表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新米冒険者の教育係  作者: ユトナミ
第三章
42/118

教育係と躊躇

すみませんこんなに空くとは……。

投下します。

 ゴブリンは基本的に知能が低く、さして驚異のある魔物ではない。


 確かに一昔前は危険指定されてはいたが、今となっては新米冒険者の登竜門的存在でしかなかった。


 そんな魔物がこの森の中をうろついていることに若干の疑問を浮かべたが、とりあえず私は目の前に群がる四匹のうちの一匹に切りかかる。


 愛用のダガーナイフがゴブリンの頭を割き、魔物特有の奇声を上げ、体が魔素となり四散した。


「ギギィィ!!」


 ゴブリンたちが私たちの存在に気づく。だがその隙にリリルとヒイロもゴブリンを一匹ずつ対処していた。


 リリルは杖をふりかざし魔法攻撃で、ヒイロはなんと素手でゴブリンを倒している。あの使い魔何でもアリか。


 残りの一匹が逃げようとするも、すかさずヒイロが回り込み逃げ道を絶つ。そしてそのまま右こぶしで殴りつけ、ゴブリンはその体を四散させた。


「あっけなかったな」


「所詮はゴブリンだもん」


 リリルとヒイロはさして苦戦する様子もなく、まるで作業のようにゴブリンを対処していた。さすがはランクDの冒険者というべきだろう。私はといえば、じつはゴブリンと戦うのは久しぶりで、一撃で倒せるかどうか若干不安だったのは内緒だ。


「でも珍しい。ゴブリンがこんなところにいるだなんて」


「え? そうなの?」


「ええ。デリルの森ならともかく、サーラの大森林で見かけるなんてあまりなかったから」


 以前であればここサーラの大森林でゴブリンを見ることはなかった。基本的にゴブリンはレベルが低いので、サーラの大森林に生息する魔物のレベルには及ばない。仮にいたとしても、あんな風に開けた場所で集まっているのは自らを危険にさらす行為だ。普通やらないだろう。


 考えられるとすれば、魔物の活性化の影響がゴブリンにも出たということだ。そうなるととても厄介なことになる。ゴブリンは新米冒険者の登竜門。そのレベルが上がったとなると、狩りに来た冒険者が逆に狩られかねない。これはギルド報告案件だ。


「リタ? どうしたの、そんな難しい顔して」


「え? ああ、ごめん。ちょっとね」


「大方ゴブリンのレベルが上がったことをギルドに報告しなきゃって考えてたんだろ」


 考えていたことをヒイロに当てられ、私は思わずドキッとした。


「ヒイロは心を読み取るスキルでも持ってるの?」


「いや持ってない。ただこの状況とあんたの言葉を聞いて想像しただけだ」


「すごいじゃんヒイロ。さすが私の使い魔」


「そんくらいは分かってくれませんかねー主様(のうてんきさま)


「その主様って絶対バカにしてるでしょ! ほかの意味交じってるでしょ!」


 リリルが突っかかる。


 とはいえこの問題は放置できない。一度ギルドへ帰り報告するべきだ。だがそれには一つ問題がある。

それは今行っているクエストがチームを組んで行っているクエストということだ。


「リリル、ヒイロ。聞いてほしいんだけど」


 私の呼びかけに、言い争っていた二人の声がやむ。


「サーラの大森林でゴブリンが出現したことをギルドに戻って報告する必要があるの。もしかしたらゴブリン全体のレベルが上がっている危険性がある。何も知らない冒険者が返り討ちにあってしまうかもしれない」


「そ、それはまずいね。確かゴブリンってランクEからDに上がるのに倒さなくちゃいけない魔物だったよね」


「その通り。私たちみたいにランクアップを行いたい冒険者もいるはずだわ。だからこそ、手遅れになる前にギルドに報告しておきたいんだけど……」


 ここからはさすがに流暢に言葉は出てこなかった。言葉が止まった私を、リリルは怪訝な表情で見つめ、ヒイロは変わらず涼しげな顔をしている。


「今ギルドに帰ってしまうと、現在行っているクエストは失敗。ランクアップクエストをするためにまたランクDのクエストを行わなくちゃいけないの」


 ランクアップクエストはほかのクエストと違い、ランクアップする前のランクのクエストを一定数こなさなくてはならない。そしてランクアップクエスト中にギルドに戻るとクエスト失敗とみなされ、再び一定数のクエストをこなす必要があるのだ。


 どんな事情があろうともギルドに戻った時点でランクアップする実力がないと判断されクエストは失敗となる。それも今回はチームを組んでのクエストだ。私だけならまだしもチームを組んだリリルもクエスト失敗となる。だからこそ、私はこのことを伝えるのを躊躇した。


「なるほど、な」


 最初に口を開いたのはヒイロだった。彼は使い魔だ、主の不利益になるような話は見過ごさないだろう。今まさに主に不利益が被ろうとしている状況で何も思わないはずはない。


 一方のリリルはあごに手をやり、何かを考えているようだ。


「あの、二人とも本当にごめん。私と組んだばっかりにこんなことになって……」


 空気に耐えきれず謝罪の言葉を口にする。だがそれでもリリルは私のことを見向きもせずただ唸っていた。


「えっと、リリル?」


「へ? ああ、ごめんごめん。じゃあいこっか」


 私の声にやっと反応したリリルはパッと顔を上げ、くるりと回り来た道を戻りだす。


「……いいの?」


「なにが?」


「その……戻ったらクエストが失敗になるってことなんだけど」


 リリルの足が止まる。そして私のところまで戻ってきたリリルは、私の両肩を掴んだ。


「クエストなんていつでも受けれるでしょ。今大事なのはギルドへの報告だと思うの」


「その割には何か考えてたよな」


「飛行系の召喚獣いたかなーって。戻るの楽そうだし。ただよくよく考えたらヒイロしか召喚の成功例なかったことに気づいちゃって」


「ほんと素敵な主様(アホンダラ)だよなお前」


「今のは確信を持って言える。絶対バカにしただろっ!」


 私の悩みを吹き飛ばすかのように、再び二人の言い争いが始まった。

誤字脱字ご感想などあればぜひよろしくお願いいたします。

励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ