士団を除いては武器の所持を認められていません」


「じゃあ魔法で?」


「お恥ずかしながら、私が使えるのは聖魔法のみ。他属性の攻撃魔法はどうも苦手で」


「えっ!? じゃあどうやって」


 不安がよぎる。武器も魔法もないんじゃ戦う術がない。


 そう思って加勢しようと思ったが、何かが勢いよく衝突した音が響き、体が一瞬硬直する


「え、あれ?」


 振り返ると、イザークさんは右手を前に突き出し正拳突きの型をとっていた。


 拳の先にある、形を保っていた魔力が次第に霧散していく。フレイムリザードの数が減っていた。


「レクトくん。良い機会です。聖教会に入りたいなら覚えておいてください」


 そのまま左足を前に出し体を勢いよく隣にいたフレイムリザードに叩きつけ、今度は左手で裏拳を喰らわせた。奇声とともにまた一体魔力となって霧散する。


 型から体を戻し、イザークさんはレクトに向き直った。


「武器を持てないなら自らを武器として戦う。これが聖教会の聖職者の戦い方です」

聖教会は意外と肉体派が多いです。


誤字脱字、ご感想などあればぜびお願いいたします。

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