教育係と現状確認
投下します。
「クソッ。なんだったんだよ、あのオークロードは」
「ああ。先に倒した個体とは比べ物にならない強さだった……」
デリルの森には身を隠す場所がいくつか存在する。普段新米冒険者たちの手助けをしていることから隠れることのできる場所は大体把握していた。今いるのは大樹の根本。そこは一か所空洞になっていて、大人数人が身をひそめることのできる広さを有していた。
アランとタイラーは自身の持つポーションを使い傷ついた体を回復させる。ザッハはあまり外傷はないようだが、頭を抱え小さくなりガタガタと震えていた。
「しかしこんな場所知ってるなんてな。さすがリタ・フレイバーだ」
「そりゃ、デリルの森には何度も来てるからね。こういう場所も自然と覚えるよ」
タイラーの賛辞に私は軽く返す。褒められるのは嫌じゃないが、今は自慢げに誇るときではない。
「それでリタ、さっき言ってた策って?」
「ああ、うん。その前に整理しようか」
私は四人の顔がこちらに向いていることを確認し状況を整理するべく私見を述べた。
「まず私たちが最初に倒したオークロード。これは多分だけどただのオークだったと思う」
「なんだと!?」
「……根拠は?」
信じられないといったように驚くアレンをよそに、神妙な顔つきでカレンはそう聞いてきた。無理もない。見た目は完全にオークロードそのものだった。誰がどう見てもオークと見間違うことはない。そう、外見だけなら。
「倒したときに思ったんだ。オークロードの割には分散した魔力が少ないって」
魔物を倒した際その体は魔力となり分散する。魔力が高い個体であればあるほど、分散した時に周りに与える影響はすさまじいのだ。例えば竜種を倒した場合、分散した魔力は色を帯びて空中を漂う。周囲一帯の魔力が上昇したり、その魔力を得てほかの魔物が活性化したりするのだ。前に遭遇したグリンドラゴンはユキノちゃんの魔法で魔力ごと消し飛んだから影響なかったけど。
それを踏まえて先ほど倒したオークロード(仮)だが、分散した魔力が周りに与える影響が異様に少なかった。せいぜい周りの魔力の密度をほんの少し上げる程度だっただろう。活性化しているオークロードであれば、分散した魔力の影響がもっとでたはずだ。
「それは僕も思った。魔力が低い個体なのかって思ったけど」
頭を抱えていたザッハも会話に加わる。彼も私と同意見だったようだ。
「でも姿はオークじゃなかったぞ」
「ええ。オークなら今まで何体も倒してきたから見間違えるはずはないわ」
そう。姿だけでいえば本当にオークロードだったのだ。遭遇した二体の個体の姿に違いはなく、出会った冒険者全員が同じ姿だったと答えるだろう。二体の相違点といえば魔力量のみ。それも片方を倒してみないと分からないときたもんだ。まるで、一体目を倒して浮かれている罠そのもの。危うくその罠に引っ掛かり死ぬところだった。
オークの姿には自信があるようで、アランとカレンはまだ納得がいっていないらしい。そんなにオークを倒してきたのかこの二人は。そのうち『オーク狩り』とかそこらへんの二つ名が付きそう。
「まさか、幻覚……か?」
半信半疑といった様子でタイラーが重々しく告げる。
「普通のオークをオークロードに見せて、わざと俺たちに倒させた」
「はぁ? 何のために」
「オークロードを倒したと勘違いした僕たちに本物をぶつけて、全滅させるために……とか?」
ザッハの言葉にアランとカレンの表情が凍り付いた。おそらくザッハ本人も確証をもって話してはいないだろう。オーク、オークロードにそこまでの知性はない。その強大な力で暴れまわることを生業としているやつらに、幻覚を見せるほどの魔法を使うなんてことはできないはずだ。オークジェネラルも記録上そういった精神に干渉する魔法の使用例はない。活性化の影響下でもそれは変わらないだろう。
つまり、オークどもの後ろに何者かが潜んでいるということだ。
「だ、誰がそんなことを」
「わわわわからないよっ! ただそうなんじゃないかなって思っちゃって」
「つまり私たちは危うく、誰かの思惑通り全滅するところだったってこと?」
「そういうことになるな……」
四人の顔がますます曇っていく。そもそもがおかしい話だったのだ。いくら活性化の影響があるからといって、オークロードやオークジェネラルといった高レベルの個体がいきなり湧いて出るはずがない。しかもいずれの個体もオリジンに向かっている。プレミアが不在なのもタイミングが悪すぎた。まるで初めからプレミアがいないオリジンを潰すことを目的にしているかのような今回の騒動。
色々頭の中で思いついてしまうが、今は目下のオークロードだ。
「誰かの詳細に関しては一旦置いておこう。今はあのオークロードを何とかしないと」
現状普通に戦ったところであのオークロードには勝てない。オークロードに対しこちらは冒険者が五人でそのうち一人はランクDだ。すみません私です。
一斉に飛び掛かったところで返り討ちに遭うのは目に見えている、ならどうするか。
「みんな聞いて。あのオークロードを倒す策が一つあるんだけど」
強大な力に対抗するにはどうしたらいいか。絡め手を使うのもいい。だがそれが通用する相手じゃないだろう。第一私が考える絡め手はすでに先ほど圧倒的な力の前に見事に失敗した。
ならどうすればいいか。答えは実にシンプルだ。
懐をまさぐり、私は一枚の紙きれを取り出す。良かった、まだあった。
強大な力に対応するにはどうしたらいいかの答え。
それは――――――――――――。
ご感想などあればぜひよろしくお願いいたします。
深夜にもう一本投下できればと思います。




