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新米冒険者の教育係  作者: ユトナミ
第三章
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教育係と決意表明

投下します。

「そうですか。魔人が……」


「はい。やつは魔王になるための実績を作るためにオリジンに現れたと言っていました」


 ギルドマスターの部屋で私は魔人アンドラスとのやり取りを事細かくミラベルさんに報告していた。もちろん空間魔法を操るアベルという謎の男の事も忘れずに。


 アンドラスはその身から湧き出る魔力量や実力の違いに恐怖を感じたが、あのアベルからは言葉に表すことのできない、得体のしれない恐怖を感じた。


 やり取りを見た感じ、アンドラスの部下というわけでもなさそうだ。そもそも魔族なのかどうかもわからないままその場を離れてしまった。アベルをどうこう言うには情報が少なすぎる。


「次の魔王を決めるべく魔人が動き出したとなると、今まで以上に魔族の動きに警戒しないといけませんね」


「そうですね。今回はなんとか事なきを得ましたけど、次もうまくいくかどうかはわからないです」


 それはミラベルさんに言っているのか、それとも自分に言い聞かせているのか。おそらく後者だろう。


 アンドラスはこのオリジンを落とすべく、まずギルドマスターであるプレミアを無効化しようと企んだ。そして調べるうちにプレミアの弱みを見つける。それが私だった。


 ランクの低い冒険者がギルドマスターの弱点と知ったとき、アンドラスはどれほど歓喜したことだろう。結果私はまんまとアンドラスの計略に嵌まり、あと少しでやつの計画に加担するところだった。あの時ヒイロが来てくれなければ、私は最悪の決断をするところだったかもしれない。


 私に足りないのは冒険者として強い魔族に対抗しうる力だ。確かに魔力量をなんらかの形で底上げすれば、一度だけなら高位魔法だって使える。だがそれはほんの一時の話に過ぎない。今回のような状況でそれは期待できないし、何よりオークも一人で倒せないのでは話にならないのだ。


 長い間オリジンという安全な場所にいた影響で、自身の力を上げることをいつの間にかやめていたんだと思う。でもそれじゃだめだということが、今回の事ではっきりわかった。


「アンドラスはプレミアを抑えるために私を狙ってきました。プレミアと親しい私が弱い冒険者だからそうしたんでしょう」


 なら、私がすべきことは一つ。


「私がここにいれば、また魔人が来るかもしれない。弱い冒険者を狙って。それはなんか、いやです」


「リタさん……あの」


 ミラベルさんの言葉を、私は手で制する。ミラベルさんは優しい人だ。今まで幾度となくその優しさに助けられている。彼女はこれからもその優しさでみんなを助けていくに違いない。


 だが、いつまでもその優しさに甘えるわけにはいかないのだ。何より甘えてしまったら、私自身何時まで経っても成長しない。


「弱い冒険者として狙われる。それはいやなので、まずは冒険者としての能力をあげようと思います」


「能力を上げる、ですか?」


「具体的には、ちょっとオリジンを出てほかの街に行こうかと」


 そうだ。いつまでもオリジンにいては成長は望めない。正直なところオリジン以外の街はセカンドくらいしか行ったことがなかった。それに、ほかのギルドはどんな感じなんだろうといった興味もある。


 色々な意味も込めて、オリジンを出るには今回がいい機会だった。


「ここを出るって……旅に出られるということですか?」


「まぁ、そんな感じです」


 実際旅に出たいと思ったことは何度かあった。だが思うだけで実行せず、ここでの生活に満足してしまい、結局オリジンギルドの教育係という看板を意図なくぶら下げることとなる。


 それに、今はプレミアがいない。


 そういう意味でも、いい機会だ。


 ミラベルさんは深い息を吐き、カップに紅茶を注ぐ。


「まったく。嫌な役を押し付けてくれますね」


「す、すみません」


「フフッ、冗談です」


 そう言ってミラベルさんは私のカップにも紅茶を注いでくれる。餞別のつもりなんだろうか。カップを持ち注がれた紅茶を飲む。やはりおいしい。


「ちなみに、いつ出発されるおつもりで?」


「あー、明日の昼には出ようかと。ファラさんにも話さないとなぁ」


「驚かれると思いますよきっと」


「そうですかねぇ」


「ええ、そうですとも」


 やけに自身ありげだ。まぁ数年お世話になっていた身としてはそういった反応をしてくれたらさみしくもありうれしい。いや、実は私の部屋が空くのを待っていたとかそういうオチだったらどうしよう。違う意味で笑顔で送り出されるとかホントやめてほしい。


 そんな妄想をミラベルさんに話すと、ツボにはまったのか声をだして笑い出した。よほど面白かったのかお腹を抱えて痙攣している。


 笑いが収まってから向かうと言われたので、こんな状態のミラベルさんを残すことに若干の不安を感じながらも、私は一人で宴会会場へ戻ることにした。

ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

三章もそろそろ終わります。


誤字脱字、ご感想などあればぜひよろしくお願いいたします。

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