教育係と状況整理
すみません、空けてしまいました。
投下します。
がちゃりとドアを開けキール君が部屋に入ってきた。
「キール君! もう起きて平気なの?」
「はい、なんとか。すみません、ご迷惑をおかけして」
私の問いかけにキール君は頭を下げてそう答える。まだ疲れが残っているのか顔色はよくはない。無理やり起きてきた感じがする。
「皆さんがここに集まってるって姉さんから聞いて、僕も何か役に立ちたいと思って急いできました」
『殊勝な心がけだ。さすが我が契約者』
「黙って」
シルヴィアがやすりでベガルタを磨く。
剣の身からしたら相当な拷問なんだろう。喚き声が部屋に響く。
「ここに座って」
辛そうなキール君を見てユキノちゃんが立ち上がり、キール君を椅子に座らせた。
『こうして話すのは久しいな小童』
「ベガルタ……そうだね、久しぶりだね」
ベガルタと言葉を交わすキール君。気のせいか、キール君の口調が私やユキノちゃんと話すようなかしこまった感じではなく軽いものだ。そしてベガルタもそれをとがめない。ベガルタの事だから『皇帝陛下と呼べっ!』とかいいそうなのに。
さて。キール君が来てくれたことでようやく今回の騒動を整理することが出来る。まずはなぜキール君がベガルタに体を明け渡していたかだ。
「じゃあ早速で悪いんだけどキール君。ベガルタを手にした経緯を教えてくれるかな」
「はい。森でガリウスさんがいたので、何してるんだろうって後をつけたんです。良くないうわさも立ってたので何かするんじゃないかって」
ガリウスを追って森の奥に入ったキール君だったが、その後洞窟内でガリウスを見失ってしまった。そして奥に進むとまばゆい光を放つ剣が玉座のようなところに置かれており、語り掛けてきたという。
姉を死なせたくなければ剣をとれ、と。
「はいギルティ」
そういったシルヴィアの手の動きが加速する。
『ギャアアアアア!! やめろっ! 消えてしまうぅぅぅ!!!』
本気でベガルタを消しにかかっているシルヴィアをたしなめ、私はある疑問を抱きキール君に聞いてみた。
「キール君、そのガリウスはこう、妙に禍々しい剣を腰に下げてなかった?」
「禍々しいかどうかは分かりませんが、僕でも感じ取れる強大な魔力を持った魔剣を下げてました」
今の回答で疑問が解けた。間違いない。キール君が追ったのはガリウスではなくポロジックだ。大方ベガルタを回収しに行くところだったのだろう。
だが交渉敵わずその場を後にした。そしてベガルタは、そのあと現れたキール君に力を貸し体を乗っ取る。そのあと私に会ったのだ。
「結局のところ、ベガルタは何がしたかったの?」
『わからんか? ククッ、凡人には分からんだろうな』
「勿体ぶらずに言ったほうが身のためだと思うけど」
シルヴィアが手に力を入れる。このやり取りももう数回しているのに、懲りない皇帝陛下だ。
『余以外の魔剣が存在し、それを手に取り暴走している輩がいる。だがそれを知る余は剣であるが故動けぬ身。そこに偶然相性のいい個体が現れたのだ』
「それがキール君?」
『ああそうだ。余は魔剣に取りつかれた男の鎮圧。小童は姉を守れる力が欲しい。そして両者の利害が一致し、余は力を、小童は体をそれぞれ差し出したのだ』
「その割にはやりたい放題に見えたけど?」
『小童に任せていては終わるものも終わらんのでな。それに相性が良いとはいえ体への負担も少なくはない。だから余が制御しながらあの不敬者が来るのを待っていたのだ』
確かに、ベガルタの言い分通りならもっとも効率のいいやり方だ。結果的に最小限の負担で目的を果たしている。
「ベガルタは悪くありません。体も僕が自分の意志で貸したんです。それに約束通り魔物を倒してくれました」
ベガルタを擁護するようにキール君が口を開く。本人にそういわれては、これ以上そこを追及しても意味はない。
『さすが契約者よく言ったぞ。正確には魔物ではないが、まあいい。だがあのポロジックというやつがどこで魔剣を手に入れたのかはわからずじまいか』
「ポロジック?」
その名前を聞いた途端、キール君の目が見開く。まるで今聞いた言葉が信じられないといったように。
「キール君、どうしたの?」
「ベガルタ、今ポロジックって言ったの!?」
『言ったぞ。何度も何度もしつこく余の元へ来ては俺にふさわしい剣だと抜かしていたわ。まあ途中から魔剣に精神汚染されて死んでいたがな。そもそも精神汚染されるやつは初めから邪な心を持っていて』
「そんな…………」
ベガルタの説明も聞かず、キール君は頭を抱えてうずくまる。
「ちょっと、キール君大丈夫!?」
「無理もない」
そう言って入ってきたのはガリウスだった。体のあちこちに包帯が巻かれており、右腕はギプスで固定してある。一目で重症だということが分かった。
「ガリウス、寝てなくていいの?」
「このくらい問題ないそれよりポロジックのことだが」
ガリウスは私たちを通り過ぎ、ギルドマスターの席に左手を置く。懐かしそうに見つめるその目はどこか悲しそうだった。
「ポロジックは……ここセカンドのギルドマスターだ」
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