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新米冒険者の教育係  作者: ユトナミ
第二章
34/118

教育係と強引な話し合い

投下します。

 赤獅子ガリウス。


 セカンドにおいて、こと戦闘において他の冒険者より圧倒的な実力差を誇り、冒険者たちを纏められるカリスマ性を持ち、誰もがも認める冒険者た。


 そのガリウスが唯一、自身の背中を預けた男。


 ポロジック・ムバルトローグ。セカンドのギルドマスターにして『赤き盾』の異名を持つ男の名だ。


「調査することがある。そういってあいつは……ポロジックは俺たちの前から姿を消した」


 ギルドマスターの不在は冒険者たちの不安をあおってしまう。そう考えたガリウスは、『ポロジックは仕事でギルドを開けているだけ』と職員に徹底させ漏洩を防いだ。


 巷で自身の悪いうわさが流れても特に気にすることなく、むしろ話題の矛先が自分に向いているとほくそ笑む。


 すべてはギルドマスター不在が悟られないように。


「だが結局、ふたを開けりゃあいつのただの暴走だったってオチだ」


 ガリウスは悲しそうにそうつぶやいた。


 確かに今回のことはポロジックの暴走だ。でも最初から暴走していたのかまでは分からない。


 ベガルタの話だと、魔剣を手にしてから態度が急変したという。精神汚染されていたというから、何か別の目的があったのではないだろうか。


 本人が死んでしまった以上、今更それを確認することはできない。ポロジックが魔剣を使い暴走した事実だけが残る。


 それに問題はそれだけではない。


「ポロジックのこともあるけど、ここのギルドマスターはどうするの?」


 シルヴィアの疑問はもっともだ。ギルドマスターだったポロジックの失脚。今まで不在という形で隠してきたが、今後はそうはいかない。セカンドがギルドとして成り立つには早急にギルドマスターを立てる必要があるのだ。


「それなら俺が」


「でもガリウスがやると、セカンドの冒険者は誰が引っ張るの?」


 ギルドマスターは前線には出ない。めったなことがない限りは基本的にギルドの運営にその時間を費やす。今のセカンドにガリウスほどの統率力を持った冒険者はいないだろう。


「しかし……じゃあ誰が」


「あの」


 ふと聞き覚えのある声が開きっぱなしのドアの方から聞こえた。全員の視線に臆することなく入ってきたのは、


「ロールお姉ちゃん?」


 うずくまっていたキール君が顔を上げる。


「すみません、開いていたもので。お話は聞かせていただきました。ギルドマスターの件、私ではだめでしょうか」


 いつもの優しい笑顔ではなく、何かを決心した表情。ロールさんなりに覚悟を持ってした発言だということが表情から読み取れた。


「ロール、本気か?」


 ガリウスがロールさんに詰め寄る。ギルドマスターはギルド全体を掌握し、時には非情な判断を下さなければならない時もあるのだ。


「それに冒険者としての実力もないお前に、ついていくものが居ると思っているのか?」


「ガリウスそれはっ」


 言い過ぎだ、と続けようとしたが、ロールさんに手で制止される。任せてと言わんばかりの顔を向けられてしまった私はのどまで出かかった言葉を飲み込んだ。


「ありがとうガリウス。やっぱりあなたは優しいのね」


「……急に何を言い出す?」


「確かに私に冒険者としての実力はないわ。でもね、ギルドマスターの役割は戦闘だけじゃない。セカンドにいる冒険者みんなの明日をつなぐことだと思うの。違うかしら?」


 今まで数多くの冒険者を治療し生還させてきたロールさんにとって、それは揺らぐことのない自信だろう。その人の口から明日をつなぐことがギルドマスターの役割だという言葉がでた。


 ガリウスは半ば諦めた様な顔をしてため息をつく。


「お前にそれを言われちゃ、返す言葉がない」


「ふふ。ありがとう」


 どうやら話は纏まったみたいだ。


「でもいきなりギルドマスターをやるっていってもきつくないですか? ロールさんほかの仕事とかもあるでしょうし」


「それくらいワタシが兼任するわよ」


 ドアを開け、また誰かが入ってきた。今度はに見知った二人組。


「あれ、プレミアとゴルドじゃん。なんでここに?」


「ようリタ、酒場以来だな。元気してたか?」


「会いたかったわリタ」


 部屋に入るなりプレミアは私の横の隙間に強引に体を入れて座りご満悦だ。あまりの狭さに立ち上がろうとするが、プレミアに腕をつかまれ結局座りなおすはめに。


「久しぶりね赤獅子。赤き盾のギルドマスター就任以来かしら」


「束ねる者、プレミア・ファストラッド。兼任とはどういうことだ」


 どうやら二人は以前あったことがあるみたい。片やにこやかに片や警戒心がむきん出ている。これは絶対に過去プレミアが何かしたに違いない。


「だから兼任よ兼任。えーっとロールでよかったかしら」


「は、はい」


「さすがにいきなりギルドマスターを任命ってわけにはいかないのよ。たとえ前任者が死んでしまっていてもね」


 軽い口調だったが、プレミアの言葉の重みに気づいたのはおそらく私とゴルド、それにシルヴィアだけだろう。彼女もギルドマスターの座を受け継いだ身だ。それ相応の出来事があったのを私たちは知っている。


「それは、おっしゃる通りで……」


「だから、オリジンギルドマスターであるワタシがここにギルドマスターとしてしばらく居てあげる。あなたはその間ワタシのサポート、つまりサブギルドマスターになるの。いい案でしょう?」


「おい、何を勝手に決めている」


「じゃああなたがやるとでも? 言っておくけど、ギルドマスターになったからにはもう冒険者としてクエストをこなしたりすることはできないわよ」


 プレミアの言葉にガリウスは口を閉じる。ギルドマスターになるということは、冒険者としてはもう活動できなくなる。


「解決策が他にないならワタシの案を通すけど、いいかしら?」


 プレミアの言葉に反論するものはこの場に誰一人いなかった。


「決まりね」


 いつの間に用意したのか、プレミアは満足そうに紅茶の入ったカップを口に着けた。

お読みいただきありがとうございました。

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