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新米冒険者の教育係  作者: ユトナミ
第三章
58/118

教育係とパーティ申請お断り

投下します。

 宴会会場と化したギルドの食堂。宴会が始まってしばらく経ったはずだが、緊急クエストをこなしたという達成感も後押しし、いまだ冷めやまない熱気に包まれていた。


 まだ酒を飲んでいる者もいれば、そこら辺に座り込み寝始める者もいる。みんな本当に自由だ。


 私はテーブルに置かれている手つかずのジョッキを手に取りギルド内を歩く。明日にはこの光景もしばらくは見られなくなるのだ。なら、忘れないようしっかりと目に焼き付けておこう。


 高ランクの冒険者が割合を占めているのかと思ったら、意外と低ランクの冒険者もちらほら姿が見える。ランクの垣根なくみんながジョッキをもって笑い合い、語り合っていた。


 今この場にいるほとんどの冒険者を私は知っている。一緒にクエストに行ったり、時にはクエストを手伝ったり、基本的に採取クエストだったけど、時には魔物の討伐クエストもした。


「リタさん!」


 聞き覚えのある声が私の名前を呼ぶ。声の方向には四人の冒険者が椅子に座って、見知った少女が手招きをしていた。


「ユキノちゃん、楽しんでる?」


「はい! すっごく楽しいです! 冒険者ってこんなに大勢いたんですね、びっくりしました」


 いまやオリジンギルドの時の人なっているユキノちゃんは、周りの冒険者から多くの視線を向けられていた。一日でランクFからBになった冒険者はそうそう居ない。グリンドラゴンを消滅させたことで彼女のことを『竜殺し』と呼ぶ声もある。


 そんな彼女は周りの視線など一切気にした様子もなく―――はたまた単に鈍いだけなのか―――目の前に置かれたパフェの甘みを味わっているところだ。


「まぁ今日は緊急クエストだったからねー。そりゃ普段顔見せない連中も来るっしょ」


 ユキノちゃんが食べているものとは比べ物にならない特大パフェのクリームを、持っているスプーンですくいマージはそれを口に持っていった。


 見ているだけで胸やけしそうなそのパフェは、おそらく出されていたデザート類を合体させて作ったものだろう。パフェに乗っている一口サイズのケーキが、歩いてくる途中で見たものとまんま同じだ。


「よくそんな物食べれるな。俺だったら絶対無理だ」


 特性パフェを食べるマージにエルギンはあきれ顔を向ける。大丈夫だよエルギン。私もこれは無理だ。


 よくよく見ると、ルーペンが机に突っ伏しており、彼の目の前には半分も減っていない特製パフェがその存在感を醸し出している。どうやら志半ばで倒れたらしい。挑戦するのは良いことだが、ルーペンは引き際も覚えないと。


「リタも食べるー?」


「いやいいです」


 あまりの惨状を目の当たりにし、拒絶をする際思わず敬語になってしまった。マージには悪いが、あんな物食べた日には気持ち悪くて寝込んでしまうだろう。明日出発しようとしている身としてそれはあまりにかっこ悪い。


「それにしても、ユキノちゃんもずいぶん馴染んだみたいだね」


「ユキノは判断力がいいからな。それに魔力も俺たちより断然ある。色々な魔法を使って魔物を倒していく姿をお前にも見せてやりたかったよ」


「ユキノは気も利くからねー。調子乗って魔法連発して魔力切れになったときはすかさずポーションくれたし」


「お前は少しユキノに頼りすぎだ」


 その後もエルギンとマージからユキノちゃんのクエスト中の様子が嬉々として語られた。当の本人は照れ笑いを浮かべながら頭をかいている。聞けば聞くほどユキノちゃんの冒険者としての成長を感じ取ることが出来た。


「わたし、マージさんやエルギンさん、ルーペンさんとクエスト受けて本当に楽しかったです。四人ならではの戦い方とか連携とかいろいろ知ることが出来て。今度はリタさんをいれて五人パーティですね!」


「おーユキノいいこと言うじゃん」


「そうだな。久々に組むのも悪かねぇ」


 マージとエルギンはやる気満々だ。


 エルギンたちとはずいぶん昔にパーティを組んだことがある。当時は確かエルギンがランクCであとはランクEだったっけ。そのあとルーペンとマージがランクDになり、そのまま徐々に一緒にクエストに行くことは少なくなった。


 今私が彼らのパーティに入ってしまうと、クエスト難易度の基準がランクDになってしまう。せっかくパーティでクエストをこなす楽しさを覚えたユキノちゃんには、もっともっと上を目指してもらいたい。


「ねっ、リタさん。今度は何のクエストに行きましょうか」


「ユキノちゃん」


「はい? なんですか?」


 ジョッキにはもう飲み物は残っていない。とりに行くタイミングを逃してしまったから。


 せっかく好意的に誘ってくれたユキノちゃんに対してこれを言うのは心苦しい。だがいずれこうなるときが来るのは分かっていた。ユキノちゃんが私から離れるとき。それは今だ。


 乾ききった唇を動かし、私は私の意志を伝える。 


「せっかくのお誘いだけど、パーティは組まない」


 吐き出した言葉や最早飲み込めず、張り詰めたのどを潤すものは、今この場に存在しない。

誤字脱字、ご感想などあればぜひよろしくお願いいたします。

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