教育係と見知ったパーティ
三章二話です。
投下します。
冒険者ギルド、オリジン。
以前は冒険者登録したての新米の冒険者の手伝いを行っていたのでよく来ていた。新米冒険者はランクF、Eのクエストをすべてクリアした私を訪ねるようにといつの間にかギルドから通達が出ているのには驚いたが、魔物活性化の件もあり、プレミアの負担を減らせるのならと率先して引き受けていた。
ギルド内は相変わらず活気があり、今からクエストに行く者や椅子に座り昼間から酒盛りをしている者なんかもいる。
ギルドマスターが不在の状況ではあるが、特にいつもと変わらないようだ。
「じゃあ私はギルドの職員と話してくるけど、ユキノちゃんはどうする?」
「うーん、さっきも言ってましたけどついていくのもダメなんですよね?」
「そうだね。高ランクの冒険者を連れて行くのは原則禁止になってるんだよね」
ランクアップのクエストに自分よりランクの高い冒険者を連れていくことはできない。クエストへの同行はもちろん、補助魔法を事前にかけてもらうなど一切の干渉をさせないことをランクアップクエストを受ける条件としている。
これはその冒険者がランクアップにふさわしいかどうか見定めるためのクエストだ。高ランク冒険者の助力があってはその冒険者の本来の力量が見れない。
「じゃあわたしは別のクエストに行ってますね。魔法も色々試したいし」
「うん、わかった。せっかくだしどこかのパーティに入ってみれば? パーティでの戦闘も体験したほうがいいと思う」
「パーティですか? でもわたしを入れてくれるところなんてありますかね」
「ランクBの魔法使いならどこでも欲しいと思うよ。ちょっと待ってて」
ユキノちゃんにそういって私はギルドの食堂に足を向かわせる。
ギルド内の食堂はそこらのレストランより広い。以前はそうでもなかったがプレミアがギルドマスターに就任して一番初めに手を付けたのがこの食堂だ。
曰く、腹が減っては魔物は狩れぬ。
そのおかげでメニューも増え、今ではなくてはならないものとなった。
食堂に入った私は祈りを込めながらキョロキョロと周りを見渡す。そして食事をしている三人組を見つけほっと安堵しテーブルへと向かった。
「やっ。みんな久しぶり」
私の声に三人が手を止める。
「あれリタさん、ご無沙汰ですね」
「リタだー。ヤッホー」
「久しぶりだな」
三人とも口々に返してくれた。
剣士のルーペン。盗賊のマージ。タンクのエルギン。三人ともかつて私と一緒にクエストを受けていた冒険者たちだ。今は三人とも私よりランクが高く、ギルド内でも期待のパーティとして注目されている。
「ルーペン、リタさんじゃなくて呼び捨てでいいっていつも言ってるでしょ?」
「何言ってるんですか。冒険者の師匠であり命の恩人に、そんなことできませんよ」
ルーペンはまじめな顔でそう言った。確かに以前彼がまだFランクのとき、クエスト中想定外の魔物と遭遇し重傷を負って動けなくなったところに私が偶然通りかかり、納品するはずだった薬草をすべて使って助けたことがある。だがもうずいぶん前の話だ。彼は少し律儀すぎるところがある。
「まぁまぁ。コイツは言って聞かないから、言わせとけばいいよー」
マージはそういってフルーツパフェのクリーム部分をスプーンですくい口に持っていく。
この子とも以前クエストに行ったことがあり、その際喧嘩もしたけど今ではすっかり仲良しだ。
「相変わらず甘いものが好きなんだねマージは。今度また狐の館においでよ。ファラさん喜ぶからさ」
「わかったー。今度はケーキが食べたいから材料もっていくねー」
「狐の館か。俺もしばらく行ってないからな。ファラさんの料理が懐かしい」
「くればいつでも作ってくれるよ」
「なら俺も今度行くとしよう。食材のほかに酒もあわせてな」
「それはぜひ頼むよ。ファラさん喜ぶ」
エルギンとはゴルドのつてで知り合った。ゴルドと同じくお酒が大好きで、たまに一緒に飲んでいるのだとか。ゴルドがらランクAになってからは自分もランクを上げようといろんなクエストを受けてるみたい。
「リタさん、今日はめでたい日なんですよ」
「うん? なにかあったの?
「エルギンがね、なんとランクBになったのー」
「おおっ! それはすごいね。おめでとうエルギン」
私からの言葉に、エルギンは晴れやかな笑顔で返した。
「おう! ありがとなリタ」
「これでまた一歩、ゴルドさんに近づきましたね」
「ああ。今にあいつと並んで、あいつに祝杯をおごらせてやる」
エルギンの酒量は相当なものだが、それでもゴルドは喜んでおごるだろう。そういう男だ。
「ところでリタはどうしたのー? なにかあったー?」
「あっ、そうだった」
久々に三人に会えたことがうれしすぎて当初の目的を忘れていた。
「実は一人パーティに入れてほしい子がいるんだけど、どうかなって」
「リタが一緒に行くんじゃなくてー?」
「私じゃないよ。ほら、一日でランクFからBになった魔法使いの冒険者って知らない?」
「あーなんかこの前プレミアが言ってたなそんなこと」
「じゃあ入れてほしいっていうのはその魔法使いですか?」
「そうなんだけど、大丈夫かな。急で悪いんだけど」
三人は顔を見合わせる。そしてうなずくとルーペンが口を開いた。
「ほかならぬリタさんの紹介ですからね。大丈夫ですよ」
「ランクBかー。エルギンと一緒だね」
「まぁ向こうは一日でランクアップしてるって話だからな。胸を借りるのは俺たちか」
「いや実はね」
私は三人にユキノちゃんの事情を説明した。彼女が来訪者であり規格外の魔力を持っていて、冒険者としてはまだまだ知識が不足していると。
「私はランクDだから彼女の成長をちょっとしか手助けできないけど、みんなだったらそれができるでしょ? だからランクBといっても変な遠慮はしないで、色々教えてあげてほしいの」
基礎知識はほとんど教えた。だがこれから先、基礎知識だけじゃ切り抜けられない場面が必ず来る。そういった時のための事前準備が必要だ。自分と同じくらいのランクの冒険者とパーティを組んでクエストをこなすのも必要なことである。それは、私と一緒にいてはできないことだ。
そんな私の小さなうしろめたさを感じ取ったのかエルギンはあごに手を当てながら、
「わかった。これから行くクエストに連れていくよ。まぁ俺もお前とまたクエストに行きたいしな。さっさとランクを上げてくれ」
「そうだよリター。ルーペンもアタシもランクCになれたんだから、リタなんてすぐだよー」
「そうですよリタさん。ランクCのクエスト厳しいんで早くランクアップしてください」
三人とも同じことを言っている。それがおかしくて、うれしくて。思わず笑ってしまった。
「ご心配どうも。実はこれからランプアップのクエストを受けに行くんだ」
「ああ、だからパーティを探してたのか」
「エルギンご名答。私が受けている間、ユキノちゃんは一人になっちゃうからね」
よし。話もまとまったことだし、ユキノちゃんを呼んでこよう。多分待ちくたびれちゃってるだろうし。
「待ってて。今連れてくるから」
私はそういって食堂を後にした。
誤字脱字、ご感想などいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。




