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新米冒険者の教育係  作者: ユトナミ
第三章
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教育係と身の上話

すみません、大幅に空けてしまいました。

投下します。

 オークを討伐するため、私はリリルとヒイロを連れて【サーラの大森林】に向かっていた。


 サーラの大森林は前にユキノちゃんと一緒に来たデリルの森を抜け山岳地帯を過ぎた場所に位置しているので、オリジンの街からちょっと離れる。そのため遭遇する魔物もすぐに倒せる弱い個体じゃない。風の魔法を身にまとう【ウィンドウルフ】や口から火を吐く【フレイムリザード】などが台頭してくるのだ。


 それもあってランクの低い冒険者はサーラの大森林に行くことが出来ない。仮に行けたとしても、そのあと魔物に命を奪われてしまう。特に魔物が活性化している今は、新米冒険者は格好の餌食になってしまうだろう。好奇心は身を滅ぼすとはよく言ったものだ。


 かくいう私も数回サーラの大森林に足を踏み入れたことがある。帰ってこない新米冒険者をプレミアとゴルドと一緒に探しに行ったのだ。その時に死にかけのルーペンと出会い、彼をギリギリのところで助け今の関係に至る。前にもそんなことがあったので、その場で説教をしてしまった。もう数年前の話になる。


「デリルの森って小さな魔物が多いよね。スライムとか、ブルーキャットとか。私ブルーキャット使役したい。可愛いし」


 リリルの言うブルーキャットとはその名の通り、小さな青色の猫のことを指す。攻撃力も高くなく体力もないのですぐに倒せるのだが、その愛らしい姿を目の当たりにした冒険者は倒すのをためらってしまい、結果旅のお供として捕まえて使役してしまうのだ。


「あーあの猫な。焼いたら食えんのかな」


「やめなさいよ!? 絶っっっっ対にやめなさいよ!?」


「押すなよって?」


「振りじゃないわよっ!」


 ヒイロはクツクツとリリルをからかって遊んでいた。


 見た目は完全に人なのだが、これでもリリルの使い魔らしい。完全に人なのだが。


「そういえば、二人はいつから一緒にいるの?」


「え? えーっと確か、一年くらい前だっけ? 私がヒイロを呼び出したのは」


「あーもうそんなに経つか」


 ヒイロは頭を掻きながら、世間話を流すくらいの感じで相槌を打つ。


「私の実家は代々召喚士の家系でね? その基盤を作ったご先祖様のリルル・クラインハートは、それはもうすごい召喚士だったんだから」


 リリルは歩きながら嬉々としてご先祖様のことを語ってくれた。


 リルル・クラインハート。かつて下級貴族だったクラインハート家を一代で上級貴族にのし上げ、のちの世にクラインハート家を【召喚士の一族】として知らしめた女傑だ。契約した使い魔はどれも最上級の精霊や魔神であり、世界にはびこる魔物を討伐して回ったという。


 世界を回り終えたリルルは自身の使い魔たちをそれぞれ魔本に封印した。のちに再び世界に魔物がはびこったとき、クラインハートの子孫の力になれるよう。


「家にご先祖様が残してくれた蔵があって、そこで私は一冊の魔本を見つけて、その魔本に封印されていたヒイロを召喚したってわけ」


「呼び出されたときは驚いたぜ。なんせ前に呼ばれた時から数百年経ってるってきたもんだ。クラインハートの家に至っては見違えるほど大きくなってたしな」


「そりゃあ我がご先祖様の功績の賜物よ」


 リリルは得意げにそう言った。


「あれ? ならなんでリリルは冒険者をやっているの? クラインハート家ほどの家柄だったらわざわざ冒険者にならなくても、ほかに道があったんじゃない?」


 オリジンの影響もあって、冒険者という職業は知名度も高いし人気もある。以前プレミアが街で行った職業調査の統計でも、なかなかの位置にランクインしていた。


 だが所詮はその日暮らしで危険が常に付きまとう不安定な職業である。実力があればそこそこなところまで行くことが出来るが、夢半ばで転職したもののほうが多い。召喚士であれば無理に冒険者にならなくても、例えばどこかの専属の召喚士になるとかあったはずだ。


「あー、それは……」


「あ、ごめん! ちょっと踏み込みすぎた。無理に話さなくていいよ」


 リリルの雰囲気に気を許し、つい個人の領域にまで踏み込んでしまった。これはいけない。冒険者になった理由なんて人それぞれだ。それをおいそれと聞くにはまだ関係が薄い。


 困った顔をしているリリルに私はすぐに謝った。


「ううん、大丈夫だよ。別に隠すほどの事でもないし」


 リリルはそういってぽつぽつと話してくれた。


「私ね、クラインハート家の落ちこぼれなんだ」


「落ちこぼれ?」


「そう、落ちこぼれ。上に三人の姉がいてね、みんなすごい召喚獣を自力で使役してるの。風の上位精霊に氷の上位精霊、それと火の上位精霊」


「それは、すごいね」


「うん。すごいんだよ? 上位精霊を使役できるだなんて。さすがクラインハート家に生まれた者たちだって、周りもそういってた」


 なんとなくだが、そのあとに続くリリルの言葉が想像できる。顔は笑っているが声に先ほどご先祖の話をしていた時のような勢いがない。


「四番目に生まれた私は比較的に魔力も少なければ召喚士としての才能もなかったの。いつしか周囲の人たちから落ちこぼれって呼ばれ始めたわ」


 そういってリリルは、「あっ、でも」と思い出したように続ける。


「両親と姉さんたちはかばってくれたの。周りなんか気にするな、今にできるようになるって」


「優しい家族ね」


「うん。本当に。でも私は思ったの。このままここにいてもきっと何も変わらない。何かを変えるには覚悟が必要だって。ご先祖様の受け売りなんだけどね」


 そういったこともあり、リリルは冒険者の道を選んだという。ヒイロも黙って聞いていたが、時折表情が柔らかくなっていた。召喚主の覚悟に、何か思うところがあるのだろう。


「そんな理由で今は冒険者やってます。いつかランクSになって、あの時私を馬鹿にした周りの連中に目にもの見せてやるんだから!」


「やる気があるのは結構だ。じゃあさっそくそのやる気を、あそこのゴブリンに向けてくれるか」


 ヒイロが指さした草むらから、四匹のゴブリンが下卑た笑みを浮かべ現れる。オークには劣るものの、こいつらも一昔前までは女冒険者の間では危険指定されていた魔物だ。


「上等よ。オークの前の準備運動ってことね。準備はいい? リタ」


「うん。問題ないよ」


「そんじゃあいきますか」


 ヒイロの掛け声で、私たちは一斉にゴブリンに襲い掛かった。

今後とも不定期ではありますが更新したいと考えております。

よろしくお願いいたします。

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