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新米冒険者の教育係  作者: ユトナミ
第三章
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教育係と役割分担

投下します。

 威勢よく受注したけど、私は今回戦闘をする気はない。


 緊急クエストの内容は『オークジェネラル及びオークロードの殲滅。それに伴う補助』だ。殲滅の部分はランクの高い冒険者に任せ、私は補助に回るつもりだ。ランクDの冒険者が戦闘に参加したところで、かえって邪魔になるのは目に見えている。ならばこそ、低ランクには低ランクにしかできないことがあるはずだ。


「ミラベルさん、ポーションをストックしてる場所を教えてくれる? 戦ってるみんなに急いで持っていかなきゃ」


「それなら今、倉庫にある物をここに持ってこさせています。今すぐ持っていけるのはこの分ですね」


 そう言ってミラベルさんは空間魔法を使い回復薬を取り出す。体力回復の赤いポーションが六つに魔力回復の青いポーションが七つが机に並んだ。


「それと、これを」


 ミラベルさんが懐から取り出したのは赤でも青でもない、緑色のポーション。普段見ることのないポーションだが、私はこれがなんなのか知っていた。


「これって、エリクサーですよね」


「エリクサー? へーこれがそうなの。私初めて見たかも」


「調合が難しいんだよなこれ。まぁお前じゃ間違っても作れない代物だ」


 ヒイロの軽口にリリルが反応し再びギャーギャーと喧嘩が始まった。そんな二人は置いておき、私はエリクサーに目を戻す。


 エリクサーは素材となる薬草と魔物の部位、特殊な鉱石を調合してできる万能回復薬だ。体力や魔力の回復はもちろん、大怪我をした時にこれを飲めばたちまち治る優れものである。ただその万能さゆえに作成するのに非常に手間がかかり、素材入手も困難なことから市場にはあまり流通しておらず、たとえ売っていてもとんでもない金額だったりするのだ。


「リタさん。これは自分用に持っていてください」


「え? でも、私なんかより高ランクの冒険者に使ったほうが」


「いいえ。これは必ず自分のために使ってください」


 有無を言わせない威圧感。緊迫した状況だからか、ミラベルさんの言葉の一つ一つに拒否できないと思わせる凄みを感じ取った。余計なことは言わないでおこう。


 エリクサーを自前のポシェットに入れ、私はポーションが入ったリュックを受け取った。ポーションの数は全部で十三個。数はそこそこだが、数以上の重さがズシリと背中に覆いかぶさる。これはポーションだけの重みじゃない。命の重みだ。私が運ぼうとしているのは冒険者にとっての生命線。絶対に間に合わせなければという責任が重くのしかかる。


 私は深呼吸をし顔を両手で叩いた。ダメだ、弱気になっている場合じゃない。今はクエストをやり遂げることに集中しろ。


「じゃあ私は行くけど、二人はどうするの?」


「私は戦闘に回るよ。ヒイロもそのほうがいいでしょ」


「そうだな。オークジェネラルに興味があるし」


「わかった。じゃあまたあとでね」


 またあとで。そう言わないといけない気がした。そうでないと、躓いたとき立ち上がれない気がしたから。


 私はギルドを後にし急いで向かう。慣れ親しんだ新米冒険者のためのエリア、デリルの森へ。






                     ×××






「これを! 早く使って!」


私はポーションを傷ついた冒険者に渡す。ポーションの効き目は抜群で、傷口がみるみる塞がっていった。通常のポーションであればここまでの即効性はないがそこはサブギルドマスター、ミラベル・ファストナー特製のポーション。回復効果が通常のポーションよりも格段に上だ。


 デリルの森に入ってから数刻。オークのほかにもゴブリンやウィンドウルフなどの魔物も確認できた。活性化の影響かそのいずれも通常の個体レベルとは異なりかつ凶暴化している。今回はランクCの冒険者も多数クエストに参加しているのだが、いつもと違う魔物たちに苦戦を強いられていた。


「うおらぁ! ゴブリンごときが舐めんじゃねぇぞ!」」


 ロングソードを振りかざし、男がゴブリンに突撃していく。振りかざしたロングソードを勢いよく振り下ろすが、二体のゴブリンにそれを防がれてしまった。防げたのがうれしいのか、はたまた男の力量を見切ったのか、ゴブリンたちはニタニタと下卑た笑みをこちらに向ける。


 周りにも冒険者はいるが、いずれもゴブリンに苦戦していた。ランクDでも倒せる魔物をランクCが倒せない。状況は非常にまずかった。


「リタさん!」


 聞きなれた声が聞こえ私は安堵した。見知った冒険者が四人私の元へ駆けてくるのが見える。実力的に心配はしていなかったけど、実際に姿を確認するとしないとじゃ、心の持ちようが違った。


 駆けながらも、ユキノちゃんは途中にいるゴブリンたちをランス系統の魔法で一掃している。炎に氷と鋭利な槍が魔物を突き刺し魔物の体を消滅させた。少しみないうちにずいぶん器用になったものだと私は感心する。


「ユキノちゃん。それにみんなも。無事でよかった」


「リタさんもご無事で何よりです!」


「もーちょー疲れたー……」


「リタ、ポーション持ってないか? 手持ちの分使い切っちまって」


 ルーペン、マージ、エルギンも一緒だ。すでにどこかで戦闘を行ったのか、防具や武器に魔物の返り血がついている。私は疲弊している彼らにポーションを渡し現状の確認をした。


「緊急クエストなら俺たちも受けてるぜ。今オークロードを四体倒してきたところだ」


「四体も!? すごいじゃんエルギン。これはもうランクA昇格待ったなしだね」


 活性化しているオークロードを四体も倒すだなんて、さすがはエルギンたちだ。ギルド内で勢いがあるパーティと言われているだけはある。


 だが私の言葉にエルギンは苦笑し、視線をユキノちゃんに向けた。


「違う違う。倒したのはユキノだ」


「へ? ユキノちゃんが?」


「ユキノさんすごかったですよ。高位魔法を連発してオークロードを一気に殲滅したんです」


「フレイムランスにアイスランス、あとサンダーブレードだったっけー。もーすごかったー」


 どうやらユキノちゃんが無双していたようだ。前までそんなに魔法も覚えていなかったのに、いつの間にそんな多彩な魔法を使えるようになっていたんだろう。ランス系統の魔法は殺傷性が高く威力もあるが、高い魔力と形を維持する集中力が必要だ。


 魔力はともかくそこまで集中力があったとは驚きである。いやそんなこと言ったら怒られちゃうな。黙っとこう。


「何言ってるんですか。皆さんの指示があったからうまく立ち回れたんですよ。特にマージさんのバインドは本当に助かりました」


「まー動きを止めるのがアタシの役割だからねー。役に立てて良かったよ」


 マージとユキノちゃん、この数時間で仲良くなったみたいだ。元々誰とでも話せる子だったけどなんだか楽しそう。年が近いからかな。いや私もそんなに離れてなかったけどね!


 ともあれこれでオークロードは残り六体。だがそれも心配なさそうだ。ユキノちゃんたちがこの後も何体か倒してくれるだろうし、リリルとヒイロもデリルの森に入っている。オークロードの殲滅も時間の問題だ。


 ただ、懸念すべきはオークジェネラルの存在。三体いると聞いているが、それはさすがにエルギンたちじゃキツイだろう。オークジェネラルに関してはランクAの冒険者に任せるべきだ。


「私は一度ギルドに戻るよ。持ってきたポーションも切れそうだし。オークロードの件は報告しとくね」


「わかった。気を付けてな」


 私はエルギンたちに手を振り、ギルドの方角へ走った。

疑似脱字、感想などあればぜひよろしくお願いいたします。

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