教育係と合流
投下します。
我ながらとんでもないことをしでかしたと思う。
密閉された空間で高位魔法を放つなんて、とても正気の沙汰とは思えない。オリジンで新米冒険者たちと採取クエストをしていたころの私ならそう思っただろう。いやそうに違いない。
崩壊した洞窟のなかでそんなことを思いながら、私はふとキールくんに目をやる。
さすがベガルタの魔力が上乗せされた防御魔法をかけただけはあって、あの爆発の中にいたにもかかわらず目立った外傷はなかった。
岩壁が崩れ去り吹き抜けとなった天井からは日の光が差し込んでくる。洞窟にいたから忘れていたがそういえばまだ昼過ぎだ。今の爆発がほかの冒険者の目印になってくれればいいんだけれど。
「ぐっ……」
がしゃんと音を立てポロジックが膝をついた。どうやら向こうもとっさに防御魔法で体を守ったらしい。といっても、傷の度合いからして完全には防げなかったようだ。赤い鎧はところどころ破損し、傷口からは赤い血が流れ出ている。重症だ。
ベガルタは変わらず私の右手に握られている。もう魔力は感じられないがかまわない。なぜならこの状況はポロジックにとっては詰みだからだ。
「残念だったね。魔剣は魔力を失いあんたは満身創痍。じきにほかの冒険者もここに来る。もう終わりだよ」
余裕な態度をとってはいるが、かくいう私も無傷というわけじゃない。
ベガルタの魔力を使い放った高位魔法の衝撃、その反動。それらが痛みとなって体全身を駆け巡っている最中だ。
気を抜けば一瞬で気絶してしまいそうな痛みをこらえながら私は二本の足でしっかりと立つ。
「終わり……確かに貴様の言う通り、このままではすべてがご破算だ」
ポロジックはきしむ体を無理やり立たせた。体中から血が噴き出し地面に赤いしみを作っていく。
「ちょっ、やめなって! あんた死んじゃうよ!」
私の制止も聞かず、ポロジックはそのまま持っていた剣を握り直し、
「このままでは……終わらせん。魔剣の真の力を……知るが、いいっ」
そのまま自分に突き刺した。
「何をっ!?」
ポロジックは自分の腹部に魔剣を深々と突き刺す。そして死に体だったポロジックが高らかに奇声を上げた。
「ギギギギギギギギギギギガァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!」
奇声とともにポロジックの体に変化が生じる。
目は赤く充血し。
皮膚は炎に焼かれたように黒く。
手足からは鋭利な爪が伸び。
頭には何本もの角が生えていた。
見ただけで人間を辞めてしまったということが分かる。
「ちょっと、まずいかな……」
ちょっとどころじゃない、かなりまずい。今度こそほかに打つ手がなかった。
立っているのもそろそろ限界が近づいている。
ベガルタも魔力切れ。私も満身創痍。キール君は気を失っている。
今度は私が詰みかけていた。
「リタさん!」
突如後方から名前を呼ばれ、熱を持った何かが数本私の横を通り過ぎた。
燃えさかる槍がポロジックに刺さり、魔剣を突き刺したまま後退する。
「ユキノちゃん、ナイスタイミング」
知ってる顔が現れほっとする。それと同時に体から力が抜けその場に座り込んでしまった。
「大丈夫ですかリタさん!」
「なんとかね。キール君も一緒だよ」
ユキノちゃんが来た方向から冒険者たちが次々と現れる。どうやら何とか助かったようだ。
そして赤い鎧の男、『赤獅子』ガリウスも姿を現す。
ユキノちゃんに回復薬をもらい私は後ろに下がった。ここから先の戦闘、私は足手まといになる。あとはガリウスたちに任せればいい。私はキール君を連れて戻るとしよう。
「ポロジック……ここまで堕ちたか」
私は足を止める。ガリウスがぽつりとそうつぶやいたのを、私は聞き逃さなかった。
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