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新米冒険者の教育係  作者: ユトナミ
第二章
27/118

教育係と夢見た魔法

投下します。


『な、なんだと!?』


 声色からベガルタが動揺しているのが分かる。


 それもそうだ。器を交換したつもりが出来ていなかったとなればそうなる。


 膨大な魔力は私の中を駆け巡ているが、体の所有権は変わらず私にあった。


「ほう。何かしたようだが、どうやら失敗したようだな」


 ポロジックの顔に笑みが浮かぶ。当然だ、対峙する相手がベガルタから私に変わったのだから。


 いくら魔力が上がっても、剣術の心得は私にはない。先ほどまでのような激しい斬り合いを行うのは不可能だ。


「まあ、ベガルタを倒さず手に入れられるのなら私もそのほうがいい。無駄な労力を使わずに済むからな」


 一歩一歩、ゆっくりとポロジックが近づいてくる。


『おい女! 今すぐ余をあの小童に戻せ! このままではあいつに余が捕られるぞ!』


「それは困るかな」


 私は右手に魔力を集中させる。


 支配権が私にある以上、この尋常じゃない魔力も私が使えるはずだ。体に負担がかかることも考えると、おそらく大きい魔法を一発分。


 使える魔法はごく少数だけれど、この魔力ならたとえ低級魔法でもすさまじい威力になるはずだ。


 魔力の流れに気づいたのか、ポロジックが歩みを止める。


「おや、なにか狙っているのか? やめておいたほうがいい。見たところきみは本来そこまで魔力が多くはないだろう」


「ご名答。冒険者やってるけど、ランクはⅮ止まりだよ」


「やはりな。魔剣を持ち一時的に魔力が増量したか。だが自身の体に流れる魔力の量で分かるだろう。明らかに容量を超えていると」


 そう。自身の魔力を上回る魔道具を手にする際、一時的に魔力は上がるがその後に待っているのは魔力暴走という名の破滅だ。


 容量を超えた魔力は使用者の体の中で膨張し内側から崩壊する。最悪死に至るケースもあるのだ。


 ゆえに今日まで、使用者の魔力を大きく上回る魔道具の使用は禁じられてきたのである。


「そこの小僧はベガルタが魔力を抑えていたから問題ないだろうがきみは違う。魔力暴走を起こすのも時間の問題だ」


 ポロジックが右手を差し出す。


「そうなる前に、その剣を手放したまえ。これはきみの為でもある」


「急に口調が変わったのは、絡め手に切り替えたって認識でいいのかな」


「私は気が長いほうではない。余計な詮索はせず渡したほうが賢明だと思うがね」


 私は右手をポロジックに向けた。もちろんベガルタを渡すためじゃない。ようやく整ったのだ。


「悪いけど、これは渡せない。渡したところでいい結果は待っていないだろうしね」


『おい女! これとはなんだこれとは! 失礼だろう!』


 ギャーギャーと騒ぐベガルタ。うるさいなこの剣。


「ならばどうする気だ。このまま魔力暴走するまで私とここにいるかね」


「うーん、そうはならなそうだね」


「なんだと? どういう……」


 ポロジックの言葉が終わる前に、洞窟内を囲むように魔法陣が出現する。魔法陣はさらに広がり、壁から天井まで覆った。


「これは、なんだ!?」


「シールド!」


 私は自身とキール君に防御魔法をかける。こんな魔法でも使用する魔力を上乗せすれば上級魔法にも引けを取らない効力となるのだ。


「バインド!」


 天井を見上げ隙だらけのポロジックに拘束魔法をかける。これでもう逃げられない。


「貴様何をっ!」


「もう遅いよ」


 私は懐からメモ帳を取り出す。私の魔力からして絶対に使えない魔法だが、今回はこの魔剣の魔力の上乗せもあるし何とかなるはずだ。


 それに、一度くらい使ってみないじゃない。


「えー煉獄の炎よ、その怒りその業火、我が前に顕現せよ! 我が望みは殲滅、我が願いは破滅! かの者に真紅の滅びを与えん!」


「その詠唱は……ま、まて! こんなところでそんな魔法使えば貴様もただでは」


 ポロジックの言う通り。ここでこれを使えばただでは済まないだろう。だからこそシールドをかけたのだ。あとは日ごろの行いを信じるしかない。


 私は心を込めて魔法を放った。


「穿て! エクスプロージョン!!」


 瞬間、洞窟内を覆っていた魔法陣に一斉に魔力が通り、真紅の光を放ち爆発した。

誤字脱字、内容のご感想お待ちしております。

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