教育係と召喚士様(笑)
四話投下します。
「いないなぁ……」
歩きながら私は小さくそうつぶやく。
ギルド内を回るが、どの冒険者もランクCやBでだった。今からランクアップクエストを受けに行く冒険者は見つからず、おなかがすいたので食堂の席に座っている。
ミラベルさんの話によれば、私と同じ女性冒険者らしい。桃色のローブに身を包んだ少女で召喚士だという。なかなか珍しい職業だ。
召喚士はその名の通り、この世界とは別の世界に存在する魔物や精霊と契約し、使い魔として自分の代わりに戦ってもらう者のことである。知り合いに一人召喚士がいるが、大精霊や上級魔族などとんでもない使い魔を使役していた。
ぜひとも会いたかったがどこを探してもその姿を見つけられない。もしかしてもう行ってしまったのだろうか。
「召喚士だもんなー。そもそも一人じゃないのか」
複数人数推奨のクエストでも、召喚士であれば単体で行くことが出来る。その際契約している使い魔の数を申告しなければならないが、たいがい数が多いので問題ない。今回の桃色ローブの召喚士もきっとそうだろう。
「はぁー……ほかの人探すか」
椅子から立ち上がり、近くに座っていた二人組の後ろを通るため椅子を引いてもらい、私は再び同ランクの冒険者探しに赴く。
「それにしても、お前もドジだね」
「うっさいなー……手が滑っちゃったんだってば」
ふと、今後ろを通った二人組の会話が聞こえる。そういえば見たことのない顔だ。別の街から来た冒険者だろう。
「買ったばかりのパフェ丸々落として服汚すなんざ、漫画やアニメじゃねぇんだから」
「マンガ……アニメ? また私の知らない言葉を使う~」
「お前もドジだね」
「それはさっきも聞いたよ!」
楽しそうな会話だ。黒服の男性が少女をからかっている。聞きなれない言葉が飛んでいたがほかの国の言葉だろうか。私もユキノちゃんに会った時そんな状態だったのを思い出す。
「それよりも! これからランクアップのクエストに行くんだから、ちゃんと従ってよね」
「お前が出すへぼい指示にか? 自分で動いたほうがまだましだと思うぞ」
「へぼい言うな! あんたがいっつも勝手に動くから何ができるか把握できないのよ!」
「自分の無知を理由にするなよな。召喚士様(笑)」
「今馬鹿にしたでしょ! 召喚士様って単語の影に隠れた悪意が見えたよ!」
「別に隠しているつもりはないんだが」
「そこは隠してよっ!」
徐々にヒートアップしていく言い争い。周りも注目し始めるが一向に止まる気配はなかった。これ以上拡大する前に収拾を付けないと。それに気になる単語も出てきたし。
「お二人さんストップストップ! その辺にしておきなよ。結構注目浴びちゃってるよ」
わたしの声に二人は言葉を止め、少女は辺りを見回す。だいぶ視線を集めていたことに気づき、頭を方々に下げ顔を赤くし静かに席に座った。
「す、すみません……」
一方の男性は特に悪びれた様子もなく、その意地悪な表情を崩さない。この状況をどうやら楽しんでいるようだ。
落ち着いたところで、私は少女に話しかける。
「まぁ喧嘩はほどほどにね。それよりあなた、さっきランクアップクエストがどうとか言ってなかった?」
「へ? あ、はい。これからランクCに上がるためにオークを狩りに行こうかとしていたところです」
ビンゴ。間違いない。ミラベルさんが言っていた召喚士の少女はこの子のことだ。
「私もこれからそのクエストに行くところだったの。私はリタ・フレイバー。リタって呼んで。よろしく」
「あっ、これはご丁寧に。私はリリル・クラインハート。こっちは使い魔のヒイロよ」
「どーも。この間抜けな主人より高性能な使い魔、ヒイロだ」
「こいつっ!」
今にもつかみかからんとする勢いのリリルをまーまーとなだめ、私は早速本題に入る。
「実はね、オーク討伐のクエストを一緒にしないかっていうお誘いをしにきたの。私ひとりじゃさすがに三体は倒せないし、相手はオーク。いろんな意味で一人で行くのは危険だと判断したの」
「なるほど。確かに女性一人でオーク討伐は危険ね」
「でしょう? だから同じランクアップクエストを受注している冒険者を探していたの。どうかな、一緒に行かない?」
「わかったわ。一緒に行きましょう。ヒイロもいいよね」
「あん? いいぜ。ちょうどお前いじるのも飽きが来てたしな。新しい話し相手が欲しかったとこだ」
「上等よこの不良使い魔っ!」
再び喧嘩を始めそうな二人の間に入り、何とかこの場を収める。ウーム、頼む相手を間違っただろうか。
だが実力は相当なものだろう。使い魔であるヒイロから感じる魔力量はそれこそ前に知り合いに見せてもらった大精霊と同等だ。それを従えるリリルさんも高レベルの召喚士に違いない。
ともあれここに、オーク討伐のための簡易的なパーティが誕生した。
使い魔になめられる主人。ありだと思います。
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