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新米冒険者の教育係  作者: ユトナミ
第三章
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教育係と冒険者の教示

投下します。

 ユキノちゃんたちと別れた私は、デリルの森の現状報告とポーション補充のためギルドに向かっていた。あちこちで魔物との戦闘が見受けられる。幸いまだ死者は出ていなさそうだけど、けが人が多く見られた。冒険者側が瓦解するのも時間の問題だろう。


「早く戻らないとっ」


 活性化した魔物を相手にする余裕はない。見つかってしまえば死んでしまう可能性だってある。情けない話だが、今の私の力じゃ太刀打ちできるかわからない。最大限の注意を払い魔物から身をひそめつつ、私はひたすらにギルドを目指す。


 そろそろミラベルさん特製のポーションが出来上がっているころだ。それを冒険者たちに配って回ればまだ持ちこたえられる。一刻も早くポーションを補充しみんなのところへ戻らないと。


「グオオオオオオオオオオオ!!!!!!」


 突如右側で魔物の咆哮が上がる。視線を向けると、冒険者四名がオークロードと対峙しているのが目に入った。あの四人の顔に見覚えがある。確かランクCの冒険者で構成されたパーティで、ギルド内で徐々に知名度が上がってきたメンバーだ。前衛二人後衛二人とそれぞれの役割分担もしっかりしていて、エルギンたちに次ぐ注目株だったはず。


「オークロードか! 相手にとって不足はねぇ!」


「何考えてんの! 引くのよ! 勝てる相手じゃないわ!」


「そうですよアランさん! 他の冒険者と合流してからにしましょう!」


「カレンとザッハに同感だ! アラン、ここは引くぞ!」


 彼らの判断は正しい。活性化しているオークロードにランクCの冒険者が四人束になったところで敵うはずがない。ここはほかの冒険者と合流し多人数で戦うべきだ。だが彼らは知らないのだろう。ほかの冒険者はすでに疲労困憊で、それでなくとも自身の前にいる魔物と対峙することで手一杯だということに。


「そこの四人、早く撤退して! ほかの冒険者の応援は見込めないよ!」


「えぇ!? それならなおのこと引きましょうよ!」


 ザッハと呼ばれていたメガネの少年が半泣きで喚く。女性の剣士と大男の盾持ちも私の声に反応しじりじりと足を後ろに動かした。だが、剣を持った青年はオークロードの前から一歩も動かない。それどころか剣を構えなおし戦闘態勢をとった。


「あなた何にしてるの! 聞こえなかったの、早く引いて!」


「それは出来ねぇな」


 青年は背を向けたまま私の言葉を拒絶した。


「俺がここで引けば、こいつは誰が対処する。応援が見込めねぇんだったら、ここで倒すしかねぇだろ」


「活性化したオークロードに勝てると思ってるの!?」


「ここでこいつを見過ごしたら、森を出てオリジンの街に入るかもしれねぇ。そんなこと黙って見過ごせると思うか?」


 その言葉に、撤退準備をしていた二人が青年の横に並んだ。


「なんだよお前ら。逃げるんじゃなかったのか?」


「バカ言いなさい。あんた一人で何ができるっていうのよ。うぬぼれないで」


「全く。へんなところで正義感強いんだからよ、お前は」


 パーティメンバーが次々と戦線復帰していく中、ザッハはうろたえていた。まさかこのまま戦闘続行するとは思っていなかったのだろう。足が震え今にも倒れそうな少年は、しかしゆっくりとその列へと加わった。


「ザッハ。無理すんな。ギルドに戻ってもいいんだぜ」


「カカ、カレンの言葉を借りるなら、バカ言いにゃさい、だよ。それに僕が居なかったら誰がみんなに支援魔法かけりゅのさ」


「舌回ってないわよ」


「ううう、うっさい!」


 四人の冒険者たちはそれぞれの持ち場についた。前衛に剣士が二人、後衛に魔導士と盾使い。バランスの取れたパーティだ。並みの魔物であれば楽に討伐できるだろう。しかし相手は活性化したオークロードだ。一筋縄ではいかない。


 先も伝えた通り、ほかの冒険者の応援は望めないだろう。であれば、ここにいる冒険者で目の前の魔物をどうにかするしかない。


「おっ? あんたも加勢してくれんのか?」


「いやまぁ、本当はやめとくべきなんだろうけどね。頭数は多いほうがいいじゃない?」


 今回は本当に戦う気はなかった。活性化した魔物がどれほど恐ろしいものか、ここ最近で嫌というほど身に染みている。今だって逃げ出したい。けれども、この青年の言葉で考えが変わった。この青年は自分の身より街の心配をしたのだ。強大な相手を前にそう言える冒険者は、今までの経験上信頼に値する。


「私はリタ。リタ・フレイバーよ。よろしく」


「俺はアラン・スプラッシュだ。このパーティのリーダーだ。よろしくな」


「私はカレン・クラビネット。よろしくね」


「ザッハトルテ・チャイルズです。ザッハと呼んでください」


「タイラー・ベールトンだ。あんたのことはゴルドさんから聞いてるぜ」


「ゴルドから?」


 思わぬところで知っている名前が出る。ゴルドはこのパーティとも親交があるのだろうか。


「ランクはDだが、いざというときの機転は大したものだ、ってな」


「はは、そりゃどうも」


 まったく、何を言っているのかと思えば。


 ともかくこれで後には引けない。オークロードに対するは冒険者五人。しかもいずれもランクはB未満だ。普通に戦ったら勝てるかどうかわからない。いやむしろ敗北濃厚だろう。


 だがせっかくゴルドがあんな紹介をしてくれていたのだ。良いだろう、やってやろうじゃないか。機転に奇策。私の思いつく限りの方法をこいつにぶつけてやる。


「さて、そんじゃあ行きますか!」


 アランの掛け声とともに、戦力的に圧倒的不利な戦いが幕を開けた。

誤字脱字、ご感想などあればぜひよろしくお願いいたします。

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