教育係とサブギルドマスター
三話です。
投下します。
「初めまして。ユキノ・コウヅキです。今日はよろしくお願いします!」
元気のいい挨拶に、三人は笑顔を見せた。
「ルーペンです。よろしくユキノさん」
「マージだよー。よろしくー」
「エルギンだ。よろしくな」
ユキノちゃんをギルドのホールから食堂へ案内し、私は三人と会わせた。両方とも初対面にしてはなかなか好印象だ。
「じゃあルーペン。あとはよろしくね」
「任せてください。それじゃ行こうかユキノさん」
「はっ、はい。お願いします!」
「カタいカタいー。そんな緊張しなくていいしー」
「お前は緩すぎだマージ」
笑いながらギルドから出ていく四人を見送りながら、私はギルドの受付を目指す。
いつもだったら受付に行く前にプレミアが出てくるのだが、今現在彼女はセカンドにおり出てこない。半ば新鮮な感覚で、私は窓口の職員に話しかけた。
「すみません。ランクアップクエストを受けたいんですが」
「はい。承り……あらリタさん。奇遇ですね」
声の主はにっこりと笑い、さも偶然のような言い方をした。
「いや今魔法で顔変えてましたよね」
そう言って私はため息をついた。目の前の女性はわざとらしく首を傾げ「はて?」なんて言っている。
「何してるんですかサブギルドマスター」
長い髪に慈愛に満ちた表情。優しい瞳。破天荒なギルドマスターとは全く逆のイメージで固められている聖女のごとく優しいこの人物こそ、オリジンサブギルドマスター、ミラベル・ファストナーその人だ。
「そんな他人行儀の中でもないでしょう。いつも通りミラベルと呼んでくださいな」
そう言ってミラベルさんは聖女がごとく笑みを私に向ける。
「すいませんミラベルさん、ちょっとびっくりしちゃって。それでランクアップのクエストを受けたいんですけど」
「そうですか。今リタさんのランクはいくつでしたか?」
「Dです」
「となると、ランクCへのランクアップクエストですね。今のターゲットは……」
ミラベルさんが書類が入っている棚をガサゴソ探っている。本来これはサブギルドマスターがする業務ではない。
「あのミラベルさん。対応してくれるのはうれしいんですけど、サブギルドマスターとしてのお仕事は……」
そう。プレミアがいない今、オリジンの全権限は彼女にあるのだ。そんな人物が、自分でいうのもなんだがDからCへのランクアップクエストの手続きに時間を割いていていいはずがない。もっとほかにすべきことがあるはずだ。
「いいんですよリタさん気にしなくて。プレミアがいないからといって私の仕事が劇的に増えるわけではありません。せいぜいがこちらでの、様々な承認をおろすくらいです」
「そ、そうなんですか?」
「はい。ギルドマスターといっても、有事の時以外は承認業務くらいしか仕事がないんですよ。それに加えてあの子は自主的に近隣の見回りや他の冒険者と交流したりしてるんですよ」
私が言ったというのは内緒ですよ、とミラベルさんは人差し指を口元に立てた。
いつもほかの冒険者にだる絡みをしていたのは考えての行動だったらしい。正直遊んでいるだけだと思ってた。
「そして今、リタさんがランクアップのクエストを受けに来てくれました。本来であればプレミアに任せるところですがあいにく不在ですので、不肖このミラベルが担当させていただきます」
「ランクアップにそんな大げさな……」
「いーえ。ほかならぬあのリタ・フレイバーのランクアップクエストです。当然の対応です」
プレミアといいミラベルさんといい、なぜこうもここのトップの人たちは私に過剰な対応をするのだろうか。確かに今まで多くの新米冒険者をギルドの依頼で面倒見てきたが、それにしたって動きすぎである。
まぁトップが動いてくれるおかげですんなりとクエストも受けれたりするから、今の状況を利用している私も大概だけど。
「では改めて。今回のランクアップクエストの討伐対象はこちらになります」
私はミラベルさんからクエストの詳細が書かれた用紙を渡される。
「オーク三体の討伐か。なかなか手応えありますね」
オーク。ゴブリンの上位種であり危険度Cの魔物だ。
大きな体で棒切れを乱暴に振り回すその姿は厄介そのもの。油断すれば命を落とす魔物だ。
その力も危険だが、オークが危険度Cに位置する理由はもう一つある。爆発的な繁殖力だ。
オークはどんな種族とでも交わり子を残すことが出来る。そして母体の標的にされるのは主に人間だ。過去多くの女性冒険者がその毒牙にかかり、母体としての役割を果たしてしまったと記録に残っている。
今となってはそう言った悲惨なことはもう聞かないが、魔物が活性化している今、またそのようなことが起こりかねない。
「今はそういった魔物はなおさら放ってはおけないんです。それで、危険度Cの魔物が今オークしかいなくて……もう少ししたら別の討伐対象が出てくるかもしれないんですけど」
ミラベルさんの歯切れが悪い。女性冒険者にオークの討伐をあてがうのをためらっているのだろう。今そういったことはないといっても、万が一予期せぬ事態が起こったら。そう考えていることだろう。
クエストをあてがってくれただけまだいい。これがプレミアだったらクエストの提示すらしてくれなかっただろう。最近のプレミアの過保護っぷりは異常だったから。
「ミラベルさん、大丈夫です。オーク討伐やらせてください」
ここでためらっているようじゃ、いつまでたってもランクアップは見込めない。ユキノちゃんに頑張ると言った以上、こんなことで立ち止まってられないのだ。
ミラベルさんは何か言いたげだったが、クエストの受注を許可してくれた。
「わかりました。リタさんのランクアップクエスト受注を認めます。くれぐれも油断しないようにお願いしますね。あなたに何かあったらプレミアがどんなことするかわかりませんから」
「き、気を付けます」
よし、これであとは討伐準備を整えるだけだ。さすがにオーク三体は一人では手に余る。同じランクの冒険者とパーティを組んでいかないと。
そんな私の心を感じたのか、ミラベルさんはそういえばと話し始めた。
「ちょうどさっきランクDの冒険者がいらして、同じくランクアップクエストの受注をしに来たんです。まだギルド内にいると思いますからご一緒してみてはいかがでしょう」
「わかりました。じゃあちょっと探してきます」
ミラベルさんにその冒険者の特徴を聞きお礼を告げ、私は受付を後にした。
いかがでしたでしょうか。プレミアより若干年上のお姉さんに登場してもらいました。
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