教育係と聖教会支部
更新が滞りすみません。
投下します。
街に着くころには日も落ち、辺りはすっかり暗くなっていた。
閉店の準備をする店もちらほら見受けられる。私とレクトはまだ開いている飲食店を探し、街の中をさまよっていた。
「どこもやってないねリタさん」
「うーん。ちょっと遅すぎたかな」
オリジンであればこの時間帯でもまだほとんどの店が営業している。色々なところから人が集まってくるため、客の出入りが激しいのだ。冒険者も街に帰ってくる時間はまちまちで、クエストに寄り蹴りだが夜遅くに帰ってくる場合もある。それを配慮して飲食店などは深夜も営業している店が多かった。
「まぁ冒険者も少ないって聞いたし、遅くまでやる必要がないんだろうね」
街に入るとき憲兵に聞いたが、リースと呼ばれるこの街は冒険者があまりいないらしい。ギルドはあるがあくまで聖教会の支部という位置付けで存在しており、オリジンやセカンドのようにギルドマスターが存在するわけでもないという。
支部では冒険者、聖教会の聖徒の登録は行えず、クエストの請負、受注管理、その他事務的なことの対応みのだ。そのためか外から来た人がこの街を拠点として長期滞在することは少ないらしい。それもあり遅くまで店を開ける必要がないようだ。
「でも困ったな。店が開いてないんじゃご飯食べられないよ」
これではせっかくの金貨も意味がない。注意深く探しては見たものの、歩いても歩いても周りの店は閉まっており、次第に人通りも少なくなっていた。これだと宿をとれるかもあやしくなってくる。
先に宿屋に行ってから飲食店を探せばよかったと、私は周りの状況を見て後悔した。
「レクト、とりあえずご飯は後。聖教会の支部に行こう。このままだと野宿になっちゃうよ」
「わかったよ。ここまで来て野宿は嫌だもんね」
街に入ったは良いが宿が取れず野宿するなんて、そんなことは絶対に避けたい。それに見知らぬ土地で野宿をするだなんて、リスクが高すぎる。魔物や野盗が襲ってこないなんていう保証はないのだ。
店は開いていなくても、聖教会の支部はさすがにまだ閉まっていないはずだ。頼み込めば床くらいは貸してもらえるかもしれない。
私は祈る気持ちで聖教会の支部へ向かった。
★★★
聖教会は簡単に言えば回復魔法、神聖魔法に長けた者が多く在籍する組織だ。冒険者組合とは異なる組織であり明確なトップとして教皇が存在する。
しかし冒険者組合と無関係というわけではなく、在籍者を冒険者組合に派遣したり、クエストの請負や受注なども行っている。その連携をしているのが聖教会の冒険者ギルド『イシス』だ。
オリジンのように初めから冒険者ギルドとして設立されたものもあれば、イシスのように母体が別の組織だということも珍しくはない。
街や村に存在する支部も、聖教会が冒険者ギルドを設立したからこそクエストの受注などができるようになったのだ。聖教会のみではただの教会になってしまう。祈りをささげることは出来ても、問題を直接解決することは出来ない。教会内部でもそのことが問題視されていたと以前プレミアが話してくれた。
「おっ、あれかな」
街の奥まで行くと教会が建てられていた。おそらくここが聖教会リース支部だろう。カーテンは閉め切っているが光が外に漏れている。おそらくまだ人がいるに違いない。
「良かった。まだいそうだね」
ドアノブに手をかけゆっくりと押し中に入る。内装はいたってシンプルで、受付が三つに円型のテーブルが二つ、椅子が四脚ずつあり壁際にクエストボードが置かれていた。
冒険者が少なく支部ということからこじんまりとしたイメージを想像していたが、意外にも広々としている。ふとクエストボードを見るとほとんどが治療や回復の依頼で、聖教会下の冒険者ギルドという特色が現れていた。
「こんばんは。どなたかいませんか?」
「はい、少々お待ちください」
私が投げかけると、奥から男性の返事が返ってきた。少しして現れたのはローブに身を包んだ若い男性。優しそうな顔つきでいかにも聖職者って感じの人だ。
「お待たせしました。どのようなご用事でしょうか?」
「いやーその、なんといいますか」
顔を合わせたはいいが言葉が出てこない。
冷静に考えて、寝床が確保できなかったので床を貸してくださいなんて言えるか!
目の前の男性はにこやかな笑顔を向けながら静かに佇んでる。どうやらこっちからの言葉を待っているようだ。今になって急に恥ずかしさが込み上げてきたが、こうなったらもう言うしかない。
「実は、今日宿が取れなくて。もしよかったら一晩泊めていただけないかと。あっ、もちろん床で構いませんので!」
「お願いします!」
私が頭を下げると、レクトもそれに習うように頭を下げた。男性の表情は見えないが、きっと困惑しているに違いない。こんな時間に支部に来て、床を貸してくださいだなんて。きっと前代未聞だろう。
支部内を沈黙が支配する中、私たちは未だ頭をあげられずにいた。
男性からの返答はない。驚いているのか、それともあきれて声も出ないのか。せめてレクトだけでも置いてもらえたらいいんだけど。
「あの、とりあえず頭を上げてもらえますか?」
言われた通り、私とレクトは恐る恐る頭を上げた。男性は変わらず笑顔をこちらに向けている。
「宿が取れなかったということは、外から来られた方ですか?」
「はい。私はオリジンの街から。この子はその途中で一緒に行くことになりまして」
「オリジンからですか。それは遠いところからよく来られました。であればこの時間のご訪問もうなずけます」
「遅い時間にすみません……」
「いえいえ。であれば、どうぞこちらへ」
男性は受付の横のバーを外し遮りをなくし手招きした。どうやら入ってもいいらしい。
私とレクトはそのまま男性のあとに続き支部内の奥へ進んでいった。
「あの、無理言ってすみません」
「気にしないでください。確かにこの街はほかに比べてお店が閉まる時間が早いですから。驚かれたでしょう?」
「そうですね。どこも開いていなくて途方に暮れていました」
そしてたどり着いたのはベッドが置かれた部屋。どことなくギルドにあった病室に似ている。
「ちょうど食事をとろうとしていたところだったんですよ。多く作りすぎてしまったので、よかったらご一緒しませんか?」
「ありがとうございます。実はこの街に来てから何も食べていなくて……。あっ、申し遅れました。私はリタ・フレイバー。こっちはレクトといいます」
「レクトです。よろしくお願いします」
「これはご丁寧に。私はイザーク・ルイスと申します。この聖教会リース支部の支部長を務めています。よろしくお願いしますね二人とも」
お読みいただきありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。




