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新米冒険者の教育係  作者: ユトナミ
第三章
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教育係と緊急クエスト

投下します。

 オリジンに戻りギルドに報告に行くと、ギルド内はとても慌ただしかった。


 冒険者の数が普段より多い。それもランクの高い猛者ばかりだ。大多数のランクがCより上で、ランクAの冒険者も数人視界に入る。クエストボードも機能していなかった。ということは現在このギルドは緊急クエストを発令していることになる。


 緊急クエストとは、強力な魔物などの襲来により街が危険にさらされた時、ギルドがその魔物に特例の金額を懸け冒険者に駆逐させるクエストだ。一般的なクエストと違うところは、参加するのにランクの制限はなく誰でも参加することが出来るというところ。つまり今日冒険者登録した新米冒険者でも参加することが出来るのだ。


 ただよほどの命知らずでもなければそんな無謀なことはしない。仮にいたとしても、ギルドの誰かが必ず止めるだろう。過去に自分の力量を過信し緊急クエストで命を落とした冒険者は少なからずいるのだ。オリジンのギルドマスターがプレミアになってからは死人は出ておらず、プレミアがそんな無謀なことを許すわけがない。


 私はギルド職員に指示出しをしているミラベルさんを見つけ彼女の元へ向かった。


「ミラベルさん!」


「リタさん! それにリリルさんとヒイロさんも! よかった、無事だったんですね」


 ミラベルさんの服装は受付で話をした時のとは全く異なっていた。様々な魔法具を身に着け、冒険者時代に使っていたという杖まで持ち出している。ミラベルさんは元冒険者で当時のランクはSだ。その彼女がここまでの装備を整えているとなると、今回の緊急クエストの標的の強大さがうかがえる。


「ミラベルさんごめん。せっかくランクアップクエストをあてがってくれたのに戻ってきちゃって」


「いえ、いいえ。戻ってきてくれて本当に良かったです。あなたに何かあったら私はプレミアになんといえばいいか……」


 ぎゅっと、ミラベルさんは私を優しく抱きしめた。今はもうないけれど、新米だったころはよくこうしてもらってたっけ。この人にこうして抱きしめてもらうと自然と心が落ち着く。穏やかな気持ちになれるんだよね。


 とても心地よかったけど、今はゆっくりしている場合じゃない。私はミラベルさんの腕を静かに離した。


「ミラベルさん報告。サーラの大森林でゴブリンの出現を確認できた。強さも多分普通のゴブリンより上だと思う」


「サーラの大森林にゴブリンが? 魔物の活性化の影響ね。そちらにも人員を割かないと」


「この騒ぎ様は、まさかゴブリンじゃねーよな? 他にやばそうな魔物が出たのか?」


 先ほどまで口を閉じていたヒイロがミラベルさんに問いを投げた。確かにゴブリンが活性化の影響で幾分か強化されたところで、ここまで高ランクの冒険者が集まるはずがない。ゴブリンではないほかの何かが現れたのだ。


 以前グリンドラゴンが現れたときは、プレミアが殲滅部隊なるものを編成しデリルの森へ向かう直前だったが、今回の冒険者の人数はその時の非じゃない。


 私たちはミラベルさんの言葉を静かに待つ。ランクDの冒険者を前にしてはさすがに言いずらいのだろうか、ミラベルさんはなかなか言葉が出てこないでいた。しかし何かを決したのか、重くつながっていた唇がゆっくり、だがはっきりと告げる。


「現れたのはオークロード十体。それにオークジェネラルが三体。いずれも活性化の影響を受けて凶暴化しているわ」


 それを聞いて私は愕然とした。オークロードはオークが進化した姿であり、凶暴性や腕力など、あらゆる能力が跳ね上がっている魔物である。ただのオークであればランクCの冒険者数人で楽に倒すことが出来るが、オークロードはそうはいかない。ランクBの冒険者を交えてやっと倒すことのできる魔物だ。


 そして問題はオークロードの進化個体、オークジェネラル。本来であればオリジン近辺には絶対に現れない魔物だ。その凶暴性、知識、魔力、どの能力をとってもオークロードのときより数段増しており、ランクBはおろかランクAの冒険者でも数人がかりでかからなければ逆に命を落とす危険な魔物である。


「凶暴化したオークたちはデリルの森に突然現れたの。いずれの個体も活性化していて、オークロードでさえ一体も倒せていない状況よ」


「そんな……」


 魔物の活性化がここまで影響を与えていただなんて。そもそもデリルの森にはオークすら現れたことがなかったのに。しかもオークロードがまだ十体健在で、そのあとにはオークジェネラルが三体控えている。


「プレミアと連絡は?」


「何度も呼び掛けているわ。けれど一切反応がないの。いつもだったらすぐに繋がるのに……」


 ギルドマスターとサブギルドマスターはお互いの状況などを把握するため特別な通信魔法が使える。ただし片一方の魔力が制限されてしまうと使えない。以前プレミアがそう言っていたのを思い出した。ミラベルさんも同じことを思ったのか、徐々に顔色が悪くなる。


「ミラベルさん、大丈夫ですよ」


「リタさん?」


 笑顔でミラベルさんの手を握る。


「プレミアに何かあったとしても大丈夫です。だってプレミアですよ? 心配ないですって。だから――――」


 そう。なにかあったとしても、どうにかしてしまうのがプレミアだ。問題が起きても持ち前の機転の良さと規格外の魔力で必ず解決するだろう。だが、彼女が無事戻ってきたときオリジンが、彼女が守ってきたこの街が、纏めてきたギルドが、冒険者たちが、とても悲惨なことになっていたら彼女はどうなってしまうだろうか。


 だからこそ。私たちがするべきことは。


「私たちでプレミアが帰る場所を、この街を、全力で守りましょう」


 そう言って、私は緊急クエストを受注した。

誤字脱字ご感想などあればぜひよろしくお願いいたします。

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